断熱過程のP–V 図がよくわからない
まず等温過程の P – V 図について考えます。
理想気体の状態方程式
から 等温過程の PV 図が描けます。いくつかのT についてプロットしてみます。
青線は 100 K での PV 曲線、以降 200, 300, 400 K と温度が上がっていき、
赤線は 500 K での PV 曲線です。
これらは温度を高さとした「等高線」のように考えることができます。
実際に温度を z 軸とした図にすると
のように描けます。理想気体の状態方程式は、 P, V, T を変数とした 3 次元空間で一つの「面」を表しています。物質量が決まっていれば(ここでは 1 mol)、どんな変化を生じさせても P, V, T の関係はこの面から離れることはありません。
さて、次に断熱過程について考えます。
断熱過程では、熱が系に入ってこないので、膨張する(周囲に対して仕事をする)と系の温度が下がります。
断熱過程での P と V の関係式は、単原子理想気体の場合
... (19.20)
のように書かれます 1)式は熱容量によって変わります。二原子理想気体の場合、5/3乗のところが7/5乗に変わります。例題19.6(p.820)参照。。
const. は一定値という意味です。
等温過程では PV = const. ですから、V が増加すると、断熱過程のほうが P が早く減衰します 2)化学数学 まとめ2 関数の収束と発散 http://science.shinshu-u.ac.jp……atome2.pdf
等温過程は P = a V -1、断熱過程(単原子) P = a V -5/3。
400 K, 2 bar, 16.63 dm3 (下図黒点)を出発点として、
断熱膨張(黒点から右側に移動)すると、温度が下がります。
同じく、断熱圧縮(黒点から左側に移動)すると、温度が上がります。
これを図中に書き入れると、下図の緑になります。
断熱過程は、温度を高さとした斜面を、斜めに駆け降りる(または駆け上がる)イメージですね。
CDF Player がインストールされていれば、3次元像(マウスで回転可能)が確認できます。
[WolframCDF source="http://science.shinshu-u.ac.jp/~tiiyama/wp-content/uploads/2011/12/adiabatic.cdf" CDFwidth="600" CDFheight="350" altimage="file"]
脚注
↑1 | 式は熱容量によって変わります。二原子理想気体の場合、5/3乗のところが7/5乗に変わります。例題19.6(p.820)参照。 |
↑2 | 化学数学 まとめ2 関数の収束と発散 http://science.shinshu-u.ac.jp……atome2.pdf 等温過程は P = a V -1、断熱過程(単原子) P = a V -5/3 |