どうも,島野です. もう,年も開けて平成23年,西暦2011年なんですが,今となってはもう一昨年,2009年に木曽の 北部に出かけたことがありまして,その時のフロラを報告しておきたいと思います.
 私個人も,写真とっただけだとどんどん忘れていってしまうんですが,こうして整理することで思い出したり,理解を深めたりできます.ま,そんなことでお 付き合いいただければと思います.

2009年初夏の長野県植物研究会なんですが,この総会は,研究発表会も含めて塩尻の長野県林業センター の講堂をお借り して行われました.
私の研究室からは,当時のエース,北川久美子さんに発表をお願いしました.放棄水田を耕すことで再生した 水湿植物のはなし.
 で,翌日がエクスカーション(現地視察,観察会)です.木曽北部,って言ったらいいでしょうか.
トポシガラ
 ええと,いきなりイネ科なんですが,トボシガラです.
 詳しい人がいるときは,イネ科とかちゃんと見るチャンスです.
 特徴は,まず,小花一つ一つのノギがすごく長いですね.
トポシガラ
 左の写真でもわかりますが,小花の集まりである小穂(しょうすい),これ全体を包もうとする包穎(ほうえい)のうち,外側にある第一包穎が短いですね.
 この第一包穎の短さも特徴.
トポシガラ
葉耳(ようじ)は発達せず,葉舌(ようぜつ)も短いです.1mm以下かな.
ヤマウコギ
 ウコギ科はヤマウコギです.互生で掌状複葉.互生なんですが短枝か ら葉が出ることがあるため,一カ所からいくつも葉が出ているのを見かけます.
 ウコギ科にもいくつかありますが,まず,オカウコギとの違いに触れましょう.
 ヤマウコギは葉が無毛,裏面に脈が浮き出ません.加えて葉が大き く,小葉の長さが3〜7cm,鋸歯は小さく重 鋸歯にはならない.オカウコギは葉の表にはまばらに毛があって,裏面に脈が浮き出ま す.また小さく小葉は1.5〜3cm.し ばしば重鋸歯にな ります.
 どちらも若葉を食用にしますが,よく八百屋やスーパーで売っているのは,中国原産のヒメウコギのようです(栽培品).
 で,オカウコギ,ヤマウコギとも裏面の側脈の分岐するところ(脈腋)に膜が張りま す.ヒメウコギはこれがありません.ケヤマウコギはこの膜もなく,茶色い毛が脈上にあります.
チョウジザクラ
 バラ科はサクラ属のチョウジザクラ.互生,単葉,重鋸歯.葉は倒卵 形ですが先が尾状に尖ります.

