標準燃焼エンタルピーΔcH° は燃焼する反応物 1 mol あたりの量ですか?

標準モル生成エンタルピーはその分子が 1 mol 生成されるときの反応エンタルピーですが, 標準燃焼エンタルピーは生成物ではなく燃焼する反応物 1 mol あたりの反応エンタルピーと捉えて良いのでしょうか?

そうです。

反応エンタルピー ΔrH は、授業で説明したように基本的に「示量性」の量(単位 kJ)です。

a \, {\rm A} + b \, {\rm B} \to c \, {\rm C} + d \, {\rm D} … (1)

のような反応だと、 物質 A が a mol と 物質 B が b mol 反応し、物質 C が c mol と 物質 D が d mol 生成 したときのエンタルピー変化を考えます。

よって、ΔrH は反応式の書き方によって変わります。例えば同じ反応は

2a \, {\rm A} + 2b \, {\rm B} \to 2c \, {\rm C} + 2d \, {\rm D} … (2)

のように書くこともできますが、この時 ΔrH は倍の値になります。

反応物、または生成物のうちの特定の物質を指定して、その物質が 1 mol 反応、あるいは生成するときのエンタルピーとして表すことがあります。上の例だと、 物質 A を指定し、物質 A が 1 mol 反応するときのエンタルピー変化として表すわけです。そうすると、(1)でも(2)でも反応エンタルピーは同じ値になります。教科書の記法に沿うと、この時の反応エンタルピーは 上にバー (\Delta_{\rm r} \bar{H}(A)) をつけるか、標準状態での反応なら 右上に º をつけて (\Delta_{\rm r} H^\circ (A)) 区別することになりますね。

燃焼エンタルピーや生成エンタルピーは、そのような示強性で表した量になっています。

  • 標準モル燃焼エンタルピー ΔcHº 
    反応物を指定し、その物質 1 mol が酸素と反応して燃焼するときの反応エンタルピー。
    (単位 kJ mol−1)
    燃焼; combustion
  • 標準モル生成エンタルピー ΔfHº 
    生成物を指定し、その分子を構成する元素の単体からその分子 1 mol を生成するときの反応エンタルピー。
    (単位 kJ mol−1)
    生成; formation