もう,去年の事になってしまったんですが,2012年秋,松川町の植物をいろいろご案内頂く機会がありましたので,その時の植物などをレポートしたいと思 います.


 南信植調こと,南信州植物・植生調査会なんですが,今回は松川町です.太田さん(奥様の方)にご案内いただきました.

 この辺は地質が花崗岩なんですね.真砂化しています.そのため...

乾いた礫地なんかに生えるカワラハハコが生育しています.

中間温帯林といえばツガ林.

中をちょっと見てみましょう.写真は蛭間隊長.

まずツガ.

そしてネズミサシ.これも乾いた尾根に出ますね.

これはヒメコマツの実です.

落葉広葉樹もあります.コハウチワカエデの実生.

ウメガサソウは,アカマツ林の林床なんかにでますね.

 ヤマナシ.野生のナシです.食べられるようなサイズではないですが,ちゃんと梨の実をつけます.

ヤマナシ,葉の裏も見ておきましょう.

 おや,これはなかなか見ません,オノオレカンバ.一応重鋸歯ですね.

葉の裏はこんな感じ.

 オノオレカンバの幹肌.横方向に細かい皮目が入り,その樹皮も木が太くなることで割れる.

オノオレカンバの樹冠を見上げます.

ツツジ科はナツハゼ.

 あ,先ほどどんぐりを見たヒメコマツ,本体もありました.そりゃそうか.いわゆる五葉松ですので,針状の葉が1箇所から5本出ます.

 これもツツジ科,バイカツツジ.雪の少ない太平洋側のブナ林に生育しますね.花が梅に似ているということで梅花(ばいか)です.あんまり似てないと思う け ど(笑).

 エゾエノキ.枝ぶりに特徴があって,水平に枝を伸ばすので,枝葉全体が平らに見えます.オオムラサキ(蝶)の食草.

これは知らなかった.アキバギクだそうです.My新種.

 アキバギク,何が特徴かというと,集合花全体が小さいとのこと.なるほど,たしかに小さい.
 調べると,ノコンギクの亜種(subspecies)になっているようですね.

 こちらはナガバノコウヤボウキ.花が茎の途中の節からいくつもつく.これが特徴.コウヤボウキの方は,茎の先だけに花がつきます.これが区別点.

フクオウソウですが,この写真じゃよくわかりませんね.

 アオミズです.ミズとの区別点は,まずアオミズの葉の鋸歯は下の方まであるのに,ミズが葉の途中くらいから鋸歯が始まります. 

 それから,アオミズは花序に柄があります.ミズはない.これが区別点.

マタタビですね.

葉の裏をちょっとアップ.

ヤマジノホトトギスです.これの特徴は...

 下向きに毛が密生すること.ホトトギスは上向きに毛があります.ヤマホトトギスは下向きなんですが毛が薄い.無毛に見えるものもあります.タマガワホト ト ギスは,ま,花が黄色なので,咲いていれば間違えませんね.(前回まで,ヤマとヤマジの説明が逆になっていました.訂正)

セキヤノアキチョウジ.シソ科です.秋の花ですね.

オオヒナノウスツボ.霧ヶ峰で見ますね.

 これもMy新種.モリイバラというんだそうです.特徴は,花が枝の先端に一つだけつくことだそうです.

 托葉も一応写真撮っておきましょう.あまり櫛状には切れ込まず,腺点らしきものも,あるのかもしれませんが,はっきりしません.

 オヤマボクチ.葉はめくると真っ白の毛がいっぱい.信州では,裏のこの毛を集め,蕎麦のつなぎにする地域があるようです.

さて,山を出て,場所を移動.水辺にやって来ました.

まずはヒナガヤツリ.

アップだとこんなんです,ヒナガヤツリ.

 お,サワトウガラシですね.ゴマノハグサ科.こちらは葉が全縁.これに似たアゼトウガラシは一枚の葉に鋸歯4個です.
 以前,佐渡で見ました.

 ヌカキビ.実をつけた長い枝が垂れ下がります.これは国産.ちょっと似ているオオクサキビは外来種で,枝が斜め上に伸びていきます.ですので,遠くから でも見分けられますね.

ハリイですね.株の中心から放射状に茎を伸ばします.

 ハリイ,茎の断面は三角形ですね.ヤマイも似ていますが,ヤマイは小穂の付け根から,小穂よりも長い苞葉が出ますね.写真はハリイですので有りません.

 ホタルイですかね.似ているイヌホタルイは,小穂がもっと長くて先が尖っています.きちんと見分けるのには,花柱の分岐を見て,ホタルイなら(2)3-7本に,イヌホタルイなら2本に分岐している部分をチェックします.

ホソバヒメミソハギ.水辺にでますね.ですが外来種です.

タマガヤツリですね.カヤツリグサ科.

 アゼナかと思うんですが,ちょっと微妙.アゼナは全縁.鋸歯があるのはタケトアゼナやアメリカアゼナで外来種です.全縁のようですがちょっと低い鋸歯があるようにも見える.そうだとするとタケトアゼナ.うーむ.

カワラスガナ...かと思っていたんですが,違いますね.イヌクグです.三枚の苞葉が非常に長い.で,苞葉の付け根から枝が何本かでて,そこに小穂群ををつける,二段構造のようになりますね. 前回の記述は間違っていました.訂正します.

