2005年の10月15-16日,日本生態学会の中部地区会大会(研究発表会)がありまして,私の研究室の学生諸君,戸田研究室,生物の佐藤研究室の皆さんで,伊豆は下田にある筑波大学付属臨海実験センターを訪れました.

 私は,まあ,一応発表はあるんですが,私の所の4年生が発表するのと,久々に暖温帯の植物が見られるのが楽しみです.あと,温泉とか.

 そんなこんなで,生態学会参加旅行記です.


富士山
朝6時集合で出かけますが,なかなか全員集まりません.結局6時半過ぎに松本を出発.戸田先生は,はじめ「6時半とか,7時集合で良いんじゃないの?」と おっしゃっていたのですが,絶対時間通りには集まれないとふんで,6時集合,とお願いしたのですが正解でした.
 高速で,甲府南まで行き,富士山を見ながら南下します.

看板
 まっすぐ行っても良いんですが,学生諸君に聞くと「柿田川湧水池なんて知らない」ということなので,ちょっと寄り道しました.
 富士山に降った雪が解け,スコリアの地面にしみこみ,時間をかけて移動してきた地下水が,ここ,静岡県三島の地でわき出します.このわき出した水が柿田川になります.
柿田川湧水池
 ここが柿田川の始まりですが,はじめからいきなり水がドバドバ流れています.
 川(というか池のように見えますが)の中程にグレーの部分が見えますね?あそこから,水が,砂を巻き上げながら噴き出しています.
 肉眼でも,水がわき出ているのが分かります.すごい!

柿田川
 で,いきなりこれだけの川になってしまうわけですよ.水辺にはツリフネソウがぎっちり.中の水草はよく分かりません.双眼鏡をもってくればよかったです ね...
ツリフネソウ
 こちらがツリフネソウ.紫色の,を持つ花(スミレの様な花のイメージ)を上からぶら下げているので,ツリフネソウ,という名前です.珍しい植物ではあ りませんが,なかなか美しいです.
 いや,珍しくない,というのは,信州基準ですから,東京の人などから見たらかなり珍しいですよ.
 
ミゾソバ
 こちらはミゾソバ.タデ科です.これも水辺の植物ですね.葉を牛の顔を正面から見た形になぞらえてウシノヒタイという別名もあります.
 写真もなかなか良いじゃないですか.
記念写真 しまの:「じゃあ,みんな,記念写真とるよ」
はた: 「よーし,ここは3人ってことで,ダチョウ
     倶楽部でいこうぜ!」
皆:  「せーの,やー!」
たけ: 「ごめん,俺,ピースにしちゃった」
はた: 「セイ,セイ,セイ!そういうの,よくない
     んじゃねーの?」
くぼた:「うん,竹内君,協調性無いよね」
たけ: 「いや,俺,そういうのにが手なんだよ
     ね」

