ΔS = q/T の式は T → 0 K で 無限大 になってしまうけど、いいのか?

\displaystyle \Delta S = \frac{q_{\rm rev}}{T} の式は T \to \rm 0~K\infty になってしまうけど、いいのか?

温度を下げていったとき、上の式の分母は 0 に近づいていくので、式の右辺は確かに ∞ になってしまいます。
が、実際には 分子の qrev は一定ではなく、 T → 0 のとき qrm → 0 となり、相殺して無限大は解消されます。

定圧条件であるとして、q を 熱容量を使って表します。

 \displaystyle q_{\rm rev} = \int C_P\, {\rm d}T 

温度が絶対零度に近づくと、分子運動の量子化のために
「少しぐらい温度を上げても、高いエネルギー準位に移れないため、熱を吸収しない」
ということが起こります。(振動運動のページ参照)
そのため、熱容量は絶対零度に近づくにつれ、0 に近づきます。
(T → 0 のとき CP  → 0)

多くの非金属結晶では、絶対零度近傍で CP 3 に比例することが知られています。(教科書 21.4)
係数を α とすると、

 C_P = \alpha T^3 

前の式に代入すると

 \displaystyle \Delta S = S - S(0{\rm\ K}) = \int^T_0 \frac{\alpha T^3}{T}\,{\rm d}T = \int^T_0 \alpha T^2\,{\rm d}T = \frac{\alpha T^3}{3} 

となり、無限大は解消します。

エントロピー S は 0 K において、−∞ ではなく、ある一定値(熱力学第3法則から、これが 0 ) から出発し、ごく低温では T の3乗 に比例して増加していきます。

S の温度依存性 (0 K 近傍)
S の温度依存性 (0 K 近傍)

(0 K において、 S も、S の傾きも 0)