 なにより特徴なのは毛.葉柄から葉の裏の主軸にかけて開出毛が密生しているのが写真でもわかりますね.
ミツバフウロ
 ちょっと写真が見にくいですが,ミツバフウロです.よく見るハクサ ンフウロやアサマフウロは葉が細かく5裂しますが,これは大まかに3裂.それが名前の 由来.
 ハクサンフウロやアサマフウロはピンク色の花をつけますが,ミツバフウロはゲンノショウコに似た白い花をつけます.
ユウガギク
 これはよく見ますね.ユウガギク.枝が横に広がる樹形(草だけど (笑))をとります.ヨメナ属なので,冠毛はあるにはありますが,ほとんど見えない短さ です.
カニツリグサ
 イネ科のカニツリグサですが,在来のものではなく,外来のタイプだ とか.で,穂の部分が金色に見えます.
カニツリグサ
ね,ここが金色.
カニツリグサ
 これまたノギが目立ちます.第一包穎は小花の半分位の大きさですが,写真の左部分に見える第二苞穎は小花と同じくらいのサイズで大きいですね.
 カニツリグサの在来型はノギが途中でねじれて外を向きます.
カニツリグサ
 葉耳は目立ちません.葉舌は1mmといったところでしょうか. 以上,カニツリグサでした.
エゾノタチツボスミレ
 今回は,Nikon D90というデジカメを使っています.レンズは60mmマクロ.ニコンではマイクロ・ニッコールといいますね.D90,ピントがあうのがすごく早い.いい んですが,林の中で撮影すると,色が良くないです.こんな感じで.
 で,対象はなにかというとエゾノタチツボスミレ.花の時期に根生葉 があるのがタチツボスミレですが,エゾノタチツボスミレは花期に根生葉がない,というのが検索表での分岐になっていますね.
 花を見ると,距が白いのが特徴.今はないけど.
エゾノタチツボスミレ
  エゾノタチツボスミレ,「タチツボスミレ」ですから地上茎があります.タチツボスミレに比べると背も高く,葉も大きいです.托葉が立っている,茎や葉柄に 毛があるのが特徴とか.普通のタチツボスミレはどうだったでしょうか.今度見なおしてみましょう.あ,タチツボスミレの托葉はくし形に切れ込みますが,これは違いますね.
ヤマザクラ
 ヤマザクラです.これも倒卵形で先が尾状にとがり,縁は重鋸歯.で すが...
ヤマザクラ
ですがヤマザクラの仲間の特徴は葉の裏です.ヤマザクラの仲間は葉の裏が白かった り,銀色に光ったりします.これは銀色に光っていますね.
 これは無毛ですが,毛のあるのは別種でケヤマザクラ,別名カスミザクラといいます.
イブキヌカボ
 これも色が悪いですね.ニコンD90.いつものペンタックスK100Dだったらもっと色が出ます.で,こちら,イブキヌカボです.小穂の付いている枝が垂れ下がってしまっていますが,写真の個体が元気ないわけ ではなく,こういうモノです.
イブキヌカボ
 葉の付け根を見ましょう.葉舌が非常に長いですね.まるでイチゴツ ナギのようです.
 とった写真を見返すと小花のアップ写真がありません.パッと見で分かるので撮影しなかったんだと思いますが,次回はきちんと撮っておこうと思います.反 省.
タニウツギ
 こちらは低木,タニウツギ.基本的には多雪地の日本海側に分布しま すが,ここには出てきました.初夏を彩る花です.


ジガバチソウ
 ジガバチソウです.ラン.クモキリソウと似ていますね.
ジガバチソウ
  ジガバチソウは,花のパーツ一つ一つがクモキリソウに比べ細いで すね.繊細な印象.
ジガバチソウ
それから,ジガバチソウ,葉の特徴ですが,葉の表面に網状の脈がありま すね.葉はやや寝て開きます.
クモキリソウ
  幸運なことにクモキリソウも見られました.こちらは花がありませんで したが,葉の特徴はよく出ています.ジガバチソウに比べ葉が立っていて,網状の脈が 見 えません
ヤマサギゴケ
 ヤマサギゴケですね.ムラサキサギゴケの変種.ムラサキサギゴケと 違い,茎が立ちます.
ヤマサギゴケ
 その一方で匍匐枝も出します.茎や萼に腺毛があるのも特徴.
コジュズスゲ
コジュズスゲ.これ,図鑑によってはグレーンスゲの変種 になっています.別種になっている図鑑もありますが.で,グ レーンスゲは葉の幅が5-10mm,こちらは2-5mm.
 この写真じゃわかりませんが,柱頭は3岐とのこと.
コジュズスゲ
 根元の方を見てみましょう.特に赤くなったり黒くなったりということはありません.緑が薄くなっていく感じ.茶色いのは枯れている部分ですね.
オオバクサフジ
 オオバクサフジ.これ,葉の状態だとイタチササゲと大変似ていま す.花が咲けば,オオバクサフジは紫色,イタチササゲは黄色でわかるんですが.
オオバクサフジ
 葉は偶数羽状複葉がデフォで,先にツルがつくことがあります.
オオバクサフジ
托葉は立派ですね.


ヒゴクサ
 カヤツリグサ科スゲ属はヒゴクサです.小穂が三つ付いていますが, 下の小穂は柄が長いですね.
ヒゴクサ
ヒゴクサ,葉の断面はM字型,細いですが固めでしっかりしています.

一応,根元も写真に取っておきましょう.


