長野県植物研究会というのがあって,初夏の6月,大町方面へ観察会に出かけたことがありました.今回はその時見た植物たちを,自分の忘備録も兼ねて整 理,紹介したいと思います.
 今まで,シダってちゃんと見てこなかったんです.いや,いずれ勉強するつもりなんですが,イネ科とカヤツリグサ科をきちんと極めてからシダに行こうと. しかし,イネ科,カヤツリグサ科をやっていて,これを極めるのにどれくらい時間がかかるかわからない事が判明.そうしたら今生ではシダと付き合えません. ということで,今回はシダもきちんと見ていこうと思った次第です.
 そんなことで,今回はシダ植物の紹介が多いかもしれませんが,みなさんも,新鮮な気持ちでお付き合い下さい.

 松本から大町へ行くんですが,途中に仁科神明宮という神社があります.太陽神で国母アマテラスオホミカミをお祀りしています.国宝になっている建物が あって,ちょっと有名.石垣や林床のシダを中心に,観察させていただきましょう.
クジャクシダ
 まずは綺麗どころから.クジャクシダですね.これは説明いりません ね.広がった葉を孔雀の羽に見立てています.
ホソバナライシダ
 こちらはホソバナライシダ.葉が大きく横に張り出して5角形に見え ます.スーパーマンの胸のマークを思い出します,個人的に.
ホソバナライシダ
 ホソバナライシダ,裏面を見ておきましょう.胞子の塊を白い半透明 の膜が覆っているような印象ですね.
ホソバナライシダ
 これはホソバナライシダの幼形.これが育つと上のような歯になると のこと.右はキッコウハグマ.


ヘビノネゴザ
 名前はよく聞くヘビノネゴザですが,形の可塑性が高く,形の印象で はなかなか覚えられません.
ヘビノネゴザ
 で,ヘビノネゴザは鋸歯の鋭さをポイントに覚えるといいようです.
ヘビノネゴザは土壌の重金属に強い植物として知られていて,他の植物の生育が困難でも,これは大丈夫とか.で,これが生えているところは鉱床があるので は...などと,昔,鉱山を発見するのに,この植物が生育しているのが目印にされたとか.
イヌシダ
 イヌシダです.これで大人サイズ.葉の長さで10cmかそこら.こ れ,軸に柔らかい毛があるのが特徴なんですが...
イヌシダ
 はい,こちらがその軸に生える柔らかい毛.長細く,頼りなく見えま すね.胞子の塊は葉の縁,切れ込んだあたりにつきます.
ナツノハナワラビ
 ナツノハナワラビです.シダは多くの場合葉の裏に胞子をつけます が,ハナワラビの仲間は,光合成を行う本葉とは別の器官を持ち,そこにまとめて胞子をつ けます.これを花に見立てて「ハナワラビ」と呼びますが,その中の一種.右に紹介するアカハナワラビと比べても,小羽片の形がそろっているのが特徴です.
アカハナワラビ
 で,こちらがアカハナワラビ.左のナツノハナワラビに比べると小羽 片の形が不定形ですね.胞子葉の部分も写真に写っていると気分がでるんですが,これば かりは,季節,個体,その他の条件で仕方ないですね.また次の機会に.
 あと,ハナワラビの胞子葉を見て「あっ,**ハナワラビの花が咲いている」とかいうと,学生に怒られてしまうので注意(笑).
ヤブジラミ
 ヤブジラミですね.セリ科.遠目に見ると同じセリ科のシャクに似た りしていますが,こちら,ヤブジラミには茎に毛があります.シャクにはないのでそこを ポイントにしていいと思います.
ヤブジラミ
 ヤブジラミ,花はこちら.シャクは五枚の花びらのうち一枚が小さかったりしますが,こちらは放射状にすべて同じ形,サイズの花びらです.
 写真は花の時期ですが,もう,花の下に果実が成熟しつつあるのが分かりますね.植物学的に言うと,子房下位ですね,これ.

 オヤブジラミというのもあって,似ていてあまり自信がありません.ですが,オヤブジラミは花弁の先っぽが紫色というか,ピンク色っぽいことが多くて,今 回はヤブジラミと判断.だめかな.
