島野です.

今年の夏は,十日間ほど佐渡島に行きました.大学院生の清水さんの手伝いです.近所で調査・研究している諸君は良いんですが,遠くだとなかなか手伝ったり するのにもお金がかかったり,たいへん.そんなことで私の出番です.

ノウサギのハビタットを研究する清水さんですが,修士ではそのハビタットを佐渡島の様々な植生環境に拡大し,佐渡島の植生環境の全貌を探る,という大仕事 にしようとしています.すごいですね.地元の人でないと出来ません.もちろん私にとっても海辺やらなにやら,分からないことばかりですから,スター・ト レック(Star Trek, the next generation)風に言うと

To explore strange new worlds.
To seek out new life and new civilizations.
To boldly go where no man has gone before.

...といった感じです.では,Engage!


 初日.港に上陸したのが夕方4時くらいですが,日が長いと言うことでいきなり調査.
 清水さんはやる気満々です.

 佐渡では今,トキを野生にはなせるように,無農薬・低農薬のお米作りを進めています.除草剤バリバリの所より,いろんな水湿植物が出るんじゃないでしょ うかね.

 では,発進.
環境にやさしい佐渡米づくり
「環境にやさしい佐渡米づくり」実施中,だそうです.
クサネム
 クサネムです.カワラケツメイと似ていますね?ええ,非常に似ています.違いは何処かというと カワラケツメイの茎は中身が詰まっていますが,クサネムの 方は中空です.パイプ状.だから千切ればもちろん分かりますし,切らなくても,茎をちょっと押してみれば中が空洞なのが分かります.
ヤノネグサ
 ヤノネグサです.タデ 科.これは 長野県内でも見ますね.葉(葉柄)の付け根が葉鞘という筒状の膜に覆われているのがタデ科の特徴.葉鞘から長い毛が出ていますね.
スズメノヒエ
 スズメノヒエ.イネ科ですね.外来種のシマスズメノヒエが増えてい るようですが,ここでは在来のスズメノヒエが見られます.
スズメノヒエ
 シマスズメノヒエとどこが違うかというとこの毛.在来のスズメノヒ エは葉に毛があります.
ヒメジソ
 おっ,シソ科ですね.ヒメジソです.

 ちょっとトウバナなんかにも似ていますが,トウバナはもっと葉の鋸歯が丸い感じでやさしい印象.こっちは尖っています.
ヒメジソ
 このヒメジソの特徴は,前述のように鋸歯が少ないために鋸歯が荒く見えるのと,写真にあるような葉の裏の腺点(もしくは油点,とも)
 こんなにはっきり腺点があるのは,これとイヌトウバナとかですね.
 イヌトウバナは茎に毛が多く,葉もはもっと長いので鋸歯が多い(7対以上とか).ですから間違えないと思います.
シカクイ
 イグサ科ですね.何でしょうか...

 調べると,シカクイ,らしいことが判明.

 どのへんがシカクイかと言いますと...
シカクイ
 茎の断面が四角いんです.四角柱,ですね.サンカクイは茎の断面が 三角なので,あまりにもそのまんまなネーミングに,ちょっと萎えるかも.
 高さは20cmほど.



 そんな感じで初日の調査終了.
 はじめからややとばし過ぎな感じもしないでもないですが,一日充実しました.

 日が暮れるとホッとしますね.
二日目.

いきなりですが,海岸の調査です.

良いんですか,清水さん?
分かるんでしょうか,植物...

 こんな感じの砂浜.
佐渡植物園
うーむ,全然分かりません.佐渡に出現する植物のリストでもあると良いんですが,ブナ林出身の私にはまっ たく手が出ません.

で,情報を求めて,左の写真にある,「佐渡植物園」に.
しかし... いや,しかし,ここは資料なんかはない,まさにボタニカル・ガーデン.今回はちょっ と役に立ちませんでした.

おばあちゃんが里帰りしたお嫁さん,お孫さんを連れ,散策していましたので,そう言うのには良い感じなんでしょう.

あと,隣にある佐渡・一の宮の度津神社(わだつじんじゃ)は立派ですね.名前の通り,海の神様をまつってあるそうです.

