解答
沸点の dP / dT であれば相図(通常横軸 T, 縦軸 P である)中の気液共存線の沸点における傾きです。
これはクラペイロンの式で求められます。
... (23.10)
問題にある dT / dP はこれの逆数です。
(※上の2式は状況によって使い分けますが、分子と分母を取り違えると大きな間違いになります。温度 T が右辺左辺共に同じ側(式(23.10)なら、どちらも分母に T が含まれている) と覚えておくとよいでしょう。)
密度の値から(= 相転移に伴う体積変化)を求めます。
モル蒸発エンタルピーの符号は液体→気体の変化になっているので、 もこれに合わせます。
密度(g L−1)の逆数が 1 g あたりの体積(L g−1)になります。また、g あたり を mol あたりに変換します。
(22.4 L よりかなり大きいのは、100 °C での値だから)
これを先の式に代入します。
途中、SI単位系への換算には注意が必要です。(k → 103, L → 10−3 m3)
単位は dT / dP に対応して、K Pa−1 となります。
圧力の単位を Pa から atm に換算すると (1 atm = 1.013 ·105 Pa) ※単位換算については16-1 も参照
2 atm まで や が変わらないとすると
(1 atm あたり 27.9 °C 沸点が上昇するので)
2 atm での沸点は 127.9 °C
松本での沸点は?
以下余談です。
松本の標高は 592 m (市役所)で、平均気圧は大気圧方程式
を用いて 947 hPa と算出できます。
1013 hPa との差を算出すると −66 hPa。
K Pa−1 単位の(dT / dP )を使うと
となり、松本における水の沸点は 98.2 °C と算出できます。
実際には相図中の気液共存線は直線ではなく、かなり大きく曲がっています。
これは気体の体積が圧力、温度で大きく変わってしまうために、式(23.10)のΔV が一定値とみなせないためです 1)温度によって も変わりますが、ΔV の効果の方が大きいです。。
広い温度にわたる連続的な蒸気圧を知りたいときは、これを加味したクラウジウス-クラペイロン式
... (23.12)
またはそれを定積分した
... (23.13)
を使うとよいでしょう。
式(23.13)を用いると松本での沸点は 97.9 °C となります。
脚注
↑1 | 温度によって も変わりますが、ΔV の効果の方が大きいです。 |