ヤブジラミ
 こちらは実.硬い毛が外に向かって伸びます.刺といったほうがいいでしょうか.これが動物(人間も)にくっついて遠くに運ばれ,散布されることになりま す.いわゆる動物散布ですね.

ヤブソテツ
 こちらはおなじみと言っていいでしょうか,ヤブソテツ.よく神社の 石垣や崖から生えています.葉にテカリがあるのがオニヤブソテツ.これはヤブソテツで いいでしょうね.
ヤブソテツ
 ヤブソテツ,葉の裏も見ておきましょう.胞子のう群(ソーラス)は 葉の裏にランダムに 集まります.で,膜が覆う感じ.
イヌワラビ
 イヌワラビ. 写真を見ると,シダの葉の軸に近い部分が紫色に見え ますね.これ,個体差とか偶然ではなくて,イヌワラビの特徴なんです.似た種にヤマイ ヌワラビというのがあります.ヤマイヌワラビにくらべ,こちらのイヌワラビは葉全体が細長い印象です.それに対してヤマイヌワラビはは全体がそれほど長く なく,三角形をしている印象です.いや,私も詳しいことはわからないんですが.
イヌワラビ
 例によって葉の裏をアップで見ておきましょう.軸とその周辺が紫色なのが分かりますね.この個体,胞子は付いていませんが,ハナワラビの仲間なんかとは 違っ て,普通は葉の裏に胞子をつける植物です.
ミヤマベニシダ 
  仁科神明宮をあとにして,車を大町方面に進めます.道の途中の崖地(切土のり面)にミ ヤマベニシダを発見.いや,私が発見したのではなく,同乗してくだ さった佐藤先生が見つけられたんですが.
ミヤマベニシダ
 このミヤマベニシダ,佐藤先生が若い頃,研究材料にしたシダ植物と のこと.で,特徴の一つが,この,軸に付く鱗片.鱗片は褐色なんですが,その鱗片の縁 が中心部に比べ明るい色になるのが特徴なんだとか.なるほど,写真で見ても,そんな印象です. 
ミヤマベニシダ
 葉の表面のややアップ.ま,普通のシダ,といった感じですよね.
ミヤマベニシダ
 裏面も見ておきましょう.胞子のう群は小羽片の左右に一列に並んで綺麗についています.で,白い半透明の膜に覆われるタイプ.小羽片に細かい,しかし鋭 い鋸歯 があります.
シラン
 大町の山岳博物館で発表会がありましたが,ま,その写真はいいでしょう.夕刻,宿に向かいます.宿に荷物をおいたら,ちょっと散歩.で,出会ったのがシラン.植えられた園芸植物ですが,確かに綺麗ですね.
 日本に野生のものもあるようですが,野生のシランなんて見たことある人,少ないんじゃないでしょうか.
アヤメ
 こちらはアヤメ.似た仲間のノハナショウブやカキツバタが湿った立 地なのに対し,こちらはそれら2種に比べると,乾いた立地にでる種です.いずれ も明るいところに生育しますけどね.
 この写真じゃ,ちょっと遠いですね.
コバンバコナスビ
  なんじゃこりゃ.見たことありません.葉の付き方はグンバイヅルに似た印象ですが,花を見る限り,断じてゴマノハグサ科ではないですし.
 で,これ,外来種でコバンバコナスビとかコバンコナスビと言われている種なんだそうです.観察会に参加していた滑ツ境ア セスメントセンターの藤田プロが教 えてくれました.サクラソウ科,オカトラノオ属.
コバンバコナスビ
 葉は対生,単葉で,枝がつる状に伸びます.根元に近いほうが葉が大きく,先の方が小さいですね.
コバンバコナスビ
 同じくコバンバコナスビ.葉が立体的に盛り上がっているバージョンの個体を撮影.
 この日の観察はこんなところでしょうか.宿は貸切.大勢で飲んで騒いて寝るという,いつものパターン.私は12時には寝ることにしています.次の日残る ので.
ウスバシロチョウ
   翌朝,まだぼーっとした頭でカメラを持ち散歩します.近所の神社近くでは, ウ スバシロチョウですかね,チョウを発見.これ,シロ チョウ科ではなく,アゲハチョウ科ですね.
 背景のぼかし具合がいいですね.f4.0位かな.
