Δ(デルタ) と d の使い分けがわからない

Δ(デルタ) と d の使い分けがわからない

ΔU は一つの変数であって、Δ × U という意味ではありません。dU も同様です。

Δ は 2 つの値の「差」を意味します。
(例えば、ΔU は 2 つの状態での内部エネルギー U の差 )

差をとるときは、常に「新しい方から古い方を引く」と覚えておいてください。

状態 A から 状態 B に変化したときの 内部エネルギー変化 ΔU

ΔU = U(B) −U(A)

化学反応に伴う ΔU

ΔU = U(生成物) −U(反応物)

です。今日の売り上げが 100 円、昨日の売り上げが 80 円なら、その差は + 20 円と取るのが自然ですよね。(新しい方から古い方を引いている)
逆にすると符号が反対になってしまいます。

dU という表記が出てくるときがあります。これは ΔU と同じように 2 つの状態のエネルギー差を表しているのですが、その差が無限小まで小さくなっていることを表しています。

例えば 20 °C の鉄の U と 20.0000000001 °C の鉄の U の差という具合です。
「そんなの 0 じゃん」と思うかもしれません。実際 0 に極めて近いのですが、 このときの温度差 dT (これも 0 に極めて近い)とのは 0 にはならず、意味のある数値になります。

 \displaystyle \frac{{\rm d}U}{{\rm d}T} 

1 mol の鉄 (55.8 g)であれば、この値は 25.1 J K−1 となります。

これは T を変化させたときの U のグラフの傾きで、これが先に出てきた「熱容量」です 1)UC についているバーは 1 mol あたりの量であることを示しています。(こちらを参照)  \bar{C}_V は正確には「モル定容熱容量」で、単位付きで書くと 25.1 J K−1 mol−1 です。

 \displaystyle \frac{{\rm d}\bar{U}}{{\rm d}T} = \bar{C}_V 

2つの dなんとかの「比」に意味があることが多いので、
多くの場合、dなんとかは上の dU と dT のように「ペア」で数式に現れます。

なお、IUPAC(グリーンブック)では

Δ (大文字のデルタ) … 差を表す
δ (小文字のデルタ) … 無限小の変化を表す
d (小文字のディー) … 無限小の差(微分)を表す

となっています。

物理量を表すU とか T とかはイタリック(斜体)で書きますが、上の 3 つは数学記号扱いなのでローマン(立体)で書きます。

dU, ΔT

脚注

1 UC についているバーは 1 mol あたりの量であることを示しています。(こちらを参照)  \bar{C}_V は正確には「モル定容熱容量」で、単位付きで書くと 25.1 J K−1 mol−1 です。