時間とともに移動する波
時間とともに移動する波(単振動)は次の一般式で書けます。
...(1)
波の変位 f は 位置 x と 時間 t を指定すれば決まるので、f は x と t の関数です。
t の分母に入る T は 周期、x の分母に入る λ (ラムダ)は波長です。T = 10 s, λ = 4 m として図示すると
上記のように、横軸を x として書いたグラフで、時間とともに波は移動していきます。(1)式、t / T の前の − (マイナス) は 右 (x がプラスの方向) に移動していく波を表すために入ります。
時間に関する3つのパラメータ T, ν, ω
図1 で 位置を x=0 に固定すると、次のように横軸を 時間 t とした波が観測できます。
波1回分の時間が 周期 T です。他に 振動数 ν (ニュー)、角振動数 ω (オメガ)で同じ波を表すことができます。表にまとめます。
名称 | 記号 | 単位 | 説明 | 関係式 |
周期 | s | 波1回あたりの時間 | ||
振動数(周波数) | s−1 (Hz) | 1秒あたりの波の数 | ||
角振動数 | rad s−1 | 振動数に 2π をかけてラジアン単位にしたもの |
この 3 つのパラメータ T, ν, ω はお互いに関係式を持つので、どれかひとつが決まると残りの 2 つが定まります。(どれか 1 つを指定すれば十分)
位置に関する3つのパラメータ λ, ˜ν, k
同様に、図1 で 時間を t = 0 に固定すると、次のように横軸を 位置 x とした波が観測できます。
波1回分の距離(長さ)が 波長 λ です。他に 波数 (ニューチルダ)、角波数 k で同じ波を表すことができます。表にまとめます。
名称 | 記号 | 単位 | 説明 | 関係式 |
波長 | m | 波1回分の距離 | ||
波数 | m−1 | 1 m あたりの波の数 | ||
角波数 | rad m−1 | 波数に 2π をかけてラジアン単位にしたもの |
この 3 つのパラメータ λ, , k はお互いに関係式を持つので、どれかひとつが決まると残りの 2 つが定まります。(どれか 1 つを指定すれば十分)
6つのパラメータと波(単振動)の一般式
上で見たように、振動現象(単振動)を表すには、
時間に関係する 3 つのパラメータ (T, ν, ω) からひとつ、
位置に関係する 3 つのパラメータ (λ, , k) からひとつ
を表せば十分です。(振幅 A と 初期位相 φ については後から説明します。)
従って、波の一般式(1)は、他のパラメータを使って表すこともできます。
...(1)
...(2)
...(3)
波の進む速度 V が決まっている場合
波の進む速度 V は 波長 λ、振動数 ν と
という関係があります。波長 λ の波が、1 秒間に ν 個流れていくので、その速度は λ ν、と考えると連想しやすいと思います。
この関係があるので、波の進む速度が決まっている場合、上記の 6 つのパラメータは、結局どれか 1 つを指定すれば全て決まることになります。
真空中の電磁波の場合、波の進む速度は 光速度 c なので
となります。電磁波の場合、光の粒子性の式
(h: プランク定数)
から、光子 1 個当たりのエネルギー E で表されることもあります。
振幅 A
振幅 A は、数式上は波を表す sin の前に係数として入ります。
...(1’)
振幅 A は波の振動の中心値と最大値の差です。
最大値と最小値の差ではないことに注意してください。
媒質を伝わる波の場合、そのエネルギーは 振幅の2乗 A2 に比例することが知られています。
波動関数の場合、波の変位の2乗 は粒子の存在確率に比例、
電磁波の場合、A2 は光子の数に比例します。
初期位相 𝜙
ここまで扱ってきた式は、どれも t = 0, x = 0 のときに 0 からスタートしています(下図 緑)。これがずれる場合があり、ずれを 初期位相 𝜙 といいます。(1), (2), (3)式のどれを使っても表せますが、𝜙 は sin 式の中に足し算として入ります。
...(3')
初期位相は 0 ~ 2π のラジアン単位で表されます。
上の赤のグラフは cos の形と同じです。単振動は cos を使って表すこともできますが、sin で 初期位相を π/2 としたときと同じ波になります。
初期位相は 波長や振動数が同じ複数の波を足し合わせるときに重要です。初期位相が同じ 2 つの波を足し合わせると振幅は 2 倍に、初期位相が π ずれた 2 つの波を足し合わせると振幅は 0 になります。
eiωt, eikxとの関係
複素数 (a + bi) は周期現象や振動現象を表すのに便利な性質を持っています。
特に e (自然対数の底) の iθ 乗は オイラーの式
...(4)
で表されるように、sin, cos と関係を持っており、θ を ωt と置き換え、ついでに A をかけることで
...(4')
となり、実数部、虚部を取り出すことで角振動数 ω , 振幅 A の 単振動を表すことができます。
Aeiωt は複素数の振動です。2乗する(複素数なので、複素共役 Ae−iωt をかける)といつでも A2 になるなどの性質があり、電磁波等を表すのにはこちらの方が sin , cos よりも優れています。
また、 eiθ は、 sin, cos と次の関係があります。