水の定圧比熱容量()、融解エンタルピー、蒸発エンタルピーが以下の値であるとする。
定圧比熱容量(氷) | 2.10 J K−1 g−1 | |
定圧比熱容量(水) | 4.20 J K−1 g−1 | |
定圧比熱容量(水蒸気) | 1.86 J K−1 g−1 | |
比融解エンタルピー | 0.334 kJ g−1 | |
比蒸発エンタルピー | 2.23 kJ g−1 |
1000 g の水を、−10 °C の固体状態(氷)から 10 °C の液体状態(水)にするために、外部から加えなくてはならない熱 q を求めよ。
またこの過程における ΔH, ΔU を求めよ。
熱容量は 「その物体を 1 K 温めるのに必要なエネルギー」なので、温度で積分をすれば 加熱に必要な熱が求まります。(上図の色を付けた部分の面積を求める)
あらわには書かれていませんが、一定の圧力での実験でしょうから、熱容量には「定圧熱容量 CP 」を使います。
また、0 °C で起こる 氷→水 の相転移では、相転移に伴うエネルギーが必要となるので、これを加えます。
温度順に数式で書くと、
となります。
氷、水の熱容量は温度が変わっても一定、としてあるので、積分は単純に
(熱容量) × (温度差)
となります 1)熱容量は実際は温度で変わるので、広い温度範囲での変化を扱うときはその効果を入れます。計算例は 19-19 にあります。 。
表の値は 1 g あたり なので、1000 倍するのを忘れずに(数値 単位)のセットを代入していくと
と q が求まります。各過程で必要な熱は
- 氷を −10 °C → 0 °C に加熱 = 21 kJ
- 0 °C で、氷を水に変化させる = 334 kJ
- 水を 0 °C → 10 °C に加熱 = 42 kJ
となり、この例では融解熱がかなりの大きさを占めていることがわかります。
なお、定圧条件での q は ΔH と等しいので、
固体や液体の体積の温度変化はごく小さいので、この場合のΔU は
でよいでしょう 2)気体の場合は ΔH と ΔU はかなりずれます。これも 19-19 を参照してください。 。
体積変化分の正確な計算は下記コラムを参照してください。
きちんと計算する
厳密には
定圧なので
密度のデータ
ρ (ice) = 0.9182 g cm−3
ρ (water) = 0.9997 g cm−3
を使い、水 1000 g のときの体積変化を求めると
となります。(8.15% の体積収縮)
ΔU の式に代入すると
となります。(収縮するので、少しだけ仕事をしてもらっている。)