まずは,乗鞍高原の番所大滝に向かいます. 乗鞍高原自体は,約5万年前に乗鞍岳から流れ出た溶岩によってできた溶岩台地です. 溶岩が流れたあとは,その両脇が溶岩堤防で盛り上がり,台地の中央がややへこむ地形になると. そこに川が流れるようになりますが,浸食の結果,溶岩堤防外の河川に流れが切り替わり(河川争奪),この切り替わり点が番所大滝になっている,というこ とです. |
展望台から眺める番所大滝.水の流れを強調するために,シャッタースピードをあえて遅くして撮影してみました. 後で触れますが,滝周辺の斜面は,崖になっており,ツガやヒノキなどの常緑針葉樹が生育しています. |
溶岩が流れた後,その上部(表面),下部から溶岩が冷えてゆき,収縮することによって,上下方向に割れ目が入ります.これが柱状節理の成因だと言うこと です. |
それに対し,写真のような横に割れていく節理,これを板状節理と呼ぶのだそうですが,この成因については詳しく分かっていないようです. しかしながら,溶岩が流れていくときの速度差などから生まれる力で,水平方向に割れるような節理ができるのではないか,ということです. |
乗鞍高原のビジター・センターの中の模型地図です.このビジターセンターの展示は,なかなか充実しています. この模型の向かって左側が乗鞍岳,右にダム湖である梓湖(あずさこ)が見えますが,中央部が乗鞍高原です.かつての谷を,5万年前の溶岩が埋め,なだら かな地形になっていることが分かります. |
さて,番所大滝の標高は,1200m程度ですから,本来なら,ブナやミズナラが優占する落葉広葉樹林帯が極相です. しかし,先ほど滝の写真で見たように,崖の,土壌の発達しづらい立地では,ツガやヒノキなどが発達します.こうした針葉樹は,実生(種からの芽生え)が 小さく,土壌や枯れ葉のあるところではむしろ埋まってしまうこと,土壌中の菌類に弱いであろう事,また,硝酸イオンなどが少ない貧栄養な立地でも生育でき ることなどから,比較的安定した植生をつくります. このように,周囲の気候的極相と異なる立地的な極相を「土地的極相」と呼びます. |
ビジター・センターに近い乗鞍高原・一ノ瀬園地です.牧場として利用されており,樹木はまばらですが,白樺は美しいですね.奥が乗鞍岳になります. |
ここは湿地も多く,もう少しするとミズバショウが見事です.今はまだ雪の下ですが,ハイイヌツゲが見られることから,この雪の下が湿地であることが分か ります. こういうところは長靴を履いていても,潜ってしまいますので,注意. |
こちらは,溶岩台地の縁の部分です.写真向かって左側は谷になっており,谷の向こう側は,チャートという岩石でできた立地です. チャートとは,海底中の放散虫や有孔虫の炭酸カルシウムが固まってできた岩石です. 川一本を挟んで,地質が異なる例です. 写真の部分は,こうした基盤の上に,河川が氾濫してたまった土砂や礫の上に,溶岩が流れてたまった状態を示しています. |
対岸側を上流から下流に向かって撮影した写真です.谷に面した,崖地に針葉樹,なだらかな面に落葉広葉樹が発達していることが見て取れます. |
上記の露頭をみたあと,林道を再び牧場方面に戻りますが,道の真ん中に見慣れない構造物が... |
これは,牧場の牛が逃げないようにする装置だそうです.牛が歩いていくと,この隙間に足(蹄)をとられて,動くことができなくなってしまいます.牛もそれを知って,この溝から先には,進むことがないそうです. すごいですね. |
エクスカーションだけでもかなり勉強した感じですが,宿舎に戻って,セミナーを続けます. 三宅先生の後,生物のドクター・コース生の上田君,物循のドクター・コース生の田原君らの話が続きました. 日頃お互いの分野のことは知らないので,教員ばかりでなく,学生からも盛んに質問や意見が交わされました. |
その後,南極に研究で行かれた鈴木先生によるセミナー(スライドショウ?)を行った後,各自,温泉など
につかるなどしつつ,食事の準備をしました. 懇親会は自己紹介などもはさみながら続き,学生諸君は深夜まで熱心な議論を交わしていました. |