オオイトスゲ
  スゲ・シリーズ.パッと見じゃ分かりませんが,オオイトスゲだ とか.特徴は...
オオイトスゲ
特徴は,写真の茶色い部分,雄小穂が長い所だとか,オオイトスゲ.こ れも柱頭3岐.
オウレンシダ
 オウレンシダ.遠近感の変な写真ですが,崖の上から下を覗いていま す.で,崖に生えているオウレンシダを撮った次第.ま,雰囲気は出ていますね.
マムシグサ
 マムシグサです.色が出ませんねぇ.D90.
ササバギンラン
 ササバギンラン.あってますよね.こちらは花が終わって実が成熟する過程,といった ところでしょうか.
サワギク
 サワギク.これは日が当たっているので色が出ています.羽状複 葉...とは言わないかもしれませんが,極度に切れ込んだ葉が特徴.文字通り,沢や湿ったところに生育します.
ヌマダイコン
 なんですか,これ.葉っぱ,おっきいんですけど.何でも,ヌマダイコンだ とか.My新種ですね.
ヌマダイコン
 葉身は手のひらぐらいのサイズです.葉柄が長くて...
ヌマダイコン
 葉柄,葉の裏に白い毛があります.特徴的ですね.

葉柄だけでなく,茎にも白い短毛があります.短いですが,目立ちますね.
ヤマイチゴツナギ
 ヤマミゾイチゴツナギとのこと.イチゴツナギ属(Poa).My新 種です.ええと特徴なんですが...
ヤマイチゴツナギ
特徴は,まず,まずイチゴツナギ属の特徴を,自分の勉強のため,整理しましょう(上の写真はヤマミゾイチゴツナギ).
 小穂(しょうすい.小花の集まり)は扁平,一つの小穂あたりの小花は2-10個.小穂の基部をつつむ包穎(ほうえい)は3脈,一つ一つの小花の外側の包 む護穎(ごえい)は5脈で竜骨(りゅうこつ,穎の折れ曲がってでっぱった部分)をもつ...こうしたことがイチゴツナギ属の特徴だそうです(長田先生の日 本イネ科植物図譜による).


で,イチゴツナギは,稈がざらつきます.これでイチゴをつなぐという 子供の遊びにつながるわけです.で,葉舌が長く5mmくらいで目立 つ.

ミゾイチゴツナギは,花序の枝はざらつきますが,葉舌がとがるものの短 い

で,こちら,ヤマミゾイチゴツナギはミゾイチゴツナギになるが,花序の枝が短いく, 中軸に寄り添うようにほっそり.花序全体は先が垂れる.葉も花序も明る い緑色.護穎の主脈上に毛があるほかはほぼ無毛,葉鞘は円筒形にちか い,とのこと.ミゾイチゴツナギの葉鞘は上まで閉じないのでVネックのシャツ(セー ターも可)のようになっています.

ヤマイチゴツナギ
 というわけでヤマミゾイチゴツナギの葉舌部分ならびに円筒形とされる葉鞘のアップ.トリミングなのでちょっと甘いですが.
ドジョウツナギ
ヌカボかと思って写真とったんです.イネ科コヌカグサ属(Agrostis).写真の ように,花序は開かず,遠目に見ると線状に見えるので.
ドジョウツナギ
 ところが,アップで小穂を見るとヌカボじゃない.ヌカボは小花が一つずつ付くから.こうやってお米みたいな小花が連なるのは,これ,ドジョウツナギだよね?それともヌカボも若いときはこんななのかな?
ドジョウツナギ
 葉舌は2-3mmといったところでしょうか.
ドジョウツナギ
 スゲじゃないから,あんまり根元は見ても仕方ないか.
オオバショウマ キケンショウマ
 おっ,オオバショウマかイヌショウマ.オオバショウマは1回3出複葉,イヌショウ マは2回3出複葉
 で,オオバショウマと分かったわけですが...
オオバショウマ キケンショウマ
  これ,葉が楯状についています.オオバショウマの変種でキケンショウマというんだそうです.こんなのがあるんですね.初めて知った!
ヤマキマダラヒカゲ
  息抜き.地味ですが,蛾ではなく蝶.ヤマキマダラヒカゲというんだそ うです.ヒカゲチョウの仲間はみんな同じように見えてしまいますね.次回出会って も,同定できる気がしません(笑).
ウスバシロチョウ
  こちらはおなじみ,ウスバシロチョウ.食草はケシ科のムラサキケマ ン.
ミゾイチゴツナギ
これ,ミゾイチゴツナギですね.先ほどと同じイチゴツナキ属(Poa).
花序の枝が長く先端が垂れる
ミゾイチゴツナギ
 もうちょっとアップで見るとこんな感じ.あ,あと葉っぱが斜め上向きについているの,覚えておいてください.
ミゾイチゴツナギ
 ミゾイチゴツナギの小穂.この写真じゃわかりませんが,小穂のつく花序の枝には,細かいトゲがあります.ルーペだと分かりますが.この写真も,縮小する前のものを拡大すると,とげが見えます.
 イチゴツナギ属なので小花が二つ折りされたように扁平で,竜骨が発達しますね.
ミゾイチゴツナギ
 葉舌を見ましょう.葉が斜めについているので,葉舌が長いわけではないんですが,後ろ側(葉のほう)は葉舌が高くなっているように見えます.長田先生のイネ図鑑でもそうなっています.
 ミゾイチゴツナギ,こんな所で.
ヤマゼリ
 なんだこれ,My新種の予感.セリ科はヤマゼリ属のヤマゼリだと か.初めて知りました.
ヤマゼリ
 葉は大きいんですが,シシウドみたいに葉が軸に流れたりしません.小葉柄があることを確認できます.
ヤマゼリ
 も一つアップで,ヤマゼリ.