ま,楽しそうで何よりです.
ハンノキ
 えー,気を取り直して,こちらがハンノキになります.
 かつては湿地の樹木といえば,このハンノキでしたが,水の攪乱による,裸地の形成や,種子の運搬が大事なこのハンノキ,湿地の減少,水路の管理などで, 生育可能な立地が減ってきています.ちょっとピンチ.
イヌビワ
 こちらはイヌビワ.落葉広葉樹ですが,暖温帯常緑広葉樹林に出る亜高木種です.信州では見ないんじゃないでしょうか.
シロダモ
 こちらはシロダモ.常緑の亜高木です.
 私が学生のころは,毎木調査などの実習で,これと格闘していました.夏は蚊がでて大変なんですよ,こういうのが生えている薮(やぶ)は.
フウトウカズラ
 こちらはフウトウカズラ.これも暖温帯もので,伊豆は多いんじゃないでしょうか,これ.ああ,暖かい所に来たなあ,と感じる植物です.
ジュズダマ
 ジュズダマという植物です.実を見て下さい.ちょうど数珠の玉のようでしょ?
 私の実家,江戸川区は,かつてはハスの田んぼが広く広がっていたと言うことで,私が子どもの頃はまだ,その残骸というか,池なんかが残っていました.
 で,ヨシなんかに混じって,これも生えていましたね.今でも江戸川区に,これ,生えているんでしょうか.立地そのものが無くなっている心配があります.  
ダイコンソウ
 こちらはダイコンソウ.三つに分かれた葉がついているように見えますが,実はこのダイコンソウ,羽状複葉で,その頂小葉が非常に目立って,こういう姿に なります.これも湿った所の植物ですね.
ワジュロ  でましたね.ワジュロです.首都圏で普通に暮らしていると気付かないんですが,気候的には,こんなヤシ科の植物が生育できる暖かさなんですよ.
 シュロの仲間には,大きく分けてふたつ,ワジュロ(和棕櫚)とトウジュロ(唐棕櫚)があります.日本と中国,という意味ですね.
 ワジュロは葉が長く,途中で折れ曲がりますが,トウジュロは葉が短いため,途中で折れ曲がりません.
 写真の個体は,真っ直ぐな葉も見られますが,ワジュロで良いと思います.
イワガネソウ
 シダ植物ですね.ぱっと見がこんな植物は,イワガネソウイワガネゼンマイ,という2種類があります.
イワガネソウの葉の裏
 どこで見分けるかというと,後ろの脈で見分けます.葉の真ん中の軸(中肋といいます)から,細い脈が分かれていっていますね.イワガネゼンマイは,この 脈が一度分かれると,二度とくっつきませんが,イワガネソウはまたくっつきます.
 これは,脈がまたくっつくということで,これはイワガネソウと判断されます.
筑波大学臨海実験センター
 と,6時間近くかけて(途中寄り道もしましたが),伊豆・下田の筑波大学臨海実験センターにたどり着きました.ここが会場で,宿泊所になります.
青木先生
 今回世話人を引き受けて下さった,筑波大学の青木先生があいさつされ,その他,注意事項,タイムテーブルなどについて説明されています.
久保田さんの発表
 私の研究室からは,久保田さんが発表をしてくれました.スキー場の植生の話です.
 スキー場って,自然環境から見るとあまり良いイメージはないんですが,実は,様々な頻度・強度の人の管理がいろいろ組み合わさっていて,今消えつつある 水田雑草が水路沿いに見られたり,霧ヶ峰で見られるような高茎草本が維持されていたりするんです.

 発表自体は,調子よかったんですが,質疑・応答では,ちょっととまどいましたかね.
 でも,皆さん好意的に受け止めてもらえてよかったんじゃないでしょうか.

