8月下旬.休暇を取りました.久々.お盆も働きづめだったし,良いでしょう.
 自分の研究室の学生の論文を査読誌に出すべく準備するんですが,何というか,査読依頼も多くて,人の論文ばっかり読んでいる気がします.こうして研究で きなくなっていくんでしょうか.
 で,京都に行きました.仕事とか研究以外で京都に行くなんて,いつぶりでしょうか?修学旅行以来?昭和は遠くなりにけり.
 というわけで,京都は鞍馬から貴船に抜ける山道を参拝なぞしつつ見学させて頂きましたので,紹介させて頂きます.
 休暇とは言いながら,結局植物見に行っちゃうんですね...これじゃ研修(自腹の出張)ですねぇ.
 


出町柳から叡山電車(えいざんでんしゃ)で鞍馬を目指します.はじめは街中を走りますが,やがて谷をわたり,トンネルをくぐります.

 終点は昔ながらの木造駅舎.良いですね,昭和な感じ.20年くらい前に来たときは,電車の床が木でできていました.今でも田舎のバスでたまに見ますね.

鞍馬寺の山門までは,土産物屋さんが続きます.良い感じ.

 で,ここが鞍馬寺の山門.朱塗りの立派なものです.中をくぐって,拝観料200円を納めます.ここでは愛山費というんだとか.





 上の本殿まで上がるには,結構標高差があります.で,お寺が運営する(!)ロープウェイなんかもあるんですが,ここは自分の足で上がっていきます.

 渓流沿いに道を歩いていきましょう.

しばらく行くと,由岐神社(ゆきじんじゃ)という神社があります.有名な鞍馬の火祭を行っているのは,お寺ではなく,こちらの神社.御祭神は大己貴命(お おむなちのみこと.大国主命の別名)と少彦名命(すくなひこのみこと)です.国津神(くにつかみ)として国造りを行い,天津神に国土を譲った神様.
 しかし,全然変換できないぞ!ATOK17!
(もっと新しいのを使えということか?)
カゴノキ
 境内に大きなカゴノキ.京都市の天然記念物になっているようです.

 幹肌はご存じの通り鹿の子模様(かのこもよう).絡んでいるのは,小さい葉っぱのツルがマメヅタ.大きい方はイタビカズラ.マメヅタの方はシダ植物で す. 伊勢神宮でも見ましたね.神社植物(笑).
カゴノキ
 カゴノキ,こんな葉っぱです.特徴無いですねぇ.葉っぱ一枚持ってこられて,「これなぁに?」とされたら,答えられないんじゃないでしょうか.
オモト
 オモト.ユリ科の常緑多年草.暖温帯の植物です.関東ではよく植わっていますが,西日本では自生するとか.
ミヤマカタバミ
 ミヤマカタバミですね.これは信州でも見ます.まさかここで見られるとは思いませんでした.左下の植物はウワバミソウ,手前のシダは,何とかイノデで しょうか.
ミヤマミズ
 ミヤマミズですね.すっきりした端正な立ち姿です.信州では...見たこと無いかな.

 ヤマミズで良いと思いますが...

