[試験回答の間違い例] ΔS = q/T の式の使い方

1 mol のヘリウムを 1 bar の定圧で 300 K から 1000 K まで加熱するときの エントロピー変化 ΔS を求めよ。ただしモル定圧熱容量  \bar{C}_P は (5/2)R で一定であるとする。

これは 例題21-2 の類題でした。

この問題も、エントロピー変化 ΔS = qrev / T の基本式から理解することができます。

  \displaystyle \Delta S = \frac{q_{\rm rev}}{T}   ... (20.3改)

定圧変化では q = CP dT なので

  \displaystyle \Delta S = \int_{T_1}^{T_2} \frac{C_P}{T}{\rm d}T   ... (21.9)

となり、 CP に温度依存性がなければ、積分して

  \displaystyle \Delta S = C_P \ln\frac{T_2}{T_1}  

となります。

数値を代入すると 正解は 25.0 J K−1 となります。

  • 間違い例1 「単位なし。」
    物理量には必ず単位をつけなくてはなりません 1)無次元量 – 分子の個数や、比など – を除く
  • 間違い例2 「単位が J」
    エントロピーを正しく理解しているかどうか疑われます。
  • 間違い例3 「300 K や 1000 K に 273.15 を足してしまう。」
    問題に K と書いてあるのに・・・。

間違い 分母の T に ΔT を入れる

これはよく見かける間違いなのですが、等温過程のときは ΔT = 0 なので、
右辺が無限大になってしまいます。 式を丸暗記してしまっていると良くやる間違いです。

間違い 左辺の ΔSS にして計算する

Δ が入るかどうかは大違いですね。
エントロピー S の場合、「(完全結晶の)エントロピーは 0 K のとき 0」という法則(熱力学第3法則)がありますので、 温度 0 K のときにはエントロピーは 0 になりますが、それ以外の場合は S = 0 にはなりません。 ちなみにボルツマンの関係式

  S = k \ln W  

の左辺は Δ なしの S です。

上の式

  \displaystyle \Delta S = \frac{q_{\rm rev}}{T}   ... (20.3改)

の左辺は Δであり、熱が流入した時の S増加分を表しています。

脚注

1 無次元量 – 分子の個数や、比など – を除く