 キカシグサ.これも農薬に弱いらしく,水田雑草としては,めったに見ない.

 きました,ヒキヨモギ.前回淡路島で見たんですが,その時にはほとんど枯れかかっていたので,これはいいですね.

 ヒキヨモギは,自分で光合成もしながら寄生もしてしまうという,半寄生植物.ま,寄生だけだとニートだから,半分でも自活していれば,いいほうか (笑).
 ゴマノハグサ科.

 モウセンゴケ.現在4年生で私の研究室に所属しているK君はモウセンゴケをテーマに卒業研究をしています.
 まあ,マニアだから仕方ないか.カラオケ言ってもアニソンばっかりだし(笑).

アケボノソウ.これにヤブマメかなんかのつるが巻き付いていますね.

イトイヌノハナヒゲだとか.おお,My新種.


この仲間,いろいろあって,難しいですよね.私は全然確信がもてません(涙).知っている人がそうだというので,「そうなんですか」としか言えない寂しさ.

もう枯れていますが,オニスゲですね.ごつい.

こちらは普通のコウガイゼキショウでいいでしょう.

 葉の付け根の写真を撮りたかったんですが,時期的には,ちょっと遅かったですね.

コウガイゼキショウ,花のアップ.

  ヤハズソウですね.

 ヤハズソウ,茎の毛は下向き.この写真じゃちょっとわかりづらいですかね.
 似たマルバヤハズソウは,上向きの毛があります.

 私はパッと見て,イチョウウキゴケだと思ったんですが,コケにお詳しい太田さんの旦那様が後日ご覧になって,ハタケゴケだと判明.葉の断面を見ると,く し型なんだとか.確かに,写真もよく見るとイチョウウキゴケとはイメージが違いますね.

アゼガヤツリでいいでしょうかね.

これ,ハリイかと思ったんですが...

ね,似てますよね.

 ところがこれ,茎を見ると断面が四角形.で,シカクイと同定します.ですので,上の小穂の写真もシカクイのもの.
 ハリイは茎の断面が三角形です.ちなみにヤマイの茎の断面は丸いです.

ああ,これも初めて見ます,ウシノシッペイ.

イネ科なんですが,独特ですね.何と言ったらいいのか.

葉の付け根.葉耳はあまり目立ちません.

葉の付け根を横から.いじょう,ウシノシッペイでした.



 これは植栽ですが,オニユリ.葉腋(葉の付け根)にむかごがつきます.よく見ると,もう,根が出ていますね.これで繁殖していきます.
 コオニユリはむかごをつけません.

こちらも植栽,チョウジソウ.花は終わって実がついています.「丁」の字型になっていますね.

さて,これまた移動,田んぼの畦.草刈りされていますので...

スズサイコなんかが見られます.ガガイモ科カモメヅル属.右端,左端の白いセリ科の花は別ですので注意.

 野生化していますが,元は植えたもののタネで増えたのでしょう,シオンです.

  またまた移動.

 ハリガネワラビですね.ヤワラシダと似ていますが,ハリガネワラビの側脈は,葉縁に達します.ヤワラシダは達しませんね.

  ナツノタムラソウですね,アキノタムラソウは雄しべ雌しべとも花の中で見えないんですが,これは見えている花があります.花の中から出ているのはナツノタムラソウ.前回までアキノタムラソウにしていました.訂正.

全体で見るとこんな感じ,ナツノタムラソウ.

 この写真の葉は単葉ですが,下の葉は三出複葉でした.

 ワレモコウ...だと思いますよね,皆さん.これ,雄しべが花の外に出るので,ミヤマワレモコウなんだそうです.いやはや.

  こちらはユウスゲ.こんな状態でなんで分かるのかと聞くと,葉が細いのでわかるとのこと.後は,まあ,日頃からこの辺のフロラを知っているというのが前提 でしょうが.

うむ,カセンソウです.あまり見ませんよね.キク科.

 カセンソウ,特徴はといえば,まず茎が細い.しかし,結構硬い.で,茎には毛が多い.茎から垂直外向きに伸びる.
 あとは,葉がやや茎を抱きます.こんなところが特徴でしょうか.

 こちらはクワクサ.草むらで写真を撮ると,どうしても背景がごちゃごちゃしますから,ここでは絞りを開けて背景をぼかしました.



  これまた移動して,アキノハハコグサを見つける.My新種です.存在すら知らなかった.花は写真のように秋に咲き(普通のハハコグサは春ですね).... 葉は茎を抱く

葉は茎を抱くというのが特徴ということです,秋のハハコグサ.

ヤマハッカはシソ科ですね.

こちらは,マルバウマノスズクサ.うーんそんなのがあるんだ.今日の新種.確かに,丸いというか,葉が横に広いですね.

  近くの畑.変な形になっちゃったんではなく,こういう形のピーマンなんだそうです.通称,ユーフォーピーマン.UFO型ということなんでしょう.

というわけで,色々見ました.
今回は,地元の太田さんにご案内いただいたということで,いろんな植物を見ることができました.My新種も多かったです.いやー素晴らしかったな.ご同 行,そしていろいろご教示いただいた皆さん,ありがとうございます.

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