アカミタンポポ
 さてタンポポの実なんですが,違いが分かりますか?右は普通のセイヨウタンポポ.左はアカミタンポポです.右のに比べ,実が赤みがかっているのが分か りますか?
アカミタンポポ
 ちょっと拡大.普通のセイヨウタンポポのみは茶色いんですが,こち ら,アカミタンポポは赤っぽいです.ま,どちらも外来種なんですが.
ヌカボ
 もうひとつおまけ.イネ科はヌカボです.あとから写真を見たら, アップの写真がありませんでした.不覚.ですが,この写真で,ヌカぼの遠目にみたイメー ジはそれなりに押さえている感じがします.どうでしょうか.


スミレサイシン
 さて,食事を済ませて山へ向かいます.車を止めて林道歩き.あたりはかつて伐採の入った二次林(雑木林)ですが,ササがない分,いろいろな植物に出会え ました.
 まずはこれ,スミレサイシン.雪国に多いスミレです.雪の少ない地 方でこれに似た葉のスミレを見ますが,それには多分,葉に毛があって,アケボノスミレ のはずです.
クルマムグラ
 クルマムグラです.オククルマムグラは茎に下向きの毛があって他の 植物に引っかかって上に伸びるツル植物ですが,このクルマムグラは茎に毛がありませ ん.その点はクルマバソウと同じですが,クルマバソウは葉の下の方が広く先は単調に細くなりますが,こちらは葉の形が長楕円形.葉の先の方もそれなりに太 く,丸まった葉の先の先頭の部分が,ツン,と尖ります.葉の縁の鋸歯のようなトゲ状の毛が目立つのも特徴.
クルマムグラ
  キヨタキシダだそうです.蛭間くんに教えてもらったん だっけな.私はよくわかりません.羽の軸が紫色っぽくて,その点はイヌワラビ,ヤマイヌワラビに似た 印象ですが,こちら,キヨタキシダはは 全体が丸びを帯びた三角形だということです.
 軸表面の溝は羽軸から中軸に流れ込むのが特徴で,やや似ているイヌワラビは,この溝がとぎれるとのこと.これが違い.溝が羽軸から中軸に「流れ込む」の でキ ヨ「タキ」シダと覚えますか.

 葉の裏を見ておきましょう.胞子のう群は葉の裏の小羽片にハの字にかたまって付きますね.これも特徴と見ていいんじゃないでしょうか.
 
ヤマイヌワラビ
  はい,イヌワラビ,キヨタキシダと見てきて,こちらがヤマイヌワラビ です.イヌワラビはは全体の形が長いが,これは三角形に近い.先程のキヨタキシダとの 違いですが,羽軸の溝は中軸につながらず,一旦とぎれるとのこと.
ヤマイヌワラビ
 ヤマイヌワラビ,葉の裏はこんな感じ.胞子が付いていなくて残念ですが.
イヌガンソク
 こちらは遠目に見て分かります.イヌガンソク.葉はこれまでのシダ と大きくサイズが違って,1m近くになります.葉の先が尖らず,大柄で, ずんぐりむっくりした印象.犬にたとえるならチャウチャウとか(笑).
タニウツギ
 多雪地の低木といえば,これ,タニウツギ.ちょうど花の時期でし た.ピンク色の筒状花が鮮やかな緑の葉に映えます.葉は互生,単葉,鋸歯.スイカズラ科, タニウツギ属 です.
オオバショリマ
 これも初めて見たシダ植物です.オオバショリマ.生育地は標高が比 較的高いところとか.特徴は...
オオバショリマ
 特徴はこちら,中軸に生える白い鱗片(!)
 こんな鱗片のシダがあるんですね.
ミヤマヤシャブシ
  こちらは木本.種としてはヤシャブシでいいんですが,その変種でミヤマヤシャブ シというそうです.
ミヤマヤシャブシ
 ヤシャブシと何が違うかというと葉の裏や葉柄に毛が多いことだとか.この写真では,葉の裏面,主脈と側脈の分かれ目に毛があるのが分かります.
 ちなみに,ヤシャブシ(全国),オオバヤシャブシ(太平洋側),ヒメヤシャブシ (日本海側,多雪地)見分け方は雌花の数.ヤシャブシは2-3個. オオ バヤシャブシは基本1個.ヒメヤシャブシは5-6個.雌花がないときは...ま,葉も違いますが,また出会うことがありましょう.のんび り,のんびり.
