物理量の表し方
物理量 Q の値は、その単位 [ Q ] とその単位で得られる数値 { Q } の積で表される。
... (1)
例えばナトリウムの固有線の波長 λ は次のように書かれる。
... (2)
10 の n 乗の部分は接頭語と置換えてもよい。
同じく、接頭語はそのまま対応する 10n と置換えてよい。
ただし、単位自体が 2 乗や 3 乗の次元を持つ場合は、指数法則に従って計算することに注意。
四則演算の方法(1)
式(1) のように物理量は数値と単位の積で表されることに注意して、方程式に代入するときに数値とともに単位を代入し、数値は数値、単位は単位でそれぞれ計算する。
[例題] 300 K、0.1000 bar (バール) において、密度が 0.1771 g dm−3 となる気体がある。この気体の分子質量 M を求めよ。 [解答] まず、理想気体の状態方程式 PV = nRT を用いて、M を求めるための方程式を立てる。ここで、各物理量に数値と単位の積をそれぞれ代入する。気体定数 R は、教科書の表紙裏にあるものから適切な単位を持つものを選ぼう。
数値は数値、単位は単位で計算する。
この方法により、物理量が単位つきで得られる。
単位換算
物理量の単位が合っておらず、換算しなくてはならない場合は次のようにする。
前の例題で、圧力 76 Torr (トル)と、単位が Torr で与えられていた場合を考えよう。
まず、数式中の 圧力 P のところに、76 Torr を単位付きで代入する。
... (3)
この問題の場合、Torr を bar に換算する必要がある。Torr と bar には次の関係がある。
... (4)
式(3) において、Torr を代数記号(x や y と同じ)と見なし、式(4) を代入する。
以降の方法は前項と同じである。
この例では bar に換算したが、通常はSI単位に揃える。
物理量のもうひとつの表し方
式(2) において両辺を単位で割り、
または
のように表記する方法がある。
この場合、右辺は(無次元の)単なる数値となる。
この表記法は表に値を列挙する場合(下表参照)などに便利である。
元素名 | λ / nm |
Na | 589.6 |
Cd | 643.8 |
Hg | 579.0 |
これは a / b / c と書くと (a / b) / c なのか a / (b / c) なのかわからなくなってしまうためです。
a / b c と書いてある場合、 (a / b) × c と a / (b × c) と 2 通りに読めますが、「スラッシュは 1 回しか使わない」というルールがあるので、 a / (b × c) を意味することになります。(スラッシュはその左側全体を分子に、右側全体を分母にとる。)
よって、上の表の見出しに密度を書く場合には、 ρ / g / cm3 とは書かずに、 ρ / g cm−3 と書きます。
(グリーンブック p.7 参照
http://www.nmij.jp/public/repo……df#page=27 )
四則演算の方法(2)
物理量を含む方程式を書く際に、前項のように各物理量を単位で割った形で書く方法がある。
この場合、(ρ / g dm−3) = 0.1771、(T / K) = 300 などというように考えて、右辺に無次元の数値を代入していく。
数値を計算すれば(M / g mol−1) として無次元の数値 (44.17) が求まる。
この方が簡単だが、方程式を立てた時点で、左辺、右辺の単位が一致していることを確かめておく必要がある。
方法(1)、(2) のどちらの方法にも対応できるように、慣れておいてください。
以上は「 IUPAC 物理化学で用いられる量・単位・記号」 (グリーンブック) から抜粋したものです。
例) bar L の換算
例として、圧力 × 体積 の単位が、 bar (バール) と L (リットル) で与えられているときを考えよう。
圧力 2 bar の等圧条件で、系の体積を 4 L 減少させる圧縮過程で系になされる仕事 w は
となる。P と ΔV に数値を単位付きで代入して
... (5)
(体積が「減少」するので、ΔV はマイナスとなる)
1 bar と 1 L をそれぞれSI単位系に換算する。
1 L は 一辺が 0.1 m の立方体の体積で、1 dm3 に等しい。
1 L = 1 dm3 = 1 (dm)3 = 1 (10−1 m)3 = 10-3 m3
これを(5)式に代入
Pa (パスカル) を m を含む形に書き直して
(1 Pa は圧力の単位で、1 m2 あたり 1 N の力が働いている)
数値は数値、単位は単位で計算
N m はエネルギーの次元を持ち、 J (ジュール)と置き換えることができる。
N (ニュートン, 力の単位) と J (ジュール, エネルギーの単位) は
頻出なので、基本単位との関係は覚えておくとよい。
(1 N は力の単位で、1 kg の物体に 1 m s−2 (1 メートル毎秒毎秒) の加速度を与える)
(1 J はエネルギーの単位で、 ある物体に1 N の力が働いている場の中で、それを 1 m 移動させるのに必要なエネルギー)
というわけで、求める答えは
となる。
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