デュ・プレにするかロストロポーヴィチにするか

UPDATE: 2010年12月28日

両方聴いてください!損はさせませんから!

 どうも,島野です.

 前回ですね,信州 大学交響楽団の演奏をきっかけに,ドボ ルザークのチェロ協奏曲のCDを買い求めた話をさせていただきました.ロストロポーヴィチ かデュ・プレか迷って,結局両方買った話(笑).演奏会での演目では全然なかったんですけど(笑). で,ロストロポーヴィチの方が良い,というふうな記 事を 書いたんですが,自分で思っても説明不足なので,素人ながら,無い知恵を絞りつつ,もう少し丁寧に説明したいと思って,キーボードをたたくことにしまし た(あ,パソコンのことね.楽器はできないから(笑)).

 前回の私の書き様だと,ロストロポーヴィチは素晴らしくて,デュ・プレはダメ,みたいに聞こえますね.いえ,そうではありません.説明が不足です ね. いや,最近,記事の更新が以前に比べながら頻繁なのは,家でネット・ブックで記事を書いたりしているからなんですが,ほぼ例外なく酔っ払ってますし,勢い でした(書いた)酒飲み話では,やはり次の日になって,ちょっと反省したりするわけです(笑).

 で,せっかく二つの(二人の)演奏を聴くことができたのですから,もうちょっとその話をしたいと思います. 結論からいうと,ダイナミッ クに感情表現をしているデュ・プレと,穏やかにしっとりと音を奏でるロストロポーヴィチ,どちらが今の自分に馴染むか,しみ込むかということです.今の私 には,ロストロポーヴィチ&小澤・ボストンが素晴らしく「はまった」ということです.

 デュ・プレ&バレンボイム・シカゴの演奏,素晴らしいです.当時25才のデュ・プレが夫であるバレンボイムとの共演です.なんと 生き生きとした演奏でしょうか.生命のほとばしり.魂の躍動.聴く側に熱く訴えるチェロ.バレンボイムのシカゴもそれを支えます.メリハリ があって,ダイ ナミックな演奏.録音は古さを感じさせますが,きらめく音がそこにはあります.感情を揺さぶります.素晴らしい.皆さん聞いたら感動すると思いま す.素人の私も録音で感動しました.これ,ライブ,っていうか,生の演奏で聞いたら鳥肌がたつような経験なんだろうな,って思います.

 ロストロポーヴィチ&小澤・ボストン.これ,差があるものの一つは,録音.デュ・プレのEMIは1970年の演奏(録音).こちらのロス ト ロポーヴィチは1985年.現在でももちろんそうですが,この時代,毎年毎年録音エンジニアは会社ごとに技術を向上させています.ですので,こちらの録音 は,オーケストラ演奏がもつ艶が伝わりますし,チェロの演奏が持っている呼吸,息遣いが伝わります(チェリストの実際の呼吸では,もちろんありません (笑)).

 で,ロストロポーヴィチの演奏がデュ・プレの熱情的な演奏に比べて端正だと言ったら,怒られちゃうでしょうか.いや,悪い意味ではありません.優 しく穏やかな第二楽章.

孫「おじいちゃん,おじいちゃんの若い頃,大変だった?」
ロ「(優しく微笑みながら)そうだね,大変だった.でも良いこともあった」
娘「お父さん,今,幸せ?」
ロ「ああ,幸せだよ.わかるだろ?」
みたいな感じ. 冬の日の午後,仕事に一息入れ,少しだけブランデーを垂らした紅茶をすすりながら窓の外を眺める.そうした感じがロストロポーヴィチ &小澤・ボストンの第2楽 章.

 全体に穏やかで,しかし深みのある演奏.体に染み込むように響きます,ロストロポーヴィチのチェロ.

 デュ・プレ&バレンボイムのシカゴ.素晴らしいんです.素晴らしいんですけど,ずっとエナジェティックで,聴いている方は息の抜きどころ がないんです ね.いや,これは私がもう,年取ってきたら出る感想なのかもしれませんが.この演奏(録音),片手間に聴く,いう感じではなくて,「よし,今日はデュ・プ レ&バレンボイム・シカゴでドボルザークのチェロ協奏曲を聴くぞ」という感じで,正座をして...いや,正座はしなくてもいいんですが,聴く側も 結構覚悟をして,面と向き合った鑑賞が要求される感じ.

 ちょっと違うかもしれませんが,若い頃は,ベートーヴェンとか,ワグナーとかカッコいいんです.でも今となっは毎日聴くのは重くて,聴こうと思う と聴く 側も覚悟が必要で,聴いたらもちろん素晴らしいんですが,疲れる.で,40才を過ぎてバッハとかが良くなる(笑).ま,こうした比較をドボ ルザークの曲の演奏の比較にアナロジアイズするのは大げさという感じはしますが,私としては,そういう感じ(笑).

 「島野,お前,クライバーがいいとか,カラヤン,カッコ良いとか言ってただろ!」はい,そうなんですが,クライバー&ウィーンフィルのベートー ヴェンと出 会った のは二十歳の頃.あれから20年以上経った今はそんなに体力ないんですよ.音楽って,聴く側のコンディションもあって良いかどうか...実際には好みなんです が,これも変わってい くんですね.