オオウシノケグサ
 この写真じゃ,何だかわかりませんね.オオウシノケグサです.
オオウシノケグサ
 オオウシノケグサ,こんな感じ.ウシノケグサに比べると,サイズは2倍位で大きいです.
オオウシノケグサ
 花のアップ.ま,でも,真剣に写真とってないので,よくわかんないですよね.右上の写真が,雰囲気を出していると思います.
ホソバヒカゲスゲ
  で,次はこちら.おんなじ様に見えますが,こちらはスゲ.ホソバヒカゲスゲで す.特徴はと言えば...
ホソバヒカゲスゲ
  特徴はといえば,ホソバヒカゲスゲ花茎が短い事とか.うむ,確かに葉の長さに比べて花は背が低いですね.葉にうも れてしまいます.ヒカゲスゲはもっと背が高いので,葉に埋もれることはありません.
ホソバヒカゲスゲ
葉はこちら.名前の通り細いですね.
ヒヨクソウ
 おお,初めて見ました,ヒヨクソウ.ゴマノハグサ科です.
ヒヨクソウ
花は青紫色.茎には白い短毛がびっしり密生しています.
ヒヨクソウ
 もう一回アングルを変えて.ゴマノハグサ科なので,オオイヌノフグリとかに花が似ていますね.同じクワガタソウ属です.Veronica.
ヒヨクソウ
 ヒヨクソウ,最後にはのアップ.ハッカなんかに似ていますが,ハッカはシソ科なので,茎の断面が四角形,こっちは四角形ではないです.
ツクシハギ
 ツクシハギ.ハギですから,マメ科で互生,三出複葉,全円.表に毛 がなく(主脈上にちょこっと残ることも),裏面には短い毛があるのが特徴とか.でも,マルバハギと似ていますね.マルバハギは葉の先が通常へこむとされて いますが,難しいですね.
 ヤマハギ,ツクシハギとも花序の柄は葉より短いですが,マルバハギは花序の柄が短く,枝に直接花が付いているように見えます(極端にいうと).ヤマハギ はもう少し葉がとがる,ということでいいかな.
ミヤギノハギ
  こっちは葉がとがりすぎ.ミヤギノハギです.庭に植えられたものもよ く見ますが,ここではどうやら自生.三出複葉ですが,小葉の先端が尖ること,枝,葉が垂れるのが特徴と言ってい いでしょうか.
アブラシロモジ
  あ,葉が三裂していてシロモジ...いや,他の葉は分かれていないのでアブラチャン...と,そのとおりなんですが,これ,アブラシロモジと言って,アブ ラチャンとシロモジの雑種なんだそうです.
 関東だとシロモジなんかないですから,シロモジの分布する木曽,飯井地方ならではかも.
アブラチャン
 はい,こちらは普通のアブラチャン.見ると安心しますね.クスノキ 科です.
オニツルウメモドキ
  ツルウメモドキだだと思って,スルーするところなんですが...これ,オニツルウメ モドキなんだそうです.特徴はというと...
オニツルウメモドキ
特徴はというと...葉の裏面を見たときに側脈が浮き出るんだとか. 普通のツルウメモドキ,そういう目で見たことがないので,今度,チェックしてみます.
ミヤマニガウリ
 ミヤマニガウリ.ウリ科ミヤマニガウリ属.ミヤマニガウリ属はツルが二股(2分枝)に分かれるとのこと.日本でミヤマニガ ウリ属の種は多分これだけ.
 カラスウリ属は1-5分枝するとのこと.またキカラスウリの葉は革質で厚く硬いで すが,ミヤマニガウリは紙質で薄く,柔らかいです.
ミヤマニガウリ
 こっちもミヤマニガウリ.葉の表,葉柄,茎に毛があり,葉の縁の鋸歯の間に短い毛が目立ちます.スズメウリも似ていますが,サイズが違って,スズメウリは葉の長さは6cm程度まで,ミヤマニガウリは5- 12cm.