で,結局,金井の図書館に行って,リストをコピー(本闇建一郎「佐波島の植物(羊歯・毬子植物)」).やはり下調べが大事ですね.
ハマゴウ
 さて,気を取り直していきましょう.まずは,ハマゴウ.これは知っ ていました.逆に言うと,ハマゴウ,ハマナス,ハマヒルガオぐらいしか知らなくて,後 は未知の植物ばかり,という感じでした.
 これは宮崎の青島でも見ましたから.
ハマヒルガオ
 こちらがハマヒルガオです.残念ながら花には出会うことがありませ んでした.
 砂浜に一番似合うのがこれな感じ.
ハマナス
 ハマナスも花は終わって実の季節.写真には実も写っていません が...
 空は青く,暑い日でした.
スナビキソウ
 さて,この辺から知らない植物のオンパレード.私にとっては「新種」です.
 まずはスナビキソウ.ムラサキ科です.花の跡が見られました.漢字 で書くと砂引草ということで,海岸特有の植物のようです.
オニシバ
 オニシバだそうな.確かにシバににながら,ちょっと雰囲気が違いま すね.葉は茎の左右に並んできれいに生えます.
ケカモノハシ
 うわ,またイネ科.
 見たこと無いよ,これも...
ケカモノハシ
 で,リストからイネ科を抜き出して,図鑑をめくっていくと,ケカモノハシで あることが判明.
 カモノハシ,という種もあるんですが...

ケカモノハシ
 ごらんのように,たいへん毛深い.この辺がケカモノハシたるゆえんですね.
 白い毛がボウボウで,さわるとふさふさ.皆さんもぜひさわって下さ い.
ハマニガナ
 花はキク科のものなので,リストと図鑑をにらめっこ.ハマニガナと 判明.葉はやはり乾燥に耐えるべく,やや厚みを持っています.
コウボウムギ
 これは有名.コウボウムギムギ,といっていますが,カヤツリグサ科のスゲ属でムギの仲間ではないんです ね.
カワラヨモギ
 カワラヨモギも出てきます.本来海岸でなく,河原に出るもの,とい う意味のネーミングでしょうが,乾燥地に適しているのでしょう,海岸にも出ます.
ネコノシタ
 こちらはキク科,ネコノシタ.ユキノシタ科ではありません.
 どのへんがネコノシタかというと,葉が分厚く,そしてザラザラして います.ネコに舐められたことありますか?ネコノシタって,すごくザラザラしているん ですが,葉をさわると納得.

ネコノシタ
 ごらんのように,ネコノシタは地上茎を走らせ増えていきます.
ハマニンニク
 さて,またもやイネ科.ま,しょうがないですね,イネ科が出てくるのは.

ハマニンニク
 私はもうまいっちゃったんですが,清水さんが調べてくれます.
ハマニンニク
 ハマニンニク,と判明.
 花は特徴的なので,覚えられそう.写真はもはや花ではないですけど.
ハマニンニク
 葉の付け根.葉耳,葉舌は発達せず,毛もないのでつるりとした印象.
 ケカモノハシとは対照的ですね.
ハマニンニク
 基部はこんな感じ.記録ですから,何でも写真に撮っておきましょう.

ナミキソウ
 イネ科でまいっている所にシソ科.なかなか強敵です.

ナミキソウ
 で,またもや清水さんが調べてくれました.ナミキソウ,です.漢字 で書くと波来草,ということで波がかかるような所に出る,ということのようです.

「波,来そう」

という風に覚えればバッチリ.花が咲いているものはありませんでしたが,図鑑で見ると同じシソ科のタツナミソウのような感じです.
ハマエンドウ
 マメ科.これくらいだと調べやすいですね.
 ハマエンドウ,だそうです.残念ながら花は見られませんでした.

ハマボッス
 と,砂浜の調査を終え,岩場に移動.これは分かります.ハマボッス. これはもう実ですが,後ろの方に花の写真があります.
キリンソウ
 岩場と言うことでキリンソウが出現.ベンケイソウ科の多肉植物で す.乾燥に強い形をしていますね.

...といったあたりでこの日は修了.

いやあ,手強かったです,海岸.
ま,しかし,勉強になりましたよ.
海岸はまた別の日にまわることになります.ハマボッスの花やハマエノコロはまたそちらで.

まだ二日目か...
先は長いな....

つづきはこちら!


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