シロバナニガナ
 シロバナニガナですね.ハナニガナの変種で,舌状花の白いもの.美 しいですね.
シロバナニガナ
 葉は,ニガナ,ハナニガナと同様,葉柄がなく茎を抱きます.で,茎を抱くあたりでトゲ状に外に出っ張る部分がありますね.こういうのも鋸歯っていうんで しょうか.
ウラジロノキ
 こちらはバラ科,ウラジロノキ.互生,単葉,重鋸歯.名前の由来は というと...
ウラジロノキ
 これ,葉の裏が白い毛で真っ白です.枝も白いですけどね.これに似たアズキナシはこんなに白くならないので区別できます.それにアズキナシの重鋸歯は, これに比べてももっと低いです.
ツクバネウツギ
 ツクバネウツギです.花の季節に出会えました.感謝.これ,5つあ る萼片のサイズがみな同じですね.この萼片が羽つきの羽に見立てて「つくばね」ウツギ です.
 似た仲間のオオツクバネウツギは,この,五つある萼片の一つだけが小さいことで見分けられます.
オニルリソウ
 前回の記事では南信で見たサワルリソウを紹介しましたが,こちらはオニルリソウで す.毛深さがポイント.どこが毛深いかというと...
オニルリソウ
 まずは茎.外向きに直立に伸びる白い毛が目立ちます.サワルリソウも毛があるにはありますが,こんな長い毛ではありません.うっすら茎が白く見えるよう な毛の生え方です.
オニルリソウ
 オニルリソウ,葉の方も毛深いです.毛深いというか,長い毛が目立ちますね.写真に写っている,裏面脈上の毛とか.
トリアシショウマ
 トリアシショウマです.似たアカショウマとはたしか変種関係.どこ が違う かというとトリアシショウマの小葉の葉身は基部が心形.もしくは耳たぶ状.アカショウ マは普通にV字型です.アカショウマに比べてトリアシショウマの方が標高が高かったり,山奥にある印象があります.
 ちなみに写真右下はタニウツギ.
マメガキ
 この写真でカキだと思えた人は結構鋭いですね.マメガキだそうで す.私には普通のカキノキの葉にしか見えませんが,分かる人にはわかるのでしょう.食用 のカキは大きな実がなりますが,これは文字通り,小さな実がなります.
サカゲイノデ
 あ,ハイ,これ,サカゲイノデ.イノデの仲間はオシダ科なんです が,小羽片の切れ込み一つ一つがヨットの帆のように左右不対称です.オシダは対称.
 で,普通は下から上に向かって付いている軸上の鱗片が下向き(逆)に付いているというのでサカゲイノデとか.鱗片は明るい褐色で,軸に圧着していま す.
サカゲイノデ
 こちらが葉の裏側.まず,小羽片が左右不対象なことが分かりますね.胞子の塊がどんな配置かというと,小羽片の左右に大まかに二列になっていると見てよ さそうです.大まかに,ですけどね.特に小羽片の基部で乱れます.
ニシノホンモンジスゲ
  さてスゲです.日本海側に生育するニシノホンモンジスゲだそうで す.私には,ほぼ新種でわからないんですが,詳しい人がそう言っていました.下の写真のように, 細い葉が株立ちになるそうです.
 先端の小穂は雄.下二つが雌.二つある雌小穂のうち,この写真に写っている上の方のやつは,ほとんど柄がありませんが...
ニシノホンモンジスゲ
 下側にある雌小穂は,ちょっと柄があります.あと,苞がありますね.
ニシノホンモンジスゲ
 ニシノホンモンジスゲ,葉はこんな感じ.細い葉が株立ち
ニシノホンモンジスゲ
 付け根の部分を見てみましょう.鞘は茶褐色で,細さの割にやや長い印象をもちます.
カワラスゲ
 あ,これは分かります.カワラスゲ.明るい草地で見ますね.私は, 河原では見たことないです.カワラスゲとは言うものの.
カワラスゲ
 ややアップで見るとこんな感じ.穂は長いわりの細いので写真のようにだらしなくうなだれます(笑).