フタバアオイ
  こちらはフタバアオイ.徳川家の三つ葉葵の葉のデザインはこれが元に なっています.ちなみに,植物種として「フタバアオイ」は存在しますが,「ミツバアオ イ」は現実には存在しない,架空の植物です.うーん,ファンタジイー(笑).
フタバアオイ
 フタバアオイ,花の部分を見ましょう.花びらのように見えるのは萼片なんですが,萼 片が反り返るタイプです.このタイプのほうが少ないですね.この仲間 の中では.
ウスバサイシン
 で,こちらがウスバサイシン.ウマノスズクサ科カンアオイ属なのは フタバアオイと一緒.こちらは萼片が外に開きます.フタバアオイは萼片が反り返って,筒にぴったりくっつくのが違いですが,葉もずいぶん違うので,この2 種で迷うことはないと思います.
メギ
メギ.メギ科メギ属.枝にトゲがあります.葉は互生です が,写真の部分は短枝から葉が束生しています.
コメガヤ
 おまけみたいな写真ですが,コメガヤです.実の部分がお米のようだ ということで,このネーミング.実が付いていれば,迷うことはないですよね.
ヤナギタンポポ
 ヤナギタンポポです.霧ヶ峰なんかで見ますね.この写真じゃわかり にくいかもしれませんが,細長い葉に飛び飛びに鋸歯があります.
イブキボウフウ
 こちらも霧ヶ峰でよく見ます,イブキボウフウ.葉が細かく切れこみ ます.切れ込んだ葉のそれぞれの先端部に,ポチっとした膨らみがあり,赤茶色になって いることが多いです.
 今回,花は見られませんでした.
ヤマハタザオ
 ヤマハタザオ.花は白く,葉には鋸歯があります.平地に生えるハタ ザオは花は黄色で鋸歯がありません.葉が茎を抱くのはどちらも一緒.
ウラゲエンコウカエデ
エンコウカエデ.種としてはイタヤカエデなんですが,切れ込みの深いものをエンコウカエデと言っています(イタヤカエデの変種扱い).イタヤカエデなの で,イロハモミジなんかとは違 い,全縁です.
ウラゲエンコウカエデ
 エンコウカエデの裏側.脈上に毛があるのでウラゲエンコウカエデ, でしょうね.
シモツケ
  シモツケですね.もう花は終わってしまっていま す が,濃いピンクの花を咲かせます.似た種類にアイズシモツケというのがありますが,アイズシモツケは側脈が少なく,そのため寸詰まりでもっと葉が丸い形に 見えます.鋸歯も荒く見えます.これは...シモツケで良いとおもいます.
ハンゴンソウ
 ハンゴンソウ.比較的標高の高いところの草原などに生える高茎草本 です.
ルリタテハ
 ルリタテハ.タテハチョウ科.食草はホトトギスの仲間のようです. 綺麗ですね.
ササユリ
 ユリ科はササユリです.以前も紹介したように,葉がヤマユリのよう には平面的に並ばずに,斜めに伸びる茎の上や下に向けて葉がつきます.なるほど.
ウダイカンバ
 ウダイカンバ.最近までまちがってオノオレカンバとしていました.訂正します.互生,単葉,重鋸歯.葉の基部が心形ですね.葉身 全体もハート型です.オノオレカンバはハート型ではありません.
ウダイカンバ
 こちらはウダイカンバの幹.横方向に皮目が走り,薄皮が剥がれます.
ヨグソミネバリ ミズメ アズサ
 一方こちらは,同じカンバ属のヨグソミネバリ.互生,単葉,重鋸歯 で,葉の基部が心形というのはオノオレカンバと一緒ですが,こちらはが長いですよね. オノオレカンバは葉全体がハート型でしたけど.
