またしても久しぶりの更新になってしまいました.昨日しめ切りの仕事を何とかクリアーしたので(結果の善し悪しは別として),今日は久しぶりに 新しい記事を作ろうと思った次第です.

 去年から国土交通省の河川環境の研究を手伝わせて頂いています.で,何度も現場に出ているんですが,そのとき見た植物などを紹介する機会がありませんで した.そんなわけで,今回から何回かに分けて,いろいろ紹介したいと思います.

 ま,皆さんに紹介という部分ももちろんあるんですが,整理しておかないと自分も忘れてしまったりしまうので,自分のため,という部分もあります.

 一回ではとてもとても.しかし,次回アップできるのはいつになるんでしょうか...



 ナヨクサフジ
 まずは,ナヨクサフジの花のアップから.これは,外来種です.日本 にあるクサフジに似ていますね.違いは花の付き方です.
 茎から花柄が伸びて花が着いているのが分かりますね.このナヨクサフジの場合,花 の後ろでなく下側に花柄が着いています.これが特徴.日本在来のクサ フジは,花柄が花の後ろにつきます
 葉の幅もちょっと違うようですが,葉だけでは,何とも難しいですよね.
 セイヨウカラシナ
 セイヨウカラシナです.いわゆる菜の花の仲間ですね.菜の花の代表 選手,セイヨウアブラナに似ますが,花はやや小さく,葉の基部は茎を抱かないことが 特徴です.
 あとの方で,葉が茎を抱くセイヨウアブラナも出てきますので,比べて下さい.
セイヨウカラシナの葉の付き方
 セイヨウカラシナの葉の付き方です.茎から葉柄が伸びて葉がついて いますね.葉は茎を抱きません.
セイヨウカラシナの葉の付き方
 こちらはもう少し,茎の上の方です.上の方に行くと葉柄は無く,葉の葉らしい部分(葉 身といいます)がくさび状になって葉の付け根に流れます.
 いずれにしても葉は茎を抱きません.
で,セイヨウアブラナを比べてみましょう.

 右の写真がセイヨウアブラナです.
 菜の花といえば,もともと日本のアブラナのことを指していたんです が,最近は,こちらのセイヨウアブラナの方がメジャーでしょうか.
 先に挙げたセイヨウカラシナと似ていますが,花がこちらの方が大きいことと... 
セイヨウアブラナ
セイヨウアブラナ
セイヨウカラシナと違い,こちらは葉が茎を抱くことが特 徴となっています.
セイヨウアブラナ
 おまけにもう一枚.もう,完全に抱きしめていますね.
イシミカワ
  こちらはタデ科のイシミカワです.葉身と葉柄のくっついている所 を見てください.これ,葉身が盾状についているんです.普通は葉身の 一番端に葉柄が着くのですが,これは盾状,傘みたいな付き方をしてい るんですよ.
 葉柄には下向きにトゲがあるので,さわる際には気をつけて下さい.
オオイヌタデ
 オオイヌタデです.イシミカワ同様,タデ科ですが,こちらの方が,こ ちらの方が,いわゆるタデらしい形をしていますね.似てるんですよ,この仲間,みんな.
オオイヌタデの葉鞘
 まず,茎を見ます.茎から葉柄がでるところは,薄 い膜で筒状に覆われていて,これを葉鞘(ようしょう)と呼びます.この葉鞘の先に毛があるかどうか,といったところが見分けのポイ ントになりますが,オオイヌタデやサナエタデはこの筒状の葉鞘の縁に毛がないことが大きな特徴です.イヌタデなどはこの葉鞘 と同じ位の長さ の毛が縁に生えています.
 オオイヌタデは花の時期には1mをこす,大きなものになりますから,そのころには花の特徴もあって(花序が重みで下向きに折れ曲がる)見分けられます が,春先はいろいろな部分を見ないといけません.
オオイヌタデの若葉の裏面
 オオイヌタデの若葉の裏です.葉の裏が白く見えるのは,白い 毛が密生し ているためです.オオイヌタデの葉は,後に無毛になりますが,展葉してしばらくはこうした白い毛が密生しています.
(2008年5月1日追記)

 当初,あまりに毛が多いので,サナエタデかと思ってしまいました.後に葉の裏の毛が無くなり,オオイヌタデと確定することになりました.
キュウリグサ
 こちらは,ムラサキ科のキュウリグサです.名前の由来は,葉をちぎって揉むとキュウリの匂いがするから,ということです.
 この写真では小さくて分かりませんが,明るい青がかった紫色の花を付けます.花びらは5枚ですが,合弁花類ですから,下でつながっています.
タチイヌノフグリ
 こちらはタチイヌノフグリ.花が小さいのでこの写真では見えません が,花はオオイヌノフグリにいています.どちらも外来種です.
 タチイヌノフグリとオオイヌノフグリは花の色も青で同じです(在来のイヌノフグリは ピンク色の花が咲きます)が,タチイヌノフグリはその名の通り,茎が立ち上がること と,花柄が無いことが特徴です(オオイヌノフグリは花柄がある)

