佐渡植物記,その4は佐渡上陸9日目.それでも日々新しい発見があるのでした.今回は,林道沿い,海沿い,そして水田植物です.

ヒメヤシャブシ
 ヒメヤシャブシです.ヤシャブシの仲間には大きく3種があって,ヤシャブシオオバヤシャブシ,ヒメヤシャブシです.
 オオバヤシャブシは太平洋側,ヒメヤシャブシは日本海側に主に分布し ます.
ヒメヤシャブシ
 どこで見分けるか.雌花序を見ましょう.一つのフサから多くの雌花序を つけていますね.これがヒメヤシャブシ.写真では5つ付いています.オオバヤシャブ シ は通常一つ,ヤシャブシは3つほどです.
 いずれも根粒菌を持って窒素固定をします.
ツチアケビ
 おっ,ツチアケビですね.
ツチアケビ
 ツチアケビはラン科の植物.写真は花が終わって実になっている所です.小指程度の大きさの,ソーセージのような実をつけます.
 あまり見ませんね.私も十数年ぶりに見ました.

 さて,佐渡は海岸にカシワ林が発達します.今回はカシワ林ではなく,海岸の岩場の植物を見ます.
ウシノケグサ
 いきなりマニアックなイネ科,という感じですが,大事な植物です.ウシノケグサ. 葉は細い針金のような感じで,堅い手触りです.この毛を「牛の毛のようだ」ということで名前が付いています.
 私は牛の毛を触ったことはありませんが.
エチゴトラノオ
 エチゴトラノオです. ヒロハトラノオ,ヤマルリトラノオと種としては一緒で,それらの変種扱いです.
 花は終わって実になっていました.
エチゴトラノオ
 エチゴトラノオ.ほとんど毛はありません.


イワユリ スカシユリ
 イワユリです.こちら,佐渡で有名な植物.イワユリというのは地元 佐渡の言い方で,標準和名はスカシユリといいます.風の当たる岩場, 背が低いですね.
 隣に生育しているベンケイソウ科はキリンソウです.



 9日目はこれで終了.山の林道脇から海岸の岩場まで,よくまわりました.というよりも,いろいろまわって遠くへ来て,ただ帰るのはもったいないので調査 をした,という感じですが.ええ,何事も無駄にしてはいけませんね.


 で,10日目です.海をまわって,放棄水田へ.
イタビカズラ
 宿根木に来ました.町並みも良いんですが,崖の植物の方が大事.
 こちらはイタビカズラ.クワ科で新潟以西に分布.寒すぎる海岸沿い にはないんですよ.北限に近いんじゃなですかね,佐渡は.
イタビカズラ ツワブキ
 植生(植物群落)としてみるときは,対象となる植物が何と一緒に出てくるかが大事.ここでイタビカズラは,ツワブキと一緒に分布しています.
 ツワブキは写真の右側に移っているフキのような大きく丸い葉の植物 で,常緑.普通のフキは落葉です.
 あとヘビノネゴザですかね,一緒にあるの.
ハマハタザオ
 何か見たことのない物が...新種ですね(もちろん自分にとって).
 調べてみると...ハマハタザオです.茎の先に実が細長く付いているのはアブラナ科の特徴.何とかハタザオかな,と思 い調べていきました.
ハマハタザオ
 ちょっと拡大.中心にロゼットがあり,茎からは互生の鋸歯のある葉が出ます.白く短い毛が目立ちます.
 さて,夕刻,再び田んぼ.放棄水田に来ました.
ちょっとした湿原,という印象です.
サワトウガラシ
 まずはこれから.写真中央に紫色の花が見えますね.サワトウガラシで す.ゴマノハグサ科.アゼトウガラシに似ますが,アゼトウガラシは鋸歯が4つほ どあり,サワトウガラシは全縁なので見分けられます.
サワトウガラシ
 縦位置で.葉は対生です.
サワトウガラシ
 花はこんな感じです.オオイヌノフグリとかカワヂシャを思わせる,ゴマノハグサ科らしい物です.
 葉だけでなく,花も,アゼトウガラシとは違います.
ヒメクグ
 こちらは,カヤツリグサ科のヒメクグ.後ろの葉の大きな物はコナギです.
サンカクイ
  カヤツリグサ科を続けましょう.サンカクイです.写真では分かりませんが,結構背が高くて,30cm程度になる のは普通です.
 カンガレイに似ますが,カンガレイは花序に柄が無く,サンカクイは花序に柄があり ます
ヒデリコ
 ヒデリコです.カヤツリグサ科ですが,テンツキ属です.これも放棄 水田などで見ますね.

 夏の暑い日差しにも強く,日照りに強い,というのが「ヒデリコ」の語源のようです.
ハリイ
 うわ,何か細かいのがいっぱい.
 まずは上から見ると放射状に株を作っている物から見ましょう.ハリイで す.下に拡大写真があります.カヤツリグサ科のハリイ属です.
マツバイ
 もっと細かいのがあります.マツバイです.私の指と比べても小ささ が分かりますね.これもカヤツリグサ科ハリイ属.
ハリイ マツバイ
 ハリイ(写真左)とマツバイ(写真右)をアップで比べてみましょう.さすがにマクロレンズでないととれません.花の大きさ,茎の太さなどずいぶん違いますね.長さもハリイはマツバイの倍ぐらい長いで す.
 それと,上の写真で見たように,ハリイはきれいな株を作りますが,マツバイはラン ダムに生えているように見えます
ホタルイ
 佐渡では何回か出てきました,ホタルイです.15-20cmくらいの高さですが,まわりがマツバイで小さいので,こうしてみると大きく見えます.

 花のアップは前回,佐渡植物記3にありますのでそちらでどうぞ.
キカシグサ
 これも小さいですね.キカシグサ.ミソハギ科です.除草剤が普及す る前はよく見られた水田雑草だったとか.
 ということは,これがある水田は,除草剤無しの無農薬水田,ってことのサインになりますかね?

 キカシグサをアップで見てみましょう.
 葉は対生で茎は赤紫色.この写真の個体は,葉が波打って見えますが,左の写真の方が一般的なイメージに近いと思います.
ヒメジソ
 ここでもヒメジソを見ます.佐渡の初日で見たやつです.あそこも減農薬のトキ米を作っている水田でしたね.(佐渡植物記1).
ヒメビシ
 葉の裏の腺点(油点)も,もう一度写真に収めておきましょう.

 この日の調査はここまで.翌日は松本に帰ります.
トキ交流会館
 最終日,ということで,新潟大佐渡演習林,いや,今はフィールド科学センター,って言うんでしたっけ.そこの本間君に連絡しました.時間があれば飲も う,という感じで.
本間航介准教授
 本間航介准教授:「いやー,今日は泊まり込みの仕事でさあ」
 そうですか,お忙しい所お邪魔してすみません.この日はトキ交流会館,という所で市民向けの講習会兼実習を開いているとのこと.泊まりがけだそうです. でも,あえてよかったですョ.また今度ゆっくり.

 そんな感じで佐渡の10日間が過ぎました.翌日,船で直江津に.
 非常に多くの植物,植生に出会えて,すばらしい経験でした.特に私にとっての新種も多かったですし,水田の植物をあんなにきっちり見ることになるとは 思ってもいませんでしたし.あとは,海辺の植物ですね.海あり,山あり,田んぼあり,という,非常に密度の濃い探検をさせていただきました.

他の学生諸君にも見せてあげて下さい > 清水さん.

ではでは.

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