仮説 3 のところで、「演算子ごとに 違う ψn がある」という説明がよくわからなかった

仮説 3 のところで、「演算子ごとに 違う \psi_n がある」という説明がよくわからなかった

教科書の仮説 3 は

演算子 \hat{A} に付随した観測量のどんな測定についても、観測にかかる唯一の値は a_n であり、この固有値は固有値方程式
\hat{A}\psi_n = a_n \psi_n … (4.8)
を満足する。

と書かれています。

粒子の状態は波動関数で表されるのですが、それは複数の固有関数の重ね合わせになっています。上の例で行くと、波動関数 \psi

 \psi = \psi_1 + \psi_2 + \psi_3 + \psi_4 ... … (1)

という、固有関数のセットの重ね合わせです。

これに対し 演算子\hat{A}に相当する「測定」をすると、
(1)式のいずれかの固有関数が選ばれ、例えば

\hat{A}\psi_3 = a_3 \psi_3

のように測定値が得られます。
この場合は \psi_3 が選ばれ、a_3 が測定されました。どの固有関数が選ばれるかは、測定するまでわかりません。(ただし、選ばれる確率は事前に計算可能)

この固有関数のセットが、測定する物理量の種類によって違うのです。
演算子 \hat{B} については、

 \psi = \phi_1 + \phi_2 + \phi_3 + \phi_4 ... … (2)

のような、別の固有関数のセットの重ね合わせで波動関数が表されます。合計した波動関数 \psi は同じです。

演算子 \hat{B} に相当する「測定」をすると、
(2)式のいずれかの固有関数が選ばれ、例えば

\hat{B}\phi_2 = b_2 \phi_2

のように、測定値が決まります。この場合は \phi_2 が選ばれ、b_2 が測定されました。固有関数の番号は順番につけただけなので、仮に3番目が選ばれたとしても \psi_3\phi_3 は別物です。

いったん測定されると、系の状態は変わってしまいます。それまで\psi として、(1)式や(2)式の「重ね合わせ」だった状態は、 \hat{A} の測定をして a_3 が測定されると、 \psi_3 だけに定まってしまいます。
同様に \hat{B} の測定をして b_2 が測定されると、\phi_2 だけに定まってしまいます。

要するに、(4.8)式は、その演算子用に用意された 固有関数でしか成り立ちませんよ、ということです。

少々ややこしいのは、違う種類の測定でも、「固有関数のセット」は共通、という測定の組み合わせがあることです。例えば、全エネルギー\hat{H}運動エネルギー\hat{K} の 固有関数のセットは共通です。このような組み合わせの場合、同時に両方の測定を行うことができます。
固有関数のセットが共通かどうかは、「演算子が可換であるかどうか」で調べることができます。(問題 4-21 参照)