教科書の仮説 3 は
… (4.8)
を満足する。
と書かれています。
粒子の状態は波動関数で表されるのですが、それは複数の固有関数の重ね合わせになっています。上の例で行くと、波動関数 は
… (1)という、固有関数のセットの重ね合わせです。
これに対し 演算子に相当する「測定」をすると、
(1)式のいずれかの固有関数が選ばれ、例えば
のように測定値が得られます。
この場合は が選ばれ、 が測定されました。どの固有関数が選ばれるかは、測定するまでわかりません。(ただし、選ばれる確率は事前に計算可能)
この固有関数のセットが、測定する物理量の種類によって違うのです。
演算子 については、
のような、別の固有関数のセットの重ね合わせで波動関数が表されます。合計した波動関数 は同じです。
演算子 に相当する「測定」をすると、
(2)式のいずれかの固有関数が選ばれ、例えば
のように、測定値が決まります。この場合は が選ばれ、 が測定されました。固有関数の番号は順番につけただけなので、仮に3番目が選ばれたとしても と は別物です。
いったん測定されると、系の状態は変わってしまいます。それまで として、(1)式や(2)式の「重ね合わせ」だった状態は、 の測定をして が測定されると、 だけに定まってしまいます。
同様に の測定をして が測定されると、 だけに定まってしまいます。
要するに、(4.8)式は、その演算子用に用意された 固有関数でしか成り立ちませんよ、ということです。
少々ややこしいのは、違う種類の測定でも、「固有関数のセット」は共通、という測定の組み合わせがあることです。例えば、全エネルギー と 運動エネルギー の 固有関数のセットは共通です。このような組み合わせの場合、同時に両方の測定を行うことができます。
固有関数のセットが共通かどうかは、「演算子が可換であるかどうか」で調べることができます。(問題 4-21 参照)