ヨグソミネバリ ミズメ アズサ
 ヨグソミネバリの枝.茶色い枝に,白い皮目が見えます.枝をちぎるとサリチル酸メチル(サロメチールとか)の匂いがします.
 ヨグソミネバリはアズサ,ミズメという別名があります.
ササバギンラン
 ササバギンラン.花は白色.葉は長く,笹の葉のようだということで ササバギンランという命名.
ササバギンラン
 こちらもササバギンラン.木漏れ日が当たると美しいですね.
ハガワリトポシガラ
  ハガワリトボシガラだとか.初めて聞きました. Festuca heterophylla 外来種で砂防工事で広がっているとのこと.
 花の特徴はトボシガラ同様,第一包穎が小さく,それぞれの小花の護穎に長いノギを持つ(トボシガラ程ではないですが).で...
ハガワリトポシガラ
 で,名前の由来にもなっている葉.下から生えている葉は線状に細い.ですが,上の方の葉は幅がありますね.
ハガワリトポシガラ
 ハガワリトボシガラ,これが「葉変わり」.学名の方も,heterophyllaですから,ヘテロな(異型な)葉を持つ,ということですね.まんま.
 葉耳はウシノケグサぐらいの感じですね.
ウスゲクロモジ
 ウスゲクロモジ.クロモジの変種です.倒卵形であること,側脈が裏 面に浮き出ることが特徴です.雪の少ないところの分布.
ヒメマイズルソウ
 マイヅルソウでしょ?と思うんですが,ヒメマイヅルソウです.種レ ベルで違うようです.で,マイヅルソウとどこが違うのかというと...
ヒメマイズルソウ
  こちらです.茎や葉に毛があるあるのがヒメマイヅルソウの特徴とか. どちらの種も亜高山帯針葉樹林帯が主な生育地なので,これらが出現したら標高は 1,500m以上かもしれません.関東,中部だと.
バイカツツジ
 バイカツツジ.側脈が裏面にへこんで,魚の骨みたいに見えますね. それと...
バイカツツジ
 それと,葉柄,裏面主脈上の長い毛.腺毛が混じります.白い花を梅の花(梅花,ばいか)に見立ててバイカツツジ,というネーミング.
ヒエイズイ
  陽の光を浴びているユリ科の植物があって,みんなで写真を撮っています.遅れていった私が,何かな...と近づくと,ヒメイズイです.
ヒエイズイ
ユリ科のこの辺の他種,例えばアマドコロとかナルコユリなんかは,いずれも茎が斜めに伸びて花が垂れるのが特徴ですが,これは茎が立ち上がるのがヒメイズ イの特徴.こんなの,他にありません.あと,写真はないですが,葉の 裏面脈上に小突起があるのもヒメイズイの特徴です.
シュロソウ
 おっ,シュロソウかアオヤギソウなんですが,どうやらシュロソウ.
シュロソウ
 根元がシュロっぽくなっている,って言いますので,写真を取っておきましょう.写真の膜状の部分が枯れてシュロの茎を覆う糸のようになるということらし いんですが.
ボタンネコノメ
 ああ,これじゃなんか汚い写真でよくわかりませんね.ボタンネコノメと のこと.私もよくわかりません.平凡社の図鑑によると,ホクリクネコノメの変種 で,岐阜県以西の分布とのこと.信州では,はたして...?
ボタンネコノメ
 葉の模様は特徴的.ホクリクネコノメは,こうした緑地に白の模様は 見えないものの,黄緑色の葉に,白くはならないものの,こうした網目模様の網状脈が浮 き上がって見えます.その点,似ているといえば似ていますね.
ボタンネコノメ
