エントロピーの計算ですが、「可逆過程を仮定する」ってなんすか。実際は違うじゃないですか。
まあ、そうなんですが、そういう定義だと思ってください。
...(20.3改)
「可逆過程」を仮定せず、実際の q から計算してしまうと、
いろんなルートを通れてしまうので、ルートによって q が変わり、系のΔS が変わってしまいます。
同じ状態のときの S は、過去にどんな変化をしてきたかによらず、同じ値でないと
扱いづらくて仕方ありません。
「可逆過程を仮定」して S を計算することにすれば、(可逆過程は1本しか道がないので) 同じ状態のときの S は、いつも同じ値になります。(こういう性質を持つ関数を状態関数、という)
上の等温膨張(500 K) の例だと、外の圧力 Pex をいくつで膨張させるかによって無数のルートがあります。
w / J | q / J | |
過程1(可逆過程) P = Pex |
−69.3 | 69.3 |
過程2(不可逆過程) Pex = 1 bar |
−50 | 50 |
過程3(不可逆過程) Pex = 0.5 bar |
−25 | 25 |
過程4(不可逆過程) Pex = 0 bar |
0 | 0 |
ルートによって経路関数である w と q の値は変わりますが、系のエントロピー変化は「可逆過程を仮定」して計算するので、どの過程でも ΔS = (69.3 J / 500 K) = 0.139 J K−1 となります。 1) といいつつ、周囲のエントロピー変化 ΔS(周囲) は「実際に出入りした熱」を使って計算するのですが。 (ΔS(周囲) = −q / T) まめテスト5 参照
このようにして計算した S を使うと、「ΔS > 0 のとき、その変化は自発過程」という便利な関係を利用できるのです。