調和振動子の存在確率の図(教科書p.184, 図5.8)で、全エネルギーが調和振動子のポテンシャル(U = (1/2)kx2)を超えているところ(上図 矢印付近)でも存在確率は 0 になっていません。
古典的な調和振動子では、粒子は持っているエネルギー以上のポテンシャルには決して行くことはできません。
量子力学では、このような「超えることのできないはずのポテンシャル」内に、波動関数が入り込むことが知られています。「トンネル現象」とか「トンネル効果」と呼ばれています。
なぜそんなことが起こるのか、というのを説明するのは難しいですが、微小な世界では粒子は「粒」ではなく「波」なので、はっきりと決まった位置に存在するのではなくある程度ぼやけて存在しているから、でしょうか。
なお、「超えられない(ポテンシャルの)壁」の中に粒子を(実験的に)見つけることはできません。「壁」の向こう側にポテンシャルの低い領域があれば、そこに粒子は一定の確率で現れます。確率は波動方程式を解けば求めることができます。
この現象は実験的にも確認されており、原子レベルの分解能を持つ「トンネル顕微鏡」(Scanning Tunneling Microscopy) に応用されています。
井戸型ポテンシャルの場合
前に出てきた井戸型ポテンシャルの場合、こういう「はみだし」はありません。
これは、ポテンシャルエネルギー U を
U(x) = 0 (0 ≤ x ≤ a のとき)
U(x) = ∞ (x < 0 または a < x のとき)
と、井戸の外で ∞ にしているためです。さすがの波動関数も、ポテンシャル ∞ のところには入り込めません。