ミミナグサ
 ちょっと変な写真ですが,ミミナグサだと思います.何が変かという と,ミミナグサは腺毛はない(少ない)んですが,外来のオランダミミナグサは腺毛が多く,長いんですね.
 で,この写真,花のまわりに長い毛がたくさん着いているように見えます.この毛は,この花自身の毛ではなくあとから飛んできたものがついたんだと思うん ですよ.
 ミミナグサは,萼辺の長さと花弁(花びら)の長さがほとんど同じで,花が閉じたと きには花びらが隠れますが,オランダミミナグサは萼片の方が短いの で,花が閉じたときに,先から花びらがはみ出しています.
 どちらもハコベの仲間なので,花びらは5枚で先端が割れます.ハコベはもっと深く花びらが裂けて,花びらが10枚あるように見えるの で,そこ は確実に見分けられます.
ミミナグサの茎
 ちなみに,オランダミミナグサの腺毛は,さわると粘るほどなのに対し,ミミナグサは手がべとつくことはないようです.
 また,ミミナグサは,左の写真のように萼が紫色になることが多いん ですが,オランダミミナグサは緑のまま.茎も,ミミナグサの方が紫色が濃いですね.

 現在,オランダミミナグサにおされて,ミミナグサの分布は減っているそうです.危うし,日本の雑草.
 
オニウシノケグサ
 うーむ,イネ科ですね.よく見ますね,こんなの. ヒロハウシノケグサオニウシノケグサだ と思います.オニウシノケグサとヒロハウシノケグサは似ていて,葉耳の毛の有無を見て毛があればオニウシノケグサ,無ければヒロハウシノケグサとしますが,このけがき説の早い時期(夏前)にはとれてしまいます.で,これも毛が見あたらないのですが,落ちてしまったのかも知れません.周りにはオニウシノケグサのが多いんですが.
 外来牧草ですが,全国的に逃げ出しているようで,雑草になっています.
ヒロハウシノケグサ
 在来のものとしてオオウシノケグサというのが低地から高山にまで分 布しているようですが,葉が内側に丸まるようです.それと,オオウシ ノケグサの方が花序が少ない印象を受けます.
 それと,平地では,やはりオオウシノケグサは報告が少ないようです.
ヒロハウシノケグサの葉耳
 葉が茎につくところで,葉の質がちょっとかわっていますよね,黄緑色になって.この部分を葉耳といっています.ヒロハウシノケグサ はこの部分が写真のように無毛ですが,近縁のオニウシノケグサはこの部分に外向きに伸びる開出毛があることになって います.
 よって,オニではなくヒロハだろうとおもいますが,この個体だけでなく,周辺にあるものを春の時期に見て,また毛の有無を見ようと思います.
ヒロハウシノケグサの葉耳,葉舌
 写真に撮るときは,こんな風に少し葉を引っ張って浮かせた写真を撮ります.そうすると,葉耳だけでなく,葉舌という部分の写真も撮れま す.この写真ではほとんど写っていませんが.
 オニ,オオ,ヒロハとも葉舌は非常に小さいことが知られています. なので,okな写真です.
タチヤナギ
 変わって木本もくほん)のタチヤナギです.名前の通りヤナギ科です.
 葉は幅広いですね.
タチヤナギ
 こちらは花が終わり,タネのからが開き,中の種子が綿毛と一緒に飛ぼうとしているところです.ちなみに,2005年5月18日の写真です.この綿毛に よって,種子は風に舞い,水に運ばれ,新しい立地にたどり着くわけです.
 ヤナギはいずれも陽樹で,日陰が苦手なので,川の攪乱でライバルの樹木がいないところに定着できることが重要です.うまく運ばれると良い ですね.
カワヤナギ
 いっぽう,こちらは,カワヤナギです.先ほどのタチヤナギに比べると,葉が細い印象がありますね.
 量的には,こちらのカワヤナギの方が,圧倒的に多いです.
カワヤナギとタチヤナギ
 せっかくですから両方並べて写真を撮っておきましょう.カワヤナギ(下)とタチヤナギ(上)です.比べてみると,両者の違いがはっきりしますね.