カワラスゲ
 葉の断面はM字型.根元の部分も,赤くなったりすることなく,明るい緑色のまま.スゲなので断面は三角形です.
ウリカエデ
 こちらはカエデ科のウリカエデです.ウリハダカエデはもっと明瞭に 三裂しますが,三裂しそうな予感を残しながら三裂しない感じ.寸止め.もしくは残照. うーん,よくわかんないか.
 写真は典型的な葉の形を捉えていますので,私の表現はともかく,この写真で覚えてもらってokです.
ノギラン
 ノギランです.一見して,「ツバメオモト」と思ったんですが,よく 見ると違います.いや,このロゼットの葉だけ見ていると難しいんですが,この個体は花 茎が伸びて花(ツボミ)が付いていました.それが...
ノギラン
 こちらです.確かにツバメオモトの花(ツボミ)ではないですね.ノギランです.後でもう一度ノギランの葉を見ます.そこでツバメオモトの葉との違いを解 説.
イヌエンジュ
 イヌエンジュですね.いわゆるニセアカシアがハリエンジュ,で,ハ リ(トゲ)のないものがエンジュ.エンジュは毛が目立ちませんが,こちらのイヌエン ジュは葉とか羽軸に毛が目立ちます.
 霧ケ峰の八島湿原に降りて,左に湿原を回るコースを巡ると出会います.
ヒメハギ
 名前は知っていましたが,初めて見ました,ヒメハギ.ヒメハギ科で す.これ,小さな個体で高さ5cmくらい.紫色の小さな花をつけていました.気をつ けて歩かないと見過ごしてしまうような植物です.よくぞ出会えました.ありがとうございます.
ユキグニミツバ
 ミツバツツジの仲間ですが,ユキグニミツバ,ということです.種と してのミツバツツジは葉柄がもっと長くて,こうして上から見ると,それぞれの葉が離れ て見えますが,これはそうではありませんね.で...
ユキグニミツバ
 葉の裏を見ましょう.毛の状態に注目.トウゴクミツバも,サイゴクミツバもダイセンミツバも脈上に毛がありますが,このユキグニミツバの毛は他のに比べ ると白っぽく感じます.
オヤマボクチ
 こちらはキク科の草本,オヤマボクチです.ゴボウなんかと似ていま すね,葉が.で...
オヤマボクチ
 で,葉の裏を見ると白い毛が密生しています.この白い毛を集めて,蕎麦のツナギにする地方が信州にもあるそうです.北信とか.
 ハバヤマボクチも似ていますが,このオヤマボクチの葉がずんぐりとしている印象なのに対し,耳たぶ状に張り出している部分(左の写真参照)がカクカクと 角張っています.
ヤマツツジ
 こちらはいいですね,ヤマツツジ.明るいアカマツ林の林床などに群 生します.この写真ではわかりませんが,葉には裏面脈上を中心に茶色い毛が目立ちま す.
マルバマンサク
 マルバマンサクですね.マンサクの雪国に分布する変種.どうマンサ クと違うかというと,マルバマンサクの方が文字通り横に広いんですが,この写真見る と,あんまり広くないですね.
 大きく写っている二枚の葉のうち,向かって左側の葉はマルバマンサクらしく横に広がっていますね.向かって右の葉は縦長でマンサクっぽい葉です.左の葉 がある時点で,マルバマンサクとしていいと思います.
オサムシsp
 自然が好きな皆さんが集まりますので,虫も平気.「あ,オサムシ」という感じで捕まえてしまいます.種まではわかりません.ですがオサムシの仲間ですよ ね.オサムシsp,ということで記録します.spとは,種までは完全 に分からないんだけれど,その仲間の種(その属の種)というときに,属名のあとにsp と付けて,その仲間(属)の種であることを記録するときに使う記号です.スゲspとか,ササspとか.
シロシタホタルガ
 一方こちらはシロシタホタルガの幼虫だとか.なんでこんな虫の種名 までバッチリわかるんでしょうか.すごすぎです.私もこの幼虫を見ただけなので,成虫 がどんなものなのかわかりません.名前的に,ガなんだということは想像がつくんですが...