 イナモリソウか何かかと思ったんですが,見直したらヘクソカズラでした.
 葉の付け根の部分に三角形の托葉があります.やられた!
イワトラノオ
 イワトラノオ(シダ).チャセンシダ科チャセンシダ属.こうした,渓流沿いのこけむした崖から生えるとか.例によって,佐藤先生に教えてもらいました. 良いじゃないですか,典型的な立地での写真.
クサアジサイ
 おっ,良いですね,クサアジサイ.アジサイはふつう対生ですが,これは互生.で,草本です.
オガタマノキ
 オガタマノキ.これも特徴無いっちゃ無いんですが,葉の付け根に注目.モクレン科ですので,コブシと同じように,葉柄から枝にかけて枝を巻くような線が 入 ります.写真がないと説明しづらいですが...
 また今度.
オオバノハチジョウシダ
 きました.暖温帯のシダ.オオバノハチジョウシダというんだそうです.これは大きい.1mとかになりそう.
 来たぜ,暖温帯!という感じ.たとえ種名は分からなくとも.
オオバノハチジョウシダ
 葉の裏.こんな感じ.ちょっと見えにくいですが,ソーラスが縁に線状に着いていますね.で,ソーラスがないところは小さな鋸歯があります.
マツカゼソウ
 これは信州でも見ます.マツカゼソウ.葉をちぎるとミカンのにおいがしますが,滅多にちぎるのはやめましょう.3回3出複葉になりますね.葉の形が特徴 的なので,これで覚えましょう.
ヤマアイ
 ヤマアイです.これも神社植物(島野命名).以前見たのも伊勢神宮別宮・伊雑宮(いざわのみや)や,白山比盗_社(しらやまひめじんじゃ)でした.
オオバノイノモトソウ
 オオバノイノモトソウ.イノモトソウと違って羽軸に翼がありません.
リョウメンシダ
 ご存じリョウメンシダ.リョウメンシダのように,裏も表もなく生きないと行けませんね.
ヤブソテツ
 ヤブソテツ.葉がてかるとオニヤブソテツ,とか言うんですが,ストロボで写真を撮るとどうしても光沢があるように写ってしまいます.
カテンソウ
 こちらは小さいですね.カテンソウ.イラクサ科です.葉身の部分は1cmほど,葉柄を入れても長さ2cmほどです.葉は互生し,写真でも小さく写ってい ますが,葉の付け根に托様があります.
シャガ?
 シャガかヒメシャガでしょう.花がないと見分けられません.何か区別点があるんでしょうか,この状態で.
ユキノシタ
 苔むした岩に毛だらけのユキノシタが生育しています.
フシグロセンノウ
 フシグロセンノウ.これはあまり茎の節が黒くありませんが...
ハグロソウ
 キツネノマゴ...と思ってアップしたんですが,神戸大の松村さんから メールをいただき,キツネノマゴ科のハグロソウであると指摘を受けました.すみません,チェックして頂いて.私にとって新種です.奥村 (1990)「信州の 野草」では「県中部・南部に希」となっていて,初めてみました.いや,見たときはキツネノマゴだと思っていたんですが(^^;
 キツネノマゴは花が花序になって段々につきますがハグロソウはそうはなりません.ここが違い.松村さん,ありがとうございます.

 というわけで,本堂が近くなってきました.空は青く,参道にかかる楓の緑がまぶしいです.紅葉の季節はまたすばらしいでしょう.11月かな,京都だと.

 こちらが本堂.毘沙門天がまつられています.内部は撮影禁止なので(たしか),写真はありません.
 登山道の整備,ということで少し寄付してきました.

 で,もう少し上がっていきます.ここ,有名なところ.木の根が盛り上がって縦横無尽にのびています.
 牛若丸(後の源義経)が修行したところ,ということになっています.「木の根道」というとか.数年前のNHKの大河ドラマで,「義経」ってありました が,鬼一法眼役の美輪明宏が怪しさ満載で印象的でした.
キジノオシダ
 で,こちら,キジノオシダ.このシダの特徴は...
キジノオシダ
 先っぽの小羽片って言って良いんでしょうか,これが他のものとつながってしまったり何かしているところ.葉も常緑らしくしっかりしています.
 沢沿いや,湿ったところのシダのようです.
キジノオシダ
 胞子は葉の裏には着けず,胞子葉を別につけます.

 ツツジです.まだ調べていません.そのうち調べます.

裏はこんな感じなんですが.

で,鞍馬寺の奥の院までたどり着きました.

 ここまで来たら引き返さず,貴船方面へ降ります.あたりは常緑広葉樹林の自然林で,このあたりでは貴重な極相林です.一見の価値あり.
ヤマゴボウ
 ヤマゴボウ見つけちゃいました.我々がよく見るヤマゴボウの仲間はヨウシュヤマゴボウで,果実のつく穂が下向きに垂れますね.これは上を向きます.こち らは外来のヨウシュヤマゴボウに対して,以前から日本にあったものですが,中国原産で,旧い時期に日本に来たのではないかといわれています.
コウゾ
 ヤマグワに似ていますが,鋸歯が細かいのでコウゾ.ヤマグワと同じくクワ科.昔,和紙の原料に使ったものですね.実は食べられます.あとは果実酒とかに 使っても良いですね.

 山を下りると貴船.こちらは貴船神社.京都らしいですね.
 こんなのとか.

 こんな感じ.
川床
 えぇ,せっかくの貴船なので川床で食事をいただきました.この写真の,座敷の下は川が流れています.涼しさ,木漏れ日,せせらぎの音...
川床
 7,000円位のコース.冷酒を2本頼んで,一万円弱くらいでしょうか.
 昼間は飲まない主義なのですが...正月以外で昼に飲んだのは久しぶりですね.十数年ぶり?
 いや,堪能しました.

 電車の駅まではしばらく距離がありますが,ぶらぶら歩きます.歩道らしい歩道がないので,車が来たらよけないと行けません.
 バスがありますが,歩く方は気をつけてください.

という感じで,大人の休日,でしょうか.ぶらぶら歩いたので2時間くらいかかりました.
川床は,あらかじめ予約しておくのがおすすめ.皆さんもどうぞ.


トップに戻る