「自然を読み解く山歩き」「ブナ林再生の応用生態学」

UPDATE: 2008年月18日

頂いた本の紹介


 どうも,島野です.
 今期も授業が始まってしまいました.こう見えても結構まじめに授業をするので,大変なんです.毎回小テストとかやったりして.
 で,今日もこのあと授業なんですが,授業の準備も終わり,あと30分ばかり時間が空いているので,最近頂いた本を2冊紹介したいと思います.頂いた順番 (年代順.大げさかな)にご紹介しましょう.

小泉 武栄 著「自然を読み解く 山歩き」2007.JTBバブリッシング発行


山 の自然学」等の著者をお持ちの自然地理学者でいらっしゃる小泉先生の近刊です.「山の自然学」は岩波文庫から出ている名著ですが,なにぶん,あ の体裁ですから,写真が少なく,また白黒だったりします.
 今回の本は,もっと一般向けに書かれていて,写真については,ほぼフルカラー.よく見ると,カラーページと白黒ページ(文章と,地図)が,紙の裏表に なっていて,良く組み立てられていますね.

 形式は,有名な山川と,湿原ごとに話がまとめられています.我々がexcursion(エクスカーション)といって,実際に野外に行って自然を見 たり, 下調べしておいた知識屋なんかを確認したり,そして新たな発見をしたりするのですが,そうした エクスカーションに連れて行ってもらったような気分になれ ます.プロの解説付きで.多分この辺がねらいで,登山やハイキングでいろいろな山に行く人とたちに「自然の見方を知っていたら,こんな風に,もっと楽しめ るよー」ということを伝えるコンセプトなんでしょうね.

 読んでいるだけでも,勉強になり,楽しめますが,できたらこれで勉強したあと,実際に見に行きたいですね,いろんな所へ. 

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もう一冊は,北大の小池孝良先生から頂きました.↓
寺沢和彦・小山浩正 編「ブ ナ林再生の応用生態学」.2008.文一総合出版.



北海道でブナ林の生態,特に再生に関わる研究をされている方々が中心になって出版された本です.が,再生だけによらず,ブナの遺伝的な変異や環境応 答特性の地理(地域的)変異等についてもまとめられています.また,ブナ林の天然更新に関する施行と研究,といった,研究史(レビュー)があったりして, 色々楽しめます.私の論文も引用していただきました.ありがたいことです.

 この本に取り上げられている個別の研究は,例えば日本林学会誌(最近気が付いたのですが,今は日本森林学会誌というんですね.気づかなかった!) などに 発表されてきたりしたものですが,こうやってまとまっていると,読む方も楽です.ちなみに,こちらは,上記の本と違い,やや専門家向けですので,各章の最 後に引用文献なんかがリストアップされていて,ちゃんと勉強したい人たちにも良い橋渡しになりましょう.

 さて,本をお送りいただいた小池先生は,この本の中の「ブナの環境応答特性の地域変異」という章を担当されています.

 一言で,ブナ,といいますが,日本海側の多雪地域に分布するブナと,太平洋側の寡雪地域に分布するブナでは,性質が違うんですね.私が日本海・太 平洋経 度でブナ林の更新の違いなどを研究し始めた頃までに,葉のサイズの違い,そして一緒に分布する種組成の違い,そして小池先生らの生理的反応の違い,なんか が明らかになってきていたという背景があります.

 小池先生の研究は,多雪地のブナと寡雪地のブナで,例えば葉の柵状組織が一重と二重で違っていたり,これが原因で光合成特性などが違ったり,と いったことを明らかにされてきました.これもやはり,個別の論文で報告されてきたことなんですが,日本語でまとめて読めるのでありがたいです.私みたいな 英語の苦手な人間には.

 ちなみに,小池先生は,「樹木生理生態学」 という本も出されていて(編著),こちらも,私みたいに生態学から生理の分野を学ぼうとする人にとって良いテキ ストです.5000円と,ちょっとお高いけどお勧め.いきなり生理学のテキストを読んでもよく分かりませんが,材料が森林の樹木でなじみがあったり,やは り,生態との関係から生理をとらえていこう,という感じなので,取っつきやすいです.今手元になくて,きちんとレビューできませんが.家に持って帰ってた かなあ?

と,そういうことで,御著書を頂いた両先生にお礼申し上げます.まる.