ホツツジ
 ホツツジですね.ミヤマホツツジも印象が似ています.で,私がそん な発言をすると,詳しい方が解説をしてくださって,「ホツツジの葉は先端がが尖る ミヤマホツツジは鈍頭で尖らない」といった見分け方を教えてくださいました.なるほど,図鑑「葉でわかる樹木」で確認すると,確かにそうで す.ありがとうございます.
 花があるときはさらにポイントがあって,ミヤマホツツジの花の花柱(雌しべ)は90度近く上向きに曲がるのですが,ホツツジはそれほどの曲がりを見せま せ ん.
 ま,でも,葉で見分けられたらそのほうがいいです.先端の尖り具合ですね.今後注目してチェックします.
ササバギンラン
 ササバギンランです.前回までギンランと書いてありましたが,ササバですね.清楚な感じが良いですね.林床 でほのかに木漏れ日を浴びながら輝いていました.C'est bon.
アラゲアオダモ
 アラゲアオダモ.単にケアオダモという場合もあります.いわゆるアオダモとは変種関係.こちら,アラ ゲアオダモの方が学名上は母種になります.
 アオダモは葉の裏にほとんど毛がありませんが,これは裏面脈上にびっしりとはえます.
 アオダモのうち,ほとんど鋸歯のないものをマルバアオダモと呼んでいて,これも変種.
ミヤマママコナ
 あ,ミヤマママコナですね.いや,花のないこの状態で,なんでミヤ マママコであってママコナで無いんだと言われると困るんですが,これはミヤマママコナ だと思います.
コミネカエデ
 コミネカエデ.対生,単葉,切れ込み・鋸歯.葉身の形が5角形に見 えますね.似たミネカエデは同様の特徴を持ちますが,もう少しシャープさがかけてボ テッとした印象.コミネカエデは山地帯落葉広葉樹林帯・ブナ帯の樹木ですが,ミネカエデは亜高山帯針葉樹林帯に生育するのが一般的な特徴です.ここは,標 高が1500m未満ですので,山地帯落葉広葉樹林帯・ブナ帯です.

 あたりはコナラを主体とする落葉広葉樹の二次林です.
スノキ
 スノキですね.ツツジ科.ウスノキととても似ていますが,当年枝 (今年伸びた枝)を見ると分かります.
スノキ
 葉の裏の毛とかはほとんど違いがありません.スノキの方は当年枝に二列の毛が 生えています.この写真でもかすかに分かります.ウスノキの方は,二列と言わず,当 年枝全体に毛があります.ここが違い.
 オオバスノキというのがありまして,これは枝の毛は二列なのはスノキと一緒です が,葉の裏が白っぽいです.ちょっと粉を吹いたように.スノキは緑色.ここが違い.
サラサドウダン
 ええと,ドウダン系のツツジですが,サラサドウダンでいいと思いま す.この写真の葉は,まだ大きくなりきっていない(と思われる)のでちょっと印象が違いますが...
サラサドウダン
 葉の裏の脈上,脈腋の白い毛,サビ茶色の毛があって,さらに葉の縁の鋸歯に着目.これ,サラサドウダンは鋸歯の先端が毛のように細く伸びます
 ドウダンツツジは葉の下半分には鋸歯がありませんし,ベニドウダンは葉の下半分にも鋸歯がありますが,こんな毛の感じではなく,ガッツり鉤型.
オオイワカガミ
 お,オオイワカガミですね.イワカガミの変種で雪の多い地方に分布 します.文字通り葉が大きい.で,葉が大きい分,鋸歯の数が多くなります.

ナガエスゲ
 スゲですが,ナガエスゲというそうです.アゼスゲ節.写真では穂が 立っていますが,成熟すると垂れるそうです.文字通り,穂の柄(え)が長くて「長柄すげ」.
 図鑑で見ると,写真の上の方に位置する茶色い約を持っている雄花の小穂は立ったま んま下の方に付ける雌花の小穂は垂れるようです.雌 花の方の小穂ですが,先端は雄花がつくものもあり,そんなところはアゼスゲに似ますね.柱頭は二岐.
ナガエスゲ
 ナガエスゲ,葉の付く部分.三角柱の茎を白い膜が覆います.
ナガエスゲ
 基部の鞘の部分は葉がなくて赤紫色.
ナガエスゲ
 ナガエスゲの葉,断面はM字型.オモテ面は緑が濃いですが...
