年は変わってしまったんですが,2011年の秋,長野県植物研究会で出かけました.その時であった植物たちを紹介します.この回は,県の北部,雪の多い 地方へ行くことになりました.


ええとですね,いきなりですが,フシグロセンノウ.ナデシコ科で花び らは5枚です.茎が伸びるなか,対生の葉がつく節の部分が黒くなるということで,フシ グロセンノウ.

 いや,これ,皆さん何だか分かりますか?私は分からずに中山会長に聞いちゃいました.あ,長野県植物研究会の会長です.
 で,ソバナの根生葉と知りました.なるほど,言われてみればそんな 気も.花とか茎葉ばかり見ていると,ロゼットとかが分かりません,勉強になりました,

 はい,カモメヅルの仲間ですが,立地的にオオカモメヅルでしょう. 立地的にというのは,林内だからです.いいですよね.また花の時期に来る楽しみが増え たという ものです.

 ツルニンジンです.花が咲いているので,区別は楽,ツルニンジン (ジイソブ)です.類似種のバアソブは花が紫という事で,花が咲いていれば明確に書き分 けられます.

 これも林内の植物です.クマヤナギ.名前にヤナギと付いています が,いわゆるヤナギの仲間では全然ありません.

 左側のハート型の葉を付けているのがノブキ.キク科.写真では分か りませんが,葉柄の部分に翼があって,葉身がつづいているように見えます.見えないか (笑).
 右は...なんだろ,ヒメキンミズヒキかな.

 うお,なんだこのアザミ... と思って,誰か分かる人を待っていたんですが...

 「ナンブアザミだよ,ナンブアザミ」と言われ,よく見ると確かに下 の葉が羽状に切れ込んでいました.うーむ,確かにナンブアザミの特徴.
 これ,全体で高さ30-40cmほど.私が林道脇などでよく見るナンブアザミは1mから,雪国だと1.5m位ありますから,印象だけだとたどり着きませ ん.やはり分析的に見ないとダメか.

 切れこんでいない上の方の葉の裏.白っぽい.

 総苞片が反り返って外へ向いてしまうのも,ナンブアザミの特徴でした.ちっちゃいけど!

 通り道脇に単子葉植物.私はきちんと見てないで,タガネソウかなんかだと思ってスルーしてたんですが,違った(笑).キンセイラン.水金地火木土天海 冥...いや,金星ではありません.
 確かに,葉を見ても,タガネソウではありません(笑).

 残念ながら花は終わっていたんですが,実をつけていました.

 これは植裁,もしくは植裁起源の移出,テマリアジサイ.いわゆるア ジサイです.ヒドランゲア・マクロフィラ.英語風に発音すると,ハイドランジャー,で すね.

 ルイヨウショウマですね.前回まで勘違いしてサラシナショウマ,って書いてありました.訂正します.写真の方はきちんとルイヨウショウマ,ってラベルをつけていたんですが.やってしまいました.花は夏に終わって,実をつけていました.

 こちらはトチバニンジン.薬草の朝鮮人参と近い仲間.葉はどちらも 木本のトチノキに似ています.

 実がひとつだけ付いていました.ゲゲゲの鬼太郎に出てくる目玉おやじの雰囲気.

「おい,鬼太郎!」(笑).

 アケボノシュスラン.これ,雪国型の分布ですよね.今回は花に出会 えました.

 シダはミヤマイタチシダ.イタチシダの仲間は葉表面の脈に沿って葉 面がへこむのが特徴ですね.オオイタチシダとの見分け方はつぎのようです.
 ミヤマイタチシダの葉の基部の鱗片は茶色くて,三角を丸っぽくしたような形.広い.
 オオイタチシダは,黒っぽく線状の鱗片.で,葉の先は旧に細くなる印象.写真のミヤマイタチシダはそうではないですね.

 これこれ,葉の表面のへこむ感じ.ミヤマイタチシダでした.

 さてマタタビなんですが...

 今回の新発見,葉の付く葉腋(ようえき)から発根する性質がある,と.