カワヤナギ
  再びカワヤナギ.ヤナギって難しいんですよ,本当.葉の細長いヤナギとしては,オノエヤナギが代表選手と言っていいでしょう か.
 この個体も,葉はやや広いがカワヤナギです.鋸歯がはっきりし,托葉(たくよう)は葉の形をして柄があるのがポイントです.オノエヤナギ はぼほ全縁で縁が裏側に巻き,托葉は斜卵形です.
カワヤナギの托葉
 托葉に注目して下さい.披針形をして,まるで,普通の葉を小さくしたようなものが1セット2枚ついていま す.托葉に柄までありますね.
 コゴメヤナギやオノエヤナギは,やはり葉が細長くて似ていますが,托葉が斜卵形でまったく異なります.托葉の観察は大事.
カワヤナギ
もう少し見ておきましょう.一般的なイメージのカワヤナギとしては,葉がやや太いですが...

カワヤナギの鋸歯,葉裏
 鋸歯がはっきりしていますね.浮世絵に描かれる波のような形の鋸歯をして いて,その上鋸歯の先端が腺点になっています.裏が白いのも特徴.
 オノエヤナギは,ほぼ全縁か,不明な鋸歯で托葉は斜卵形.
 コゴメヤナギは鋸歯も細かいんですが,托葉が斜卵形
 これで完璧....!
スカシタゴボウ
 草本(そうほん)に戻りましょう.アブラナ科のスカシタゴボウです.イヌガラシを知っている人は,似てると思ったでしょう ね. 似ています.イヌガラシの果実は円柱形で弓形に曲がるんですが,このスカシタゴボウの果実は短い短角果で,ずんぐりとしてい ます.
 この写真では,ちょっと分かりづらいですね.
スカシタゴボウの葉
 こちらはスカシタゴボウの葉の部分です.羽状に切れ込みます.
ノヂシャ
 ノヂシャという外来種です.ヨーロッパ原産でオミナエシ科です.葉 は対生で,茎は二股に分枝していきます.
ノヂシャ
 花びらは合弁ですからくっついていますが,5枚に分かれます.小さな花ですね.
ノヂシャの葉
 上の方の葉,根元の方の葉は全縁でヘラ型の葉ですが,中程の葉は写真のように鈍い鋸歯があります.
ノヂシャの葉
 こちらは根元の方の葉.全縁で,先の方が太く丸まった,しゃもじ型.
メドハギ
  こちらはメドハギです.在来種で,一見木本のように見えますが,草本です.野生木本図鑑で調べるとでていないので,知らないと調べるのに苦 労するかもしれません.川の植物としてはメジャーですが.
 マメ科で,三出複葉です.
 20060116追記.この前まで,このメドハギを外来と紹介していました.在来です.木本図鑑で調べてでていなかったので,てっきり外 来かと思いましたが,草本だったという落ちです.いや,面目ないです.
イモカタバミ
 こちらはイモカタバミとかムラサキカタバミといわれて似ていますが,これはイモカタバミの方です.
 普通のカタバミは黄色い花が咲き,葉も小さいですが,これは花も葉も大きいですね.花の色が写真のように赤紫色で,中心まで赤紫色なのでイモカタバミ.花びらは赤紫だけど中心が緑色ならムラサキカタバミです.
 葉は,クローバーのようなな形です.
ホソバイラクサ
 ホソバイラクサという植物です.イラクサ科にはトゲのあるものと無いものがあり,トゲのあるものには注意が必要です.これはトゲがある 方.