ナガエスゲ
 裏面の方は白っぽいですね.
 多雪な日本海型ブナ林に分布する人のこと.私が調査してきた日本海型ブナ林の自然林は,いずれもササ(チシマザサとかクマイザサとか)の林床だったの で,こんな大型のスゲは見たことありませんでした.
コハウチワカエデ
 こちらはコハウチワカエデ
コハウチワカエデ
 コハウチワカエデ,裏面を見ておきましょう.脈の股の部分に白い毛が密生...という程でもないかな,ま,白い毛が生えています.
ミヤマガマズミ
 ミヤマガマズミですね.ガマズミと同じスイカズラ科ガマズミ属です が,外見上の特徴は,なんといっても,葉の先が尾状に長く尖ること.
ブナ林
 あたりは,切り残された,という感じですが,ブナの自然林です.二次林(一度切られたあとに再生した林)ではなさそう.二次林は,切られたあと再生する 木が皆,同齢なので,サイズもほぼおなじになりますが,自然林は様々な齢の様々なサイズの樹木が生育しています.
 ここは,ブナだけでいろいろなサイズのものがパッチ(集中斑)を作って生育していますので,自然林として見ていいと思います.
アウフナーメ
 ま,そういう良いところですから,アウフナーメも取りましょう.他 のメンバーには先に行ってもらって,私,蛭間君,そして清水さんでデータを取ります. ササのないタイプの日本海型(多雪環境型)ブナ林です.
ノギラン
  先程も見ました,ノギラン.一見,ツバメオモトの葉と見間違えます.どう違うのか.ノギランの葉の裏は,ツバメオモトと違い,中脈の白いのが葉の先まで達 しています.ツバメオモトは,葉の途中で白い主脈が終わっているように見えますね.
 他の地域でも同じように見え分けられるのかわかりませんが,そんな情報を頼りに,少し勉強して見ていきましょう.
シノブカグマ
 こちらはシノブカグマ.オシダ科のシダです.これ,常緑.主に日本海型ブナ林に出現するとのこと.この写真の葉は,今年成長した新 しい葉.緑色が明るいですね.
シノブカグマ
 で,シノブカグマ,1年経ったものがこちら.緑色がくすんでいます.
シノブカグマ
 シノブカグマの裏面.葉の裏はやや白っぽいですね.そしてなによ り,鱗片が黒くまばらです.
シノブカグマ
 シノブカグマ,根元に近い方の中軸で鱗片を見てみましょう.こんな感じ.
シノブカグマ
 逆にシノブカグマの上の方の部分.まばらな黒い鱗片ですが,妙に長いので目立ちま すね.



ミヤマイタチシダ
  一方こちらは,ミヤマイタチシダ.これもオシダ科で常緑.ベニシ ダのように羽片と羽片の間隔が空くので,地面が見えちゃいます.鱗片 は少なくまばら.写真では分かりづらいかもしれませんが,最下羽片の下側の小羽片,これの一番中軸に近い部分,これが他の小羽片に比べ長〜くなるのが特徴 とか.
ミヤマイタチシダ
 ミヤマイタチシダ,胞子をつけるときは,一枚の葉の上半分だけにつけて,その部分 の葉は下半分に比べ小さくなるのが特徴.その部分だけ枯れたりしても目立ちます.これは付いていない個体なので,そういう印象はないです.
ミヤマイタチシダ
 こちらはミヤマイタチシダの鱗片.一応押さえておきましょう.


カラクサイヌワラビ
 最後は,カラクサイヌワラビ.私は全然知らないんですが,知ってい る方がいて,林道脇で採集.せっかくなので写真を取らせていただきました.
 葉全体の特徴は,先っぽが急に細くなるところとか.
カラクサイヌワラビ
 それと,小羽片の一番下の膨らみが丸々として大きい.で,羽軸にかぶさっちゃう.こんなトコロが特徴なんだとか.光合成に不利に思えるんですが... ま,いいか.
 今回も多くの新種に出会うことができました.これ,シダをやり出したらずいぶん認識する種は増えるだろうな,と思います.冬の間は常緑のシダを覚えたり して暖かく過ごせるといいですね.
 というわけで,今回も新たな出会いとそれを支えてくれている自然環境に感謝.

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