これまでやってきたこと

これまで行ってきた研究と,現在興味を持っていること

 私がこれまでどの様な研究をしてきたか,また,現在どの様なことに興味を持っているのかを簡単にまとめました.ちなみに,学生諸君は自分で興味のあること,やりたいことを自由にやってもらうのが私の方針ですので(ただし,私の面倒の見られる範囲で),学生の皆さんは下記の内容にしばられる事はありません.

・ブナ林の更新

 ブナという日本の落葉広葉樹林を代表する樹木があるのですが,これがどの様に世代交代しているのか,という問題です.日本には純林状の日本海型ブナ林というタイプと,様々な樹種が混生する太平洋型ブナ林というタイプがあり,この二つのタイプ間で更新動態が異なることを明らかにしてきました.この研究は,後述のように「そうした違いがなぜ起きているのか」という視点で現在も続いています.
関連論文:島野・沖津(1993,1994)など

・森林構造の解析

 森林を高木層,亜高木層,低木層と分けていったり,太い,大きな木の密度がこれくらい,小さな木がこれくらい,ということを記録していくことが森林構造の把握ということになりましょうが,それだけではその構造が意味することは分かりません.なぜそうした構造が見られるのか,どの様にそうした構造が作られていくのかを考えることは重要だと思います.それは樹木たちがある規則のもと成長していった結果なのですから.私は樹木の更新様式が森林構造に記録されているという立場で,構造を把握することで各種樹木の更新様式を明らかにしていきたいと考えています.
関連論文:Shimano (1997, 2000),島野(2000)など

・動物と植物の相互関係

 植物,動物はそれぞれ独立して存在しているのではないことは,皆さん異存無いでしょう.こうしたことにも私は興味を持っています.ブナの更新にはブナのタネを摂食するネズミなどの行動がどの様に妨げられているかなどを知る必要があります.また,今後環境アセスメントの中で普通種として注目されて行くであろうノウサギがどの様な餌を食べ,生育環境としてどの様な植生を必要としているかなどを明らかにする仕事をしてきました.
関連論文:Shimano & Masuzawa (1995, 1998), 島野ほか(2001),島野ほか(2003)など

・林床の光環境と植物の関係

 植物は光を得ることなしに生育できません.すでに成長してしまった林冠木については,あまり心配することのない光環境も,これから成長していこうとしている実生や稚樹にとってはとても重要な問題です.また,光の要求性や耐陰性は樹種によって異なるでしょうから,これを,どの様な森林構造でどの様な光環境になるのか,といったこととあわせて調べていくといろいろとおもしろいことが分かっていくのではないかと思っています.
関連論文:Shimano (2000), Kobayashi et al. (2000)など

・植生の地理的な変化/雪と植物との関係

 前述のように,一言でブナ林といっても,地域によってその構造や種組成に大きな違いがあります.ブナ林についていえば,この違いに大きな影響を与えているのが雪です.自然地理的な視点も持ちつつ,雪のどういった作用が,どの様に植生に影響を与えているのかなどにも興味があります.要因としては雪だけには限りませんが.
関連論文:島野(1998,1999),Shimano (2000,2002)

・渓畔林植生とその動態

 実はブナ林の研究を学部4年で始める前,シオジ林など渓畔林に興味があり,調査対象地を探したりしたことがありました.また,攪乱をきっかけに樹木が成長していくというギャップ更新が,もっともダイナミックに(地表の攪乱などをともなうため)行われるのが渓畔林といえましょう.研究はブナ林と進んでいきますが,その後,共同研究に恵まれ,いくつかの成果を出すお手伝いが出来たことは幸運です.こうした渓畔林にも,今後とも関わっていけると良いと考えています.
関連論文:久保ほか(1999,2000a,b,),Sakio et al.(2002)など

トップに戻る