 マタタビ,葉の裏を見ておきます.脈上にトゲ状の毛がありますが,サルナシのように大きかったり,カギ状だったりはしません.

エゾフユノハナワラビだそうな.





フユノハナワラビとアカハナワラビだけでも紛らわしいのに,また新種が出てきました.佐藤先生によれば,茎(葉柄)に毛があるのが特徴だそうな.

アカとかフユに比べると葉が大きい感じがします.どうなんでしょうか,皆さん.


 イガホオズキですね.

 花が終わって,実の状態です,イガホオズキ.

 タチシオデ.ツル植物なんですが,根元から,一旦立ち上がって寝 る,みたいな.

 葉の裏はご覧のように扮白色(ふんぱくしょく)です.実もかわいい.

 タチシオデの実.こちらも粉を吹いたように白い部分がありますね. ワックス(蝋物質)でしょうか.そうだとすると,普通は乾燥に対する適応なんですが. きゅうりの表面が白いことがありますよね,あれが対乾用のワックスで,決して農薬というわけではないんですよ.

 すごーく貧弱ですが,エゾユズリハ.これから大きくなるのでしょ う.日本海型気候ですね.

 信州や越後の日本海側・多雪地で葉の細いスゲを見つけるとする.その葉の細さはオクノカンスゲやミヤマサンスゲの1/5とかだとする.すると,ほぼ,こ れ,ニシノホンモンジスゲです.

 葉の基部,葉鞘は茶色.ミヤマカンスゲの色に近いでしょうか.しかし細さが圧倒的.

雪国分布です.

これに対し,ホンモンジスゲは雪の少ないところの分布.奥多摩とか,丹沢とか.

 あ,イチヤクソウですね.ジンヨウとかではありません.また,標高 の高いところのベニバナとかでもないですね.

 おっ,アカネ科.考えられるのは,クルマムグラ,クルマバソウ,オククルマムグラ.
 で,これ,茎が無毛なので,オククルマムグラが消えます.オククルマムグラは,茎 に毛があるので.

 ね,茎に毛が無いでしょ?

 で,クルマムグラかクルマバソウなんですが,実を見ます.実が大きく,二つに分か れていますね(2分果).これは,クルマムグラの特徴.クルマバソウは二つに別れず,1分果.
 また,花の時は,クルマムグラは花がさかずき型.クルマバソウは花 が筒状(大げさに言うとユリのような感じ)です. 花も見もないと難しい!

 オヤマボクチですね.キク科.

 花はもう少し.ツボミ段階ですが,総苞片の白い毛が沢山ある感じは出ているんじゃないでしょうか.

 オヤマボクチの葉の裏は真っ白な毛がびっしり.で,北信の方ではこの白い毛を集め,蕎麦のツナギに使ったりするとか.なるほどね.

 こちらは木本,ヤマモミジ.雪の多い地域のヤマモミジは雪の少ない 関東などのものに比べ,鋸歯,切れ込みが強いように見えます.

 アキノキリンソウです.信州の秋を彩るキク科の植物.山の高いとこ ろに行くとミヤマアキノキリンソウという変種に出会います.この写真では花が上から下 までバラバラに途切れて付いている感じがしますが,ミヤマアキノキリンソウは背が低いため,花,花序が一カ所に集まって付いているように見えます.そこも 区別点.

 イワガネソウですね.葉の裏の脈は,一度離れたあとまたくっ付くと いう網目構造.イワガネゼンマイは,一度別れた葉は二度と出会わない二股型.今回は アップの写真あありませんけど.
 ここは,雪国ですが,標高が低いので,イワガネソウとか出るんですね.松本では見ません.

 オトコエシです.葉は対生.上の方の葉は鋸歯のある一般的な葉です が,下の方の葉は羽状に切れ込みます.花の色は白.

 一方こちらはオミナエシ.花の色は黄色ですので,花が咲いていれば オトコエシと間違うことはありません.葉も,オトコエシがずんぐりしているのに対し, 葉のとがり方とかがシャープです.
 オミナエシは比較的明るいところに出現するもので,草地や雑 木林の管理がされなくなってから,数が減り,絶滅危惧種に指定されています.ちなみにこの個体も植裁起源でしょう.

