古典的波動方程式を解いたとき、時間に関係する式 T(t) が sin じゃなくて cos になるのはなぜ?

古典的波動方程式を解いたとき、時間に関係する式 T(t) が sin じゃなくて cos になるのはなぜ?

式(2.25)や(2.48)において、位置に関係する式 X(x) は

\displaystyle X(x) = B \sin\left(\frac{n \pi x}{a}\right)

のように sin で書かれているのに対し、時間に関係する式 T(t) は

\displaystyle T(t) = A \cos\left(\omega_n t + \phi_n \right)

と cos で書かれています。

これにはそれほど深い意味はありません。実際、位相項 𝜙n = −π/2 を取れば、cos(x – π/2) = sin となるので、T(t) を sin の形で書くことも可能です。ここでは T(t) は 角振動数 ωn で振動する波だということが重要で、sin, cos はまあどちらでもよいのです。

T(t) に cos を使っているのは次のような理由だと思われます。

X(x) の方は x = 0 のとき X(0) = 0 という境界条件がありますから、x = 0 のとき 0 となる sin を使っています。(cos でも書けるが式が複雑になる。)

T(t) の方には境界条件は無いのですが、t = 0 のとき T(0) = 1 となってくれると好都合です。それは、波動関数 u(x, t)を

u(x,t) = X(x)T(t) ... (2.3)

とおいていますので、基準となる t = 0 のとき T(0) = 1 であれば、X(x)がそのまま u(x,t)になるからです。

u(x,0) = X(x)

というわけで、t = 0 のとき 1 になるような関数、cos を T(t) を表すのに使っているのだと思われます。