 ボタンネコノメ,ホクリクネコノメとも葉は対生です.ネコノメソウ も対生ですが,ネコノメソウはホクリクネコノメのように網状脈が浮き上がったり,ボタ ンネコノメのように網状脈が白くなったりしないので,見分けられます.
ムラサキケマン
 あ,いい写真じゃなくてごめんなさい.ムラサキケマンです.関東で は普通に見ますが,信州ではあんまり見ません(今,私の住んでいる松本基準).で, これ,ウスバシロチョウの食草です.ムラサキケマンは見ないけれど,ウスバシロチョウはそこそこ遭遇するということは,それなりにムラサキケマンもあると いうことなんですよね,きっと.
ケタチツボスミレ
 ケタチツボスミレとのこと.タチツボスミレの変種で,茎や葉に短毛があるのが違いとのこと.うーん,今まで分けていませんでした.種としてはタチツボス ミレと同じなので,分けなくてもいいんですが.
ケタチツボスミレ
 毛,見えますかね?
ミヤマカンスゲ
 ミヤマカンスゲ.オクノカンスゲと似ていますが,こちらは葉が柔らかく,オクノカンスゲは葉が硬いです.
ミヤマカンスゲ
 それと,ミヤマカンスゲは根元の部分が茶色.オクノカンスゲは赤黒いで す.ストロボで写真を撮ると,ミヤマカンスゲの根元も色が濃く写ってしまうんです が.
ミヤマカンスゲ
 穂の方も見ておきましょう.うーん,普通ですね.
ミヤマイラクサ
 イラクサ科を3種,行きましょう.まずはこれ,ミヤマイラクサ.こ れ,葉のサイズは結構大きいです.葉身が10cm程度,葉柄が10cm程度で合わせて 20cm近くあります.春先は山菜として食べるそうですが,この時期はもうダメ.トゲが痛くてたまりません.
コバノイラクサ
 こちらはコバノイラクサです.対生.イラクサ科は,葉の付き方が対 生のものと互生のものがあります.これは対生.葉がミヤマイラクサに比べて小さいの で,鋸歯の数も少ないです.
 コバノイラクサは托葉4枚エゾイラクサは葉がもっと細長くて托葉は合着して2枚.葉も茎も,トゲはコバノ イラクサの方がエゾイラクサより多いですね.
ムカゴイラクサ
 こちらは同じイラクサ科ですが,ムカゴイラクサ互生です.葉が分 かれるところにムカゴ(無性芽)をつけるのが特徴ですが,このサイズで互生のイラクサ 科は思い浮かばないので(なんかあるかな?),ムカゴがなくてもムカゴイラクサと分かります.
クワガタソウ
 あ,クワガタソウですね.花があるとほっとします.同定に確信が持 てて.
ウリノキ
 ウリノキ.樹木です.イタヤカエデのようなカエデ科に見えるかもし れませんが,カエデ科は対生.これは互生です.という事で,慣れれば見間違いません.
ヤマニガナ
 キク科ですねぇ.ヤマニガナです.私も,ヤマニガナとムラサキニガ ナ,動やって見分けるのかと思っていたんですが,ムラサキニガナ,基本無毛(花は紫 色),ヤマニガナ有毛(花は黄色)とかあるんですが,葉が違います.
 ヤマニガナは羽状複葉の頂小葉が,写真のように三角形の山形.ムラサキニガナは頂小葉が三裂しているということ.
 こんなのを手掛にしてはどうでしょう.
フジカンゾウ
 お,フジカンゾウですね.マメ科です.互生奇数羽状複葉ですが,こ の感じがフジに似ているということで「フジ」と付いているようですが,「カンゾウ」の 部分は,意味がわかりませんね.ま,でも,こういうモノだと思うもしかありません.
 それぞれの小葉の側脈が非常にハッキリしていて,葉の裏側にめり込みます.こんなところを特徴として捉えてもいいでしょうか.

