クラペイロン式(23.10)とクラウジウス-クラペイロン式(23.12)はどう違うのか

クラペイロン式(23.10)とクラウジウス-クラペイロン式(23.12)はどう違うのか

クラペイロン式は相境界の傾きを正確に表しています。

  \displaystyle \frac{{\rm d}P}{{\rm d}T} = \frac{\Delta \bar{H}}{T \Delta \bar{V}}   ... (23.10)

ただし、飽和蒸気圧(すなわち、ある温度における気液境界線の圧力)を知りたい場合などは
境界線の傾きではなく、「圧力」そのものが必要です。

(23.10)式は、それぞれの温度での相境界の傾きは正確に表しているので、
(23.10)で求めた傾きを使えば

  \displaystyle \Delta P = \left(\frac{{\rm d}P}{{\rm d}T}\right) \cdot \Delta T  

のようにして、飽和蒸気圧がどのくらい変わるか(ΔP) を求めることができます。

しかし、相境界の傾きは温度とともにどんどん変わっていってしまうので、
圧力を温度の関数として表すためには
気液相転移用に展開したクラウジウス-クラペイロン式(23.12)が用いられます。

  \displaystyle \frac{1}{P}\frac{{\rm d}P}{{\rm d}T} = \frac{\Delta \bar{H}}{RT^2}   ... (23.12)

使用の際には変数分離して定積分し

  \displaystyle \ln{\frac{P_2}{P_1}} = -\frac{\Delta \bar{H}}{R}\left(\frac{1}{T_2}-\frac{1}{T_1}\right)   ... (23.13)

のようにします。特定温度(T1)での飽和蒸気圧(P1)と、モル蒸発エンタルピー(ΔH)がわかれば、任意の温度(T2)での飽和蒸気圧(P2)がわかります。

ただし、(23.12)および(23.13)式は荒い近似(別ページ参照)を用いているので、あまり正確ではありません。

教科書には、「(23.12)式は(23.10)式よりも不正確だが使いやすい」とあります。

実験などでより正確な蒸気圧を求めたいときは、テーブルをあたるか、アントワン式 1)参照 Wikipedia, 東京理科大 大江先生のページ http://s-ohe.com/Antoine_Eq.htm

  \displaystyle \log_{10}\left(P\rm\ / \ mmHg\right) = A - \frac{B}{({T\rm\ /\ ^\circ C})+C }   ... (Antoine equation)

(A, B, C は物質ごとに決まる定数)

などの実測の蒸気圧に合わせた経験式を用いるとよいでしょう。

脚注

1 参照 Wikipedia, 東京理科大 大江先生のページ http://s-ohe.com/Antoine_Eq.htm