ホソバイラクサの托葉
 葉は細く,エゾイラクサに似ますが ホソバは托葉が4枚なので見分けられます.エゾは托葉が2枚ですから.
 写真で左にでているのが本葉.右には同じように葉が出ていますね(葉柄しか写真に写っていませんが).茎についている所に托葉が4枚写っ ています.
 托葉といっても,形や質は本葉に似ていますね.
オオカワヂシャ
 おっ,オオカワヂシャじゃないですか. ゴマノハグサ科なので同じ科のイヌノフグリのようながつきます.
 葉は対生で細かい鋸歯があります.ちなみに外来のオオカワヂシャは花のサイズも大きく,紫色の色が濃い,花びらに青い筋が入るのですが, これが濃い,ことなどが指摘されていますが...
オオカワヂシャ
 下の方の葉はこんな感じ.対生の葉が茎を抱くようについているのが分かります.
 下の方の葉は鋸歯のとんがりが穏やかになっていますが...オオカワジシャじゃないですよね?
カワヂシャ
 上にオオカワヂシャの写真を出したので,カワヂシャの写真を出しておきましょう.レッドデータ植物です.撮影日と場所は違いますが,これ も千曲川中流域です.
 花びらが小さく,色が薄いですね?花びらに入る縦筋も薄いです.
カワヂシャ
 それと,オオカワヂシャは,茎などに赤い筋が入ることが多いとか.そして,花茎が湾曲していると言われています.それに対し,在来のカワヂシャ は,花茎は直線的に斜上しているとされています.斜上しているでしょ?これ.
 違ってたら,やだなあ.
シロバナシナガワハギ
 シロバナシナガワハギでしょう.千曲川中流域では,非常に多いんですねこれ.
 花はまだでしたが,夏に白い花を多数付けます.葉だけだとウマゴヤシとかに似ていますが,ウマゴヤシなどは黄色い花を付けますので,花が 咲けば,間違いなく見分けられます.
根粒菌
 このシロバナシナガワハギ,マメ科なので,根粒菌を付けます.写真は1本失敬して掘りあげた所.
 根のまわりにジャガイモの子どものような球形のものがついていますが,これが根粒菌です.
 植物にとって,窒素は,アミノ酸(タンパクのもと)の合成や,クロロフィルのため に必須のものです.空気中の80%は窒素ですが,植物はこれを直接使うことができません.
 根粒菌が土中の気相にある気体の窒素をすって,植物に与えてくれます.かわりに根粒菌は植物からデンプンなどの光合成生産物をもらって共生し ています.
コハコベ
 コハコベです.花びらは5枚なんですが,奥まで裂け10枚に見えます.くわえて花弁が萼片よりも短いのはハコベと一緒ですが...
コハコベの茎
 茎が暗紫色を帯びる点で,コハコベだと判ります.
 それと面白いのは,花は上向きに咲き,花が咲いた後は花柄が下を向きますが,果実が熟すとまた上向きになるんですね.すごいや.
ウシハコベ
 ウシハコベです.やはりハコベの仲間なので,5枚の花びらが裂けて,10枚のように見えます.
 ハコベの仲間では,大きなサイズです.支えている手の大きさを考慮して,コハコベと比べて下さい.撮影倍率はそれほど変わらないのに,こんなに差があり ます.
 見分けのポイントは,花柱が5本であることです.花の中心を見るとやや渦巻き状に雌しべの先が5つになっているのが見えますでしょうか. これがウシハコベです.
 他のハコベの仲間は,花柱は3本と言うことで,ここを見れば間違いありません.
ウシハコベの茎
 葉も大きいんですが,これ,茎の節が暗紫色になっていますね.これもウシハコベの特徴です.
 さらに上部にある葉は写真のように茎を抱く形をしています.

うーん,ウシハコベ,完璧.

ダイコンの花
 さて,左の畑の写真に,なんだか花が咲いています.
 これなんだか分かりますか?ダイコンの花なんです.栽培用のダイコンもこんな花を咲かせます.観賞用に植えられているものは,もっと紫色 が濃いもので,ショカッサイとかオオアラセイトウと呼ばれています.
 ダイコンは,キャベツなどと同様,アブラナ科なので,花びらが4枚です.
 余談ですが,青汁の原料になっているケールもアブラナ科.アブラナ科って非常に人間の役に立っているものなんですよ.白菜,ブロッコ リー,カリフラワー etc.
 ...というわけで,千曲川中流の植物,第1回目でした.もともと私はブナ林が専門でしたし,川の植物や生態といっても,もっと上流の渓畔林を見てきま したから,中流域って,新しい世界なんですよ.ヤナギとかもとまどいますしね.

 ですけど,せっかくのチャンスですから,自分もいろいろ勉強していって,その成果を世の中に還元できると良いな,と思っています.


余談

 皆さんご存じかと思いますが,本田美奈子さんが,先日なくなられました.もとはアイドルでスタートされた方ですが,後にミュージカルやクラシックに取り 組まれたりなさいました.私は特にファンだった,というわけではなかったんですが,1967年生まれで同い年だと言うこと,私は江戸川区,彼女は葛飾区で 隣同士,ということで親近感を持っていました.

 それが,この年で,白血病でなくなってしまったということで,大きな衝撃を受けました.

 相手は有名芸能人,スターですから,その人となりを直接知ることはできませんが,伝え聞こえてくるのは,努力家であった,病気でつらくても,常にまわり の人のことを考え笑顔を絶やさない人であったという話です.

 遅ればせながらCDを買い求め,聞かせて頂いています.すばらしいです,声も歌も.ラフマニノフのVocalise,サラ・ブライトマンで知られる Time to say good bye,そしてAmazing Grace.

 私は宗教的なことは分かりませんが,人はこの世に修行(しゅうぎょう)のために生まれてくるのだ,という話があります.そうであれば,彼女はこの世でな すべきこと成し,「上がり」の時を迎えたと言うことでしょうか.いい人ほど早く逝ってしまうと言うのはそういうことなのかもしれませんね.

 私は彼女から,すばらしい歌をいただき,その生き方に力をもらいました.ご冥福をお祈りします.
 
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