反応進行度 ξ というのがいまいちよくわからない

反応進行度 ξ というのがいまいちよくわからない

反応進行度 ξ は、反応がどこまで進んだかを表す量です。
反応進行「度」という名称からは、反応開始時が 0、反応終了時が 1 になるような無次元の値を想像しますが、マッカーリ・サイモンで出てくる 反応進行度 ξ の単位は mol になっています。

例えば、

H2(g) + I2(g) → 2 HI(g)

という反応を考えます。
初期状態として、H2(g)が 5 mol, I2(g) が 10 mol, HI(g) は無し(0 mol)からスタートするとします。
反応の進行とともに、 ξ  は増加します。

反応進行度 ξ H2(g) の量 I2(g) の量 HI(g) の量
0 mol 5 mol 10 mol 0 mol 反応スタート。 ξ は 0 mol
0.1 mol 4.9 mol 9.9 mol 0.2 mol
1 mol 4 mol 9 mol 2 mol 反応物が各 1 mol 失われ、
生成物が 2 mol できた。
2 mol 3 mol 8 mol 4 mol
3 mol 2 mol 7 mol 6 mol
4 mol 1 mol 6 mol 8 mol
5 mol 0 mol 5 mol 10 mol 水素がなくなるので反応おしまい。
ξ の最大値は 5 mol

このように、 ξ  とともに (ξ × 反応式の係数) だけ反応物 (H2, I2) は失われ、(ξ × 反応式の係数) だけ生成物(HI)ができます。
上記の例では、 ξ  の範囲は 0 mol ~ 5 mol になります。

このように ξ の最小値 1)反応物の初期量が 0 mol, 生成物の初期量が 1 mol のような条件だと、反応進行度 ξ は負の値を取ることになります。 、最大値は 物質の初期量によって変わります。

 

授業で説明した一般化された化学反応式

  \nu_{\rm A}{\rm A} + \nu_{\rm B}{\rm B} \rightleftarrows \nu_{\rm Y}{\rm Y} + \nu_{\rm Z}{\rm Z}  

の場合、反応中の各物質の量は ξ を使って次のように表されます。

  n_{\rm A} = n_{\rm A0} - \nu_{\rm A}\xi\\  \\  n_{\rm B} = n_{\rm B0} - \nu_{\rm B}\xi\\  \\  n_{\rm Y} = n_{\rm Y0} + \nu_{\rm Y}\xi\\  \\  n_{\rm Z} = n_{\rm Z0} + \nu_{\rm Z}\xi\\  \\   ... (26.1)

nj0は各物質の初期量です。νj は化学反応式の係数(正しくは化学量論係数という) で、無次元量です。
反応進行度 ξ の増加に伴い、反応物は (νξ) だけ減少、生成物は(νξ) だけ増加します。
各物質の量 nj が負にならない、という条件によって とりうる ξ の範囲が定まります。

反応物の初期量が それぞれ νA mol と νB mol、生成物の初期量が 0 mol だったとすると、
とりうる ξ の最小値は 0 mol、最大値は 1 mol となります。

 

最初に挙げた

H2(g) + I2(g) ↔ 2 HI(g)

のような平衡反応の場合、ξ は最大値まではいかず、途中で平衡となります

 

ξ が mol を単位とするような量として定義されているのは、
化学ポテンシャル μ が

  \displaystyle \mu_{\rm A} = \left(\frac{\partial G_{\rm A}}{\partial n_{\rm A}} \right)_{T, P}  

のように mol あたりの量となっているので、G を計算する際に反応量を mol 単位にしなくてはならないためです。

 

脚注

1 反応物の初期量が 0 mol, 生成物の初期量が 1 mol のような条件だと、反応進行度 ξ は負の値を取ることになります。