 アカシデですね.イヌシデに似ますが,一回り葉が小さい.で,イヌ シデは葉の表面,側脈と側脈の間に毛が生えますが,アカシデはありません.

 こちらは同じ属のクマシデ.イヌシデ,アカシデに比べると葉が縦に 長く,その分,側脈が多いです.

 先程見たエゾフユノハナワラビ.茎に毛があるということですが,先 程は茎の写真をとっていなかったので,トライしましょう.

 こちらがエゾフユノハナワラビの茎.うーん毛といえば毛でしょうか.薄く鱗片が付いています.

 ツルシキミです.これも雪国に分布.雪の少ないところはミヤマシキ ミで,ツルシキミはそれの変種です,確か.

 これも雪国分布,フッキソウ.ソウ,と言いますが,草ではなく背の 低い木本です.

また分からないシダが出てきましたが,アズミノナライシダだとか.シ ノブカグマとホソバナライシダの雑種だそうです.

 もう少し近づいてみてみましょう.こんな感じ.あ,葉の向きはさっきの写真と反対です.

 鱗片の部分も見ておきましょうか.




安曇野の方で見つかったので,アズミノナライシダという名前なんだと思いますが,ナライシダのナライ,も「奈良井」という地名からつけられています.

ですから,アズミノナライシダって,地名が二つ重なっていて,いったいどこのシダなんだ,という感じですね(笑). だって,サッポロカゴシマシダって あったら,北方系なんだが南方系なんだか分からないでしょ(笑)?

ま,アズミノナライシダの場合,安曇野も奈良井も信州の地名だからまだましなんですが(笑).

笑いすぎ.

 似たシダを2種.まずはこちら,ヤワラシダ

 で,こちらがハリガネワラビ.似てるー!

 どこが違うかというと,こちらはヤワラシダ,脈が葉の縁まで達しない.

 それに対してハリガネワラビは脈が葉の縁まで達します.こんなこと で見分けられますが,アップで見るとヤワラシダは細かい鋸歯がありますがハリガネワラ ビは細かい鋸歯がない点で違いますね.

 そんなことで林をでて,宿に向かいます.夕食の時間までしばらくありますので,あたりを散策.水田雑草や畦の植物でも見ましょうか.
 まずはこちら,エノキグサ

 こちらは外来種ですが,タケトアゼナ.日本のアゼナに似ています が,低い鋸歯があります.アメリカアゼナは,鋸歯が非常に目立ちます.

 ホタルイかなと思ったんですが,小穂が長い.イヌホタルイでしょうか.花の時期ではホタルイは雌しべの花柱が(2)3-7本に分岐,イヌホタルイは2本に分岐,果実の時期は,それを見て,断面が立体的な3角形であれば,ホタル イ,扁平ならイヌホタルイとなりますが...このときはきちんと見なかった.

 葉の大きいのはコナギ.小さいのは先程のタケトアゼナ.

 こちらの葉が矢尻形(やじりがた)をしているのがオモダカ.前方の 葉の尖った部分に比べ,二股の部分のほうが長いことになっています.

 こちらは水田というより,畦植物,コブナグサ.イネ科です.

 こちらはコシロネ茎は節を除いて毛が無いエゾシロネは外見が似ますが,節以外にも茎に毛があるということになっていま す.

 コシロネの茎.基本的に毛が無いです.

 というわけで,この日は,植物写真をとろうとしたら,絶好の薄曇りの日でした.強いかげやコントラストができないのが素晴らしい.
 この写真は,ちょっと晴れてしまっていますが.





そんなことでいろいろ見ました.宿に戻ろうとしてぶらぶらしていたら,蛭間君が群馬ナンバーのスガル・レガシーで登場.「宿どこですか?」ということなの で,車に乗せてもらい,宿まで一緒に 戻りました.1分くらいですが(笑).

この後,飲んで食べて,翌日になります.




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