 クルマバソウかと思うんですが...で,信大の植物標本庫でクルマバソウとクルマムグラ,オククルマムグラの標本を調べるとですね,この葉の形のものが「クルマムグラ」で登録されています. 登録者は故・井上 健 先生.うーむ花の時期を見たいですね.

 葉の縁は,一見全縁ですが,ルーペで確認すると短いトゲ状の毛があることが分かりますが,肉眼ではわかりません.これが鋸歯っぽく見えることも.クルマ バソウの花はクルマムグラに比べて,筒状に縦に長いので花があれば分かります.今回はペンディング.
ミヤマキケマン フウロケマン
 ナガミノツルキケマンかなあ,と思って写真をとったんですが...
ミヤマキケマン フウロケマン
刮ハ(さくか)が違います.ナガミノツルキケマン(ナガミノツルケマン)やツルケマン(ツルキケマン)は,サヤエンドウのような外見ですが(笑),これは棍棒状でボコボコと節くれだっていますね.キケマン,ミヤマ キケマンといったところでしょうか.ヤマキケマンは, この刮ハがグリグリと曲がります.
ミヤマキケマン
 葉を見ましょう.
 キケマンやその母種のツクシキケマンは葉が常に三出葉だそうです (平凡社図鑑).
 一方ミヤマキケマンやその母種であるフウロケマンの葉は「花時に残っている根出葉 と茎につく葉は卵形で羽状複葉」となっています.場所と標高から,ツクシキケマン(本州中国地方,九州),フウロケマン(本州中部以西-九 州),キケマン(関東以西-琉球,ただし低標高域)などを排除して,ミヤマキケマンと見るのがいいでしょうか.しかし典型的なミヤマキケマンは花茎がもっと高く伸びて,多数の花をつけます. 大してフウロケマンは花の数が2-8個とのこと.その意味ではフウロケマンがいいか.ま,変種関係なのでどちらにせよ種は一緒なんですが.
エゾスズラン
 こちらはエゾスズラン.花の色が地味なので,かえって目立ちます (笑).苞が長い特徴も.
フサザクラ
 フサザクラ.川沿いの岩礫地のようなところにでます.渓谷ですね. サワグルミやシオジが出るような山奥にはでませんが.独特の葉なので見間違えません.サクラ,と名前が付いていますが,バラ科のサクラの仲間ではありませ ん.フサザクラ科.茶色い幹肌に白っぽい皮目があるところがサクラに似ているということでの名前です.
キバナアキギリ
 キバナアキギリ.シソ科アキギリ属.文字通り黄色い花を咲かせま す.写真で見るように葉が矛型(ほこがた)で,葉身の基部が左右に出っ張ります.
オニルリソウ
 オニルリソウですね.ムラサキ科.たまーに出会います.花は見ませ んけど(笑).類似種のサワルリソウは毛が短く目立ちませんが,オニルリソウは茎下部 の毛は開出毛で外側へ向けて長く伸び,目立ちます.
ウスゲタマブキ
 ウスゲタマブキですね.キク科.特徴はと言われると,どうなんで しょう.薄く毛があるとか.うーん.矢尻を横に広げたような葉をつけます.沢沿いの湿っ た立地に生育しますね.
ノダイオウ
 エゾノギシギシ...ではなく,ノダイオウですね.葉身の基部はあ まりハート型にならず切形です.いや,ま,程度の問題ですけど.
ノダイオウ
 で,エゾノギシギシはもっとシワが多く,葉の裏の主脈上に触ってわかるようなツブツブ,突起があるんですが,ノダイオウにはありません.
 ちなみに平凡社の図鑑でノダイオウの写真を見ると何だかよくわかりません(笑).
ヒメシラスゲ
 ヒメシラスゲ.日本海側に多いそうです.小穂が接していること,雄 小穂も付いているんですが,小さく,細く,目立ちません.それと,実が著しく外向きに つきますので,ツンツンして見えますね.
 名前が似ているシラスゲは,ナルコスゲのように雌小穂がぶらんと垂れます.
ヒメシラスゲ
 ヒメシラスゲの根元.白っぽいですね.葉の断面はM字型.
シャク
 シャク.セリ科シャク属.ヤブジラミなんかは全体に毛があって,茎 も毛でザラザラしますが,こちら,シャクは茎に毛がない.
シャク
 シャクの花.花序の外側にある花は花びら2枚が大きいとされていま す.花序の内側にある花は花びらの大きさがあまり変わりません.
 ヤブジラミも花序の外側の花弁が大きいですが,花びらが横に広いですね.こちら,シャクの大きくなった花びらは縦長です.ちなみにオヤブジラミの花びら はヤブジラミに似ますが,白い花弁の先端が赤紫になり ます.

あと,実になるとヤブジラミは実の先端方向が太いですが,シャクは根元のほうが太い です.
シャク
 シャクの葉.
シャク
 シャクの全体像
シャク
葉の付け根を見ます.ヤブジラミやオヤブジラミに比べると,ほぼ無毛ですが,全く毛がないわけではありません.
シャク
 ここ,葉の付け根の部分をよく見ると毛がありますね.
ミヤマハハソ
 おまけですが,ミヤマハハソ.ミヤマ,とは深山(しんざん,みや ま,山奥のこと)のことで,ハハソ,とはコナラの古名だそうですが,これ,コナラの属す るブナ科ではなくてアワブキ科.他人の空似ですね.



 ということで,木曽北部のフロラでした.本当はもっとたくさん出てきましたが,私の好みで写真をとったものの中から紹介.またいい季節になったら出かけたいですね.ではまた.


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