まとめてみました。
- 等温変化 (isothermal change)
温度一定の条件のもとで起こる変化。 - 断熱変化 (adiabatic change)
熱の出入りなしに行われる変化。 - 定圧変化 (isobaric change)
圧力一定の条件のもとで起こる変化。 - 定容変化 (isovolumetric change)
体積が一定に保たれる条件で起こる変化。
4つの物理過程(理想気体、可逆過程、 が一定の場合)
等温 | P と V −1 が比例 圧力を下げると膨張する |
||||
断熱 | P と V −5/3 が比例 1)係数は気体の熱容量によって変わる。単原子分子の場合 , 係数 。 二原子分子の場合 , 係数 。 圧力下げて膨張させて温度下げる |
||||
定圧 | T と V が比例 温度を上げると膨張する |
||||
定容 | T と P が比例 温度を上げると圧力上がる |
||||
なお、次の式はどの過程でも成り立ちます。上の表の数式は全て下の6つの式から導かれています。
気体をある状態から別の状態へ変化させるには無数の経路がありますが、
通常、上記の 4 つの過程 (等温、断熱、定圧、定容) の組み合わせで考えます 2)1から2へ直線で行く過程など、4つの過程(等温、断熱、定圧、定容)の組み合わせでは表せない過程もあります。→問題19-9 。
例えば 1 mol の理想気体が、状態 1 (400 K, 2 bar, 16.63 dm3) から 状態 2 (200 K, 0.352 bar, 47.16 dm3) に変化させる過程には
過程A: 2 bar で 体積が 47.16 dm3 になるまで定圧加熱 (定圧条件を保つにはかなり温度を上げる必要あり)、その後 47.16 dm3 で定容冷却
過程B: 400 K で 47.16 dm3 まで等温膨張、その後 47.16 dm3 で定容冷却(定容で熱を奪う)
過程C: 断熱膨張(膨張しつつ温度が下がっていく)
過程D: 16.63 dm3 で 200 K まで定容冷却、その後 200 K で等温膨張
過程E: 16.63 dm3 で 圧力が 0.352 bar になるまで 定容冷却 、その後 0.352 bar で定圧加熱
等があり、これらは
- 赤 等温(膨張) 過程
- 緑 断熱(膨張) 過程
- オレンジ 定圧(膨張 & 加熱) 過程
- 青 定容(冷却) 過程
の組み合わせでできています。
気体の量を 1 mol、単原子分子()として、
上の表の式により各過程の熱力学量の変化を計算すると、次の表のようになります。(単位: J)
過程 | |||||
A | 全過程の合計 | −2490 | −4156 | 3616 | −6106 |
1→中間 | (9163) | (15269) | (15269) | (−6106) | |
中間→2 | (−11653) | (−19425) | (−11653) | (0) | |
B | 全過程の合計 | −2490 | −4156 | 971 | −3461 |
1→中間 | (0) | (0) | (3461) | (−3461) | |
中間→2 | (−2490) | (−4156) | (−2490) | (0) | |
C | 全過程の合計 | −2490 | −4156 | 0 | −2490 |
1→中間 | |||||
中間→2 | |||||
D | 全過程の合計 | −2490 | −4156 | −760 | −1730 |
1→中間 | (−2490) | (−4156) | (−2490) | (0) | |
中間→2 | (0) | (0) | (1730) | (−1730) | |
E | 全過程の合計 | −2490 | −4156 | −1415 | −1075 |
1→中間 | (−4102) | (−6843) | (−4102) | (0) | |
中間→2 | (1612) | (2687) | (2687) | (−1075) |
どの過程を通っても、状態関数である U, H の全過程での変化、ΔU, ΔH は同じ値になります。
一方、経路関数である q, w は通る過程によって値が異なります。
細かく各過程を見ると、定圧変化では ΔH = q となっています。他の変化では、ΔH は計算できるものの、 あまり役に立つ値にはなっていません。
定容変化では ΔU = qとなっています。それぞれの過程で、系は q の値だけ熱を吸収 (値が負のときは放出) して変化していくわけですね。
(なお断熱変化では q = 0 (熱の移動なし)、等温変化では q = −w となります(吸収した熱の分だけ仕事として出ていく)。)
ちなみに、エントロピー S は上記の例では A, B, C, D, E の 5 つの過程とも、変化なし(ΔS = 0)となっているはずです。
このページで挙げた例は、全て「可逆過程」です。