植生学会なんですが,この春まで学会長をされていた福嶋 司 先生のアイデアで将来計画委員会というのが立ち上げられました.今は会長の退任で,委員会は解散かな.で,その委員会の中で若い学生諸君向けにスクーリン グをしてはどうかということになり,南房総へやって来ました.東京農工大の吉川先生,筑波大学の上條先生,川田先生らの案内で,私はおまけ.で農工大や筑 波大の学生諸君(大学院生がメインかな?)が参加して,主に植物社会学の実地トレーニングです.

 で,安房小湊.私は松本からなので,車で5時間ぐらいかかったかな.一仕事.私はのんびり(じっくり)見る派なので,置いてきぼりを食らうことしばし ば.

 ま,仕方ありません.海鳥でも見ますか.CanonのSX50HSで望遠撮影.晴れて明るければかなり良く写ります.光学望遠で1200mm相当.
 鳥はセグロカモメです,多分.多分とつけたのは,似た種類にオオセグロカモメというのがいて,図鑑では「セグロカモメより大きい」となっているんです が,一羽だけではどうにも判別できません(笑).

 海岸.砂浜でなく,崖地ですが,遊歩道がしっかり整備されています.

 海辺の植物.まずはツワブキ.葉の表面に光沢がありテカります.

 オニヤブソテツ.写真が良くなくて分かりづらいですね.これも葉に光沢があってテカります.

 フウトウカズラ.ツル植物です.これも海岸もの.


 お,コモチシダですね.

 コモチシダ,これは子持ちではありませんでした.一応葉の裏を撮影しておきます.

 こんな感じ.良い林が残されています.

 美しいですね,タチシノブ.これは海岸のものというわけではないですが,暖温帯のシダですね.

 マンリョウですね.鋸歯はありますが,センリョウのように大きくはないです.後でセンリョウの写真もでます.

 海沿いの樹木といえばこれ,タブ(タブノキ).枝先に大きな冬芽をつけるのが特徴.

 写真左はオオイタチシダ.次に出るヤマイタチシダと違い,葉の縁は後ろに巻かないため,鋸歯が見えます.写真右はは先ほどのマンリョウ.

 こちらがヤマイタチシダ.葉の縁は裏へ巻くので,鋸歯があるんですけどこれが見えない(目立たない).ここがオオイタチシダとの違い.

ヤマイタチシダのアップ.

 ヤマイタチシダの葉の裏.葉の縁が裏へ巻いていますね.写真ではソーラスも写っていますが,ちょっとこの写真では小さいですね.

  こちらはフモトシダ.あまりいい個体の写真ではありませんが,現実がこうなので,こういう状態で判別できないといけませんね.

 フモトシダの葉の裏.羽片の切れ込みは小さいですね.

 あ,こちらの個体は形がしっかりしています,フモトシダ.

 フモトシダはソーラスがポケット状です.

  ミゾシダですね.写真の個体は先端がなくなっています.なんとも特徴がない感じですが...

 このミゾシダ,軸が毛深いのが特徴と言えましょうか.

 同じくミゾシダの葉の裏.軸が毛深いですね.ソーラスはハの字につきます.

 こちらも暖温帯のシダで,ヘラシダ.ヘラ状の葉がベローンとしています.

 イヌガヤ.カヤと違い,葉は柔らかく,握っても痛くありません.かやは葉が硬く,先も尖っていますから,握ったら痛いです.握れないけど(笑).

 ハナミョウガですね.葉だけなので文字どおり花のない写真ですが.

 ベニシダですね.これの特徴は...

 最下羽片の下向き第一小羽片が小さいことですね.それと羽片と羽片の間が開いて見えることでしょうか.
 ただ,ベニシダもなんとかベニシダ,といろいろあるので,そっから先はまた調べないといけません.

 アリドオシですね.写真でも写っていますが,トゲがあるので注意です.このトゲが「蟻を突き刺す」というネーミングでアリドオシですね.実際には刺さり ませんけど(笑).

調査をする皆さん.


  ええと,なんの写真かというと,ススキなんですが,これ,ハチジョウススキなんだそうな.ハチジョウとは伊豆諸島の八丈島から来ているんですが,本土にも あるんですね.信州にいる私にはそんなことも新鮮.

で,このハチジョウススキ,特徴は何かというと, 葉の縁がざらつかないことです.普通のススキはざらついて,ヘタをすると手を切りますが,これはそうしたことがありません.

 イノデの仲間なんですが,アスカイノデ.特徴は...

鱗片が細くねじれるということなんですが,この写真じゃわかりませんね.マクロレンズでしっかり撮ればよかった.



初日はこんな感じです.写真にはありませんが,複数箇所で,フロラならびに植生調査をしています.

宿泊は,ちょっと移動して,館山.東京農工大の館山荘というところがあって,そこにお世話になります.右写真の建物,ね.



 夜が,また,熱心に勉強会するんですよ.大学院生中心ですが,学生諸君の士気も高い.いやあ,筑波も農工も素晴らしいな.これなら論文も出るわな.正直 羨ましかったりする (笑).

  勉強会が終われば飲んでリラックス.

 翌日.波風の穏やかな日です.ま,内房側ということもあるんですが. この日も調査実習.

 まずは,イタビカズラ.

 樹木はヒメユズリハですね.海岸の樹木です.ユズリハに比べ,葉身が短いので遠目に見ると葉柄が長く見えます.相対的に,ですけどね.

 ヤブニンジンですね.

 野生のノシラン.私は植栽しか見たことがなかったので,大変新鮮です.

 このノシラン,特徴はというと,花茎が偏平(へんぺい)だということ.茎の断面を見たとすると,凸型レンズのようになるはずです.ま,実際に切ったりは しませんが.

 ウラシマソウですね.やはり暖温帯のものです.

 仏炎苞の先が長く伸びます.浦島太郎の釣り竿&糸に見立てられる所以(ゆえん)ですね.

 見事なナツトウダイです.

今までも見たことはあったんですが,この花の時期に出会ってなかったので,この状態を見られたのは初めてです.ということでほぼ初見,ナツトウダイ.

 教えてもらいました.ヒメカンスゲ.常緑で葉が細いんですが,特徴はなんといっても花茎の節々が褐色であること.なるほどね.

  こちらはセンリョウですね.マンリョウがぼこぼことした丸い鋸歯なのに対し,こちらは外向きに尖った鋸歯です.

 どちらも千両,万両という名前に引っ掛けて,縁起物として鉢植えで売ってたりしますね.

 クスノキ科の樹木を2種類.まずはヤブニッケイ.次に紹介するシロダモと葉は似ていますが,葉は対生っぽく付きます.

 こちらの写真,左はヤブニッケイ,右はシロダモ.シロダモは伸びている枝の所々から,葉をまとめてつけます.そのため,遠くから見ると葉は輪生している ように見えます.

  これ,モチノキなんですが,林内の若木は鋸歯がある事があるんだそうです.初めて知った.普通は全縁なんですけどね.

 公園での雑草,アメリカスズメノヒエ.外来です.
そんなことで,二日間の実習,私にとっても実り多いものでした.学生の皆さんも楽しんで学んでいたようですし,またやりましょう.先生方,よろしくおねが いします.



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