23-13 液相と気相の密度

ずいぶん複雑な数式ですが、両数式をそれぞれ ρl =、 ρg = の形に書き直し、気合でエクセル等でグラフにします。
(エクセルで数式をグラフ化する方法は問題16-33を参照。ここではMathematicaというソフトで作図しています。)

メタノールの共存する液相と気相の密度
メタノールの共存する液相と気相の密度

青線が液体の密度、赤線が気体の密度です。
ここで示されているのは共存する(それぞれの温度の沸騰圧力における)液相と気相の密度であることに注意してください。
相図でいうと、気液共存線(蒸気圧曲線)に沿った液相と気相です。

液体の密度は、室温では気体よりかなり高いですが、温度とともに下がっています。
温度とともに熱膨張によって体積が大きくなり、密度が下がると考えてよいでしょう。

気体の密度は室温ではかなり小さいですが、温度とともに上昇します。
温度が上がると気体は膨張し、密度は下がるはずですが、
それ以上に共存線の圧力が上がり、圧縮されるためです。

両者は臨界温度 512.6 K に向かって急速に変化し、とうとう同じ密度となります。
臨界温度では気体と液体の区別はなくなります。 1)臨界点ではグラフの傾きが「垂直」になっているところは注目に値します。液体は温度とともに膨張しますが、臨界温度の瞬間は熱膨張率(上図の傾きに対応)は無限大になっているのです。無限大とはただ事ではありません。このような臨界点近傍の物質の振る舞いについては多くの興味が持たれ、研究が行われています。

グレーの線は両者の平均です。臨界温度で赤線、青線と交わっています。

以下余談ですが、縦軸、密度(mol L−1; 1 L あたりの mol 数) の逆数を取ると
モル体積 \bar{V} (L mol−1; 1 mol あたりの体積(L)) になります。
これについてもプロットしてみましょう。

メタノールの共存する液相と気相のモル体積
メタノールの共存する液相と気相のモル体積

おっと、低温では気液が共存する圧力が低いので、気体の体積(赤)がすごく大きくなり、図からはみ出してしまいます。また液体の体積(青)は温度上昇に伴ってすこしづつ大きくなっているのですが、値が小さいためにグラフ上ではほとんど 0 になってしまっています。
縦軸を対数としてみます。

メタノールの共存する気相と液相のモル体積(対数表示)
メタノールの共存する気相と液相のモル体積(対数表示)

温度の上昇につれ、液体のモル体積は熱膨張によって次第に増大し、
気体のモル体積は圧力の増加によって次第に減少し、
臨界点で同じ値になります。

密度よりこちらの方がわかりやすいかもしれませんね。

脚注

1 臨界点ではグラフの傾きが「垂直」になっているところは注目に値します。液体は温度とともに膨張しますが、臨界温度の瞬間は熱膨張率(上図の傾きに対応)は無限大になっているのです。無限大とはただ事ではありません。このような臨界点近傍の物質の振る舞いについては多くの興味が持たれ、研究が行われています。