波を表す6つ(+2)のパラメータ

時間とともに移動する波

時間とともに移動する波(単振動)は次の一般式で書けます。

\displaystyle f(x,t) = \sin\left\{2 \pi \left(\frac{x}{\lambda}-\frac{t}{T}\right)\right\} ...(1)

波の変位 f は 位置 x と 時間 t を指定すれば決まるので、fxt の関数です。

t の分母に入る T は 周期、x の分母に入る λ (ラムダ)は波長です。T = 10 s, λ = 4 m として図示すると


図1: 時間とともに移動する波 (T = 10 s, λ = 4 m)

上記のように、横軸を x として書いたグラフで、時間とともに波は移動していきます。(1)式、/ T の前の − (マイナス) は 右 (x がプラスの方向) に移動していく波を表すために入ります。

時間に関する3つのパラメータ T, ν, ω

図1 で 位置を x=0 に固定すると、次のように横軸を 時間 t とした波が観測できます。

図2: 時間による変化 (x = 0 に固定)

波1回分の時間が 周期 T です。他に 振動数 ν (ニュー)、角振動数 ω (オメガ)で同じ波を表すことができます。表にまとめます。

時間に関する 波の 3 つのパラメータ
名称 記号 単位 説明 関係式
周期 T s 波1回あたりの時間 T = \frac{1}{\nu}
振動数(周波数) \nu s−1 (Hz) 1秒あたりの波の数 \nu = \frac{1}{T}
角振動数 \omega rad s−1 振動数に 2π をかけてラジアン単位にしたもの \omega = 2\pi\nu

この 3 つのパラメータ T, ν, ω はお互いに関係式を持つので、どれかひとつが決まると残りの 2 つが定まります。(どれか 1 つを指定すれば十分)

位置に関する3つのパラメータ λ, ˜ν, k

同様に、図1 で 時間を t = 0 に固定すると、次のように横軸を 位置 x とした波が観測できます。

図3: 位置による変化 (t = 0 に固定)

波1回分の距離(長さ)が 波長 λ です。他に 波数 \tilde{\nu} (ニューチルダ)、角波数 k で同じ波を表すことができます。表にまとめます。

位置に関する 波の 3 つのパラメータ
名称 記号 単位 説明 関係式
波長 \lambda m 波1回分の距離 \lambda = \frac{1}{\tilde{\nu}}
波数 \tilde{\nu} m−1  1 m あたりの波の数 \tilde{\nu} = \frac{1}{\lambda}
角波数 k rad m−1 波数に 2π をかけてラジアン単位にしたもの k = 2\pi \tilde{\nu}

この 3 つのパラメータ λ, \tilde{\nu}k はお互いに関係式を持つので、どれかひとつが決まると残りの 2 つが定まります。(どれか 1 つを指定すれば十分)

6つのパラメータと波(単振動)の一般式

上で見たように、振動現象(単振動)を表すには、
時間に関係する 3 つのパラメータ (T, ν, ω) からひとつ、
位置に関係する 3 つのパラメータ (λ, \tilde{\nu}k) からひとつ
を表せば十分です。(振幅 A と 初期位相 φ については後から説明します。)

従って、波の一般式(1)は、他のパラメータを使って表すこともできます。

\displaystyle f(x,t) = \sin\left\{2 \pi \left(\frac{x}{\lambda}-\frac{t}{T}\right)\right\} ...(1)
\displaystyle f(x,t) = \sin\left\{2 \pi \left(\nu x-\tilde{\nu}t \right)\right\} ...(2)
\displaystyle f(x,t) = \sin \left(\omega x- k t \right) ...(3)

波の進む速度 V が決まっている場合

波の進む速度 V は 波長 λ、振動数 ν

V = \lambda \nu

という関係があります。波長 λ の波が、1 秒間に ν 個流れていくので、その速度は λ ν、と考えると連想しやすいと思います。

この関係があるので、波の進む速度が決まっている場合、上記の 6 つのパラメータは、結局どれか 1 つを指定すれば全て決まることになります。

真空中の電磁波の場合、波の進む速度は 光速度 c なので

c =\lambda \nu

となります。電磁波の場合、光の粒子性の式

E = h \nu

(h: プランク定数)

から、光子 1 個当たりのエネルギー E で表されることもあります。

振幅 A

振幅 A は、数式上は波を表す sin の前に係数として入ります。

\displaystyle f(x,t) = A \sin\left\{2 \pi \left(\frac{x}{\lambda}-\frac{t}{T}\right)\right\} ...(1’)

振幅 A は波の振動の中心値と最大値の差です。

図4: 振幅 A

最大値と最小値の差ではないことに注意してください。

媒質を伝わる波の場合、そのエネルギーは 振幅の2乗 A2 に比例することが知られています。

波動関数の場合、波の変位の2乗 は粒子の存在確率に比例、
電磁波の場合、A2 は光子の数に比例します。

初期位相 𝜙

ここまで扱ってきた式は、どれも t = 0, x = 0 のときに 0 からスタートしています(下図 緑)。これがずれる場合があり、ずれを 初期位相 𝜙 といいます。(1), (2), (3)式のどれを使っても表せますが、𝜙 は sin 式の中に足し算として入ります。

\displaystyle f(x,t) = \sin \left(\omega x- k t + \phi \right) ...(3')
図5: 初期位相 𝜙 . ω = 2 π /8 , t = 0 に固定。

初期位相は 0 ~ 2π のラジアン単位で表されます。

上の赤のグラフは cos の形と同じです。単振動は cos を使って表すこともできますが、sin で 初期位相を π/2 としたときと同じ波になります。

初期位相は 波長や振動数が同じ複数の波を足し合わせるときに重要です。初期位相が同じ 2 つの波を足し合わせると振幅は 2 倍に、初期位相が π ずれた 2 つの波を足し合わせると振幅は 0 になります。

eiωt, eikxとの関係

複素数 (a + bi) は周期現象や振動現象を表すのに便利な性質を持っています。

特に e (自然対数の底) の 乗は オイラーの式

\displaystyle e^{i\theta} = \cos{\theta}+i\sin{\theta} ...(4)

で表されるように、sin, cos と関係を持っており、θωt と置き換え、ついでに A をかけることで

\displaystyle A e^{i \omega t} = A \cos{\omega t}+iA\sin{\omega t} ...(4')

となり、実数部、虚部を取り出すことで角振動数 ω , 振幅 A の 単振動を表すことができます。

Aeiωt は複素数の振動です。2乗する(複素数なので、複素共役 Ae−iωt をかける)といつでも Aになるなどの性質があり、電磁波等を表すのにはこちらの方が sin , cos よりも優れています。

また、 e はsin, cos と次の関係があります。

\displaystyle \cos{\theta} = \frac{e^{i\theta}+e^{-i\theta}}{2}
\displaystyle \sin{\theta} = \frac{e^{i\theta}-e^{-i\theta}}{2i}