 ええ,私の発表なんかより,ウケけてましたよ,ええ,本当に...
発表はつつがなく進行し,夜は懇親会,ということで飲みました.
 飲む前に,せっかくここまで来たのだから,ということで,温泉に出かけました.戸田先生がかつて,このセンターにいたことがあって,なじみの温泉宿があるとのこと.ご案内頂きました.佐藤先生に至っては,センターのお風呂にすでに入ってらしたんですが,「えっ,温泉?いくいく」ということで,風呂をあがって温泉に.
 いや,なかなか良い所でしたよ.写真はないんですが.
朝の散歩
 翌朝は,エクスカーションがあるんですが,まずは朝の散歩.朝食までに二日酔いが覚めると良いんですが.
シロダモ
 そんな二日酔いでも,カメラを持ち,観察を怠らない所は,さすが私もプロですね. いや,研究もプロらしくグイグイ進むと良いんですが...
 こちらは,柿田川でも見たシロダモ.クスノキ科ですから,葉の表面に3本の脈が目立つことが特徴です.葉をめくると真っ白.
カラスザンショウ
 こちらはカラスザンショウ.暖温帯に分布する,典型的な陽樹.常緑の樹木が倒れ,林床が明るくなると,埋土種子から光発芽し,一気に成長するという,典 型的な陽樹遷移初期種gap successor)です.
アカメガシワ
 アカメガシワです.これもカラスザンショウと同様の性質を持つ,ギャップ・サクセッサーですね.関東にいた頃は,こんなのまったく当たり前にある樹木 だったんですが,信州に来てからは,珍しい植物になってしまいました.
 「あっ,アカメガシワだ.写真とんなきゃ!」って感じです.
バナナですか?
 センターの庭に植わっているもの...
 これ,バナナでしょうか.さすがにそこまで,私も分かりません.しかし,南国な感じですね.
オシロイバナ
 オシロイバナ,ですよね?花を摘んで,根元の部分を数と,甘い蜜を味わうことができます.子どもの頃は,名前も知らず,そんなことをしていました.
トベラ
 海岸に出る樹木の代表の一つ,トベラです.皆,塩害を防ぐためか,クチクラ層が発達しています.なので葉がテカテカ.
 葉が後ろにまいているのも,塩害に対する防御じゃないですかね.
ウバメガシ
 これも海岸沿いの樹木,ウバメガシです.
 炭の最高級品といわれる,備長炭.その備長炭の原料がこのウバメガシです.
オオバイボタ?
 2006年1月5日追記はじめ外来のトウネズミモチの葉の変な奴かと思っていたのですが,オオバイボタの様ですね.どうでしょう.これもモクセイ科ですから対生.いや,あまりちゃんと見たことが無いので,pendingとしたいと思います.オオバイボタは海岸沿いにでることが知られているので,それっぽい.しかし,あまり多く見るものではないので...と,堂々巡り
ヒメユズリハ
 ヒメユズリハです.多雪環境下のブナ林では,この仲間のエゾユズリハというのが分布しますが,これは暖温帯の,海沿いに出ます.
イソギク
 イソギクでしょうか.ええ,キク科です.
 葉の後ろが真っ白ですね.この仲間も色々あるので,ちょっと調べてみます(いつ?いつまでに?).
マサキ
 こちらはマサキ.松本でも庭木や生け垣に使われますが,これは野生です.すばらしい.
コマツヨイグサ
 コマツヨイグサです.マツヨイグサの仲間では,小さい部類で,他のものはまっすぐ立つ形をもっていますが,これは,写真のように結構寝ちゃっています ね.
コマツヨイグサ
 この,コマツヨイグサ,花は,一度しぼむと,オレンジ色になります.
ツルナ
 ツルナですね.同じ海沿いでも,こうした砂場で見かけます.いや,絶対岩場にない,というわけではないですが.
 雑草のような草ですが,これ,食べられます.民宿なんかで食べる機会もありましょうか.おひたしやみそ汁でどうぞ.
ツルボ
ツルボです.ユリ科.明るい草地にでます.海沿いでもokなんでしょうかね.
ハイビスカス
 来ましたね,ハイビスカス.もちろん日本のものではないですが,これとか,ブーゲンビレアを見ると,南国という感じです.10月中旬ですが,花,全然 okなんですね.

 何でしょうか.外来の園芸植物が移出したものだと思いますが...調べておきます.
 と思って調べました.ヒマラヤ原産で園芸用に持ち込まれたようです,ヒメツルソバ.タデ科タデ属.石垣の隙間に良く生えるようで.
マルバグミ
 マルバグミですね.グミの仲間で,暖温帯の海岸に出て,葉が丸く,裏が白い奴です.
 写真ものは,枝先から,新しい葉が伸びていますね.
マルバグミの葉の裏
 裏をめくってみましょう.白い,というか,銀色,という表現の方がいいかもしれません.
 なかなか印象深いです.
ラセイタソウ
 こちらはラセイタソウ.海岸植物と言っていいでしょう.イラクサ科ですが,トゲはないので,さわっても安心.ごわごわとした外観が特徴.脈の彫りが深い ですね.
ホシダ
 せっかく佐藤先生がいらっしゃるのですから,シダも勉強しましょう.
 ホシダ,だそうです.やはり暖温帯のもので,ここいらでは,当たり前のものですが,やはり信州に行くと珍しいものになってしまうそうです.
 先端の部分がすごく伸びていますね.これが特徴だそうです.
エクスカーション風景 私は植物ばっかり見ていましたが,大会公式のエクスカーションでは,青木先生や,青木先生についている学生の皆さんの指導で,磯辺の生き物を観察する機会を得ました.
 天気があまりよくなかったのですが,皆さん童心に返られて,楽しんでいらしたようです.
 こういうのも,地元の漁協にあらかじめ連絡を取ったりと,いろいろ青木先生にお世話になってしまいました.ありがとうございます.

 ま,そんな感じで,学生の皆さんにとって学術大会で発表するのは,いろいろ大変かもしれませんが,せっかくですから,いろいろ楽しみたいですよね.こんな行事をふまえながら,私も,学生諸君も勉強していければと思います.

 うん,なかなか良いじゃないか!

では,良いお年を.受験生の皆さんは,風引かないように.

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