モルエントロピーの温度依存性の計算

水の融解熱、蒸発熱、定圧熱容量、標準モルエントロピーが次の値であるとする。

 \Delta_{\rm fus}\bar{H}(273~\rm K)  =  6.0 kJ mol−1
 \Delta_{\rm vap}\bar{H}(373~\rm K)  =  40.1 kJ mol−1
 \bar{C}_P(\rm liq.)  =  76 J K−1 mol−1
 S^\circ(298~\rm K)  =  70 J K−1 mol−1

0 °C における融解エントロピー  \Delta_{\rm fus}\bar{S}
0 °C から100 °C まで加熱する際の水のエントロピー増加  \Delta S(\rm liq.)
100 °C における蒸発エントロピー  \Delta_{\rm vap}\bar{S} を求め、S の温度依存性をグラフに描け。

エントロピー変化は熱の吸収量を温度で割ることで得られます。

 \displaystyle \Delta S = \frac{q}{T}

定圧条件では1)問題では圧力一定、とは明言されていませんが、常圧で行われたと思われるので、圧力一定とみなしてよいでしょう。 熱の出入りはエンタルピー変化 ΔH に等しいので

温度一定で生じる相転移では単に
 \displaystyle \Delta S = \frac{\Delta H}{T}

物質の加熱では熱容量 C を用いて、(C が温度が変っても一定の時 q = C dT)
\displaystyle \Delta S = \frac{q}{T} = \frac{C}{T}\,{\rm d}T = C \left[\ln T\right]^{T_2}_{T_1}

となります。

計算します。

融解時(273 K)
 \displaystyle \Delta_{\rm fus}\bar{S} = \frac{\Delta_{\rm fus}\bar{H}}{273 \rm \ K} = 22 {\rm\ J\,K^{-1}\,mol^{-1}}

液体(273 K → 373 K)

 \displaystyle \Delta S({\rm liq.}) = \int^{373 \rm\ K}_{273 \rm\ K} \frac{\bar{C}_P}{T}\,{\rm d}T = \bar{C}_P \ln{\frac{373 \rm\ K}{273 \rm\ K}} = 23.7 {\rm\ J\,K^{-1}\,mol^{-1}}

沸騰時(373 K)
 \displaystyle \Delta_{\rm vap}\bar{S} = \frac{\Delta_{\rm vap}\bar{H}}{373 \rm \ K} = 108 {\rm\ J\,K^{-1}\,mol^{-1}}

グラフにすると

水の S の温度依存性
水の S の温度依存性

となります。

数式で求めた3つの値は ΔS、変化量ですが、
標準モルエントロピーは 298 K での S
S の絶対値であることに注意してください。

(上のグラフは、ずうっと左にたどっていって、0 K まで行くと、縦軸 S も 0 になっているはずです。)

脚注

1 問題では圧力一定、とは明言されていませんが、常圧で行われたと思われるので、圧力一定とみなしてよいでしょう。