21-42 化学反応とΔS

解答

0 K での(完全結晶の)エントロピーは 0 である、という熱力学第 3 法則を使うと、それを基準として、それぞれの物質のモルエントロピー S を定めることができます。(相対値ではないので Δ はつかないことに注意)

モルエントロピーS圧力と温度に依存します。圧力を標準状態(100 kPa)とした S は標準モルエントロピーと呼ばれ、添え字 ° をつけて S° とあらわされます。

化学反応におけるエントロピー変化 ΔrS° は、反応物と生成物のS° の差から求められます。

ΔrS°  = Σ(生成物のS° ) – Σ(反応物のS° )

テーブルなどから上記の反応式に含まれる物質の S° を調べ、計算すれば ΔrS° を得ることができますが、気体分子の S° は液体や固体状態に比べかなり大きいので、気体分子の増減で ΔrS° の大小を推定することができます。

(a) 反応式中に、気体分子は生成物に1 mol、 反応物に1 mol 存在している。→変化なし
(b) 気体分子 2 mol 減
(c) 気体分子 3 mol 減
(d) 気体分子 1 mol 増

よって ΔrS° は (d) > (a) > (b) > (c) であることが推定できます。( (b), (c) では符号が負)

補足(実際に計算してみる)

(めんどうだが)テーブルの値を使って正確な値を計算してみます。
(テーブルの値はアトキンス物理化学要論より, 298.15 K)

(a) S° (SO2(g)) − (S° (S(s, 単斜)) + S° (O2(g)))
= {(248) − (33 + 205)} J K−1
= 10 J K−1

(b) S° (H2O2(l)) − (S° (H2(g)) + S° (O2(g)))
= {(110) − (131 + 205)} J K−1
= −226 J K−1

(c) (S° (CH4(g)) + S° (H2O(l))) − (S° (CO(g)) + 3 S° (H2(g)))
= {(186 + 70) − (198 + 3 · 131)} J K−1
= −335 J K-1

(d) (S° (CO(g)) + S° (H2(g))) − (S° (C(s, グラファイト)) + S° (H2O(g)))
= {(198 + 131) − (6 + 189)} J K−1
= 134 J K−1

というわけで、予測の通りの順序でした。

(c) のように、Σ の計算の際には係数をかける必要があることに注意すること。

標準モルエントロピーの比較については 21.7 節に詳しい説明があります。