2004/9/1噴石の全岩化学組成

  
         全岩化学組成分析用試料(分析済み試料の一部).

         ハーカー図 (上掲写真の試料のみ)

分析値を見ると,軽石(pumice)と軽石の黒色皮殻(crust)はSiO2が61wt%前後の同一の組成です。また,多角形状岩片(lithic)は3試料の例外を除くと,SiO2は60.1-60.7wt%であり,軽石と黒色皮殻から低SiO2側に連続した組成をもっています.

このことから,上記岩石はすべて同じマグマに由来したものである可能性が高いと思われます.
多角形状岩片はマグマの浅所がすでに冷却・固結した部分(とはいっても数百度あった)の破片,また軽石はマグマのより深所の固結しきっていない部分が発泡して噴出したもの,軽石のうちでも黒色皮殻をもつものはマグマが発泡しきらない状態で噴出した後,空中で表面が冷却固化されたのちに内部が発泡したもの,などに対応していると考えています.
マグマが発泡・膨張したのを引き金として,すでに固結した部分には亀裂ができて,そこへ地下水が強制的に注入された結果として,水蒸気爆発ないしマグマ水蒸気爆発が引き起こされたのであろうと考えます.


2004/9/16火山灰の化学組成

各方面からの問い合わせがあるようなので,火山灰の全岩化学組成を蛍光X線分析装置を用い分析しました.
試料は粉砕後,灼熱減量し,融剤(Li2B4O7)と試料を2:1で混合し溶融.ガラスビードにして分析しています.そのため揮発性の成分(水,硫黄,塩素)などは分析していません.


ash04091701は長倉神社(浅間山火口から南東に9.2km)で採取.ash04091701は千ヶ滝別荘地内(浅間山火口から南東に6.7km)で採取.
いずれも9/16に噴出したものと考えられます.

これらの分析値は微量元素組成にいたるまで,今回の噴火の本質物である軽石の組成とよく一致します.
Fe2O3,MgO,SiO2,Al2O3では軽石の組成と若干異なりますが,これは分別により生じた斜方輝石と斜長石の量比の差異ためと考えられます.

(9/21 3:40)


2004/9/1-23に噴出した岩石の化学組成の比較

9月1日と9月23日の噴出物の化学組成(9月16日の火山灰の組成も含む).9月16日の火山灰以外の分析値1個は,1個の噴出物,もしくは,数個の小さな噴出物を合わせたものの値を示している.


2004/9/23に噴出したスコリア及び9/1に噴出した軽石中のガラスの化学組成

軽石と黒色皮殻部中のガラスのSiO2wt%は77.5-77.4%で一致した化学組成を持っています.
一方,スコリアはSiO2wt%でおおよそ72.5-74.8%の範囲でプロットされ,軽石中のガラスとは明らかに異なった化学組成です.
また,あわせて全岩化学組成も示してありますが,今回の一連の噴火の本質物とは考えていない多角形状岩片は除外してあります.
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(10/13 20:00) 


2004/11/14噴火で噴出した火山礫の化学組成

とり急ぎ,5試料の全岩化学分析を行ったのでグラフのみ提示します.(11/16 23:00)


2009/2/2噴火で噴出した火山礫の化学組成

2009年2月2日に噴出した火山礫の全岩化学組成を,3試料分析しました.
今回噴出した火山礫の化学組成は,2004年に上昇してきたマグマが固結した岩石であることを示しています.
すなわち,2004年9月1日以前に火道域に存在していた古い岩石と,当時新たに上昇してきたマグマ(図の赤線で囲んだ領域)とは,化学組成の上ではっきりと区別できますが,今回の噴火の火山礫は後者と同じ組成をもっています.

なお,分析に供した火山礫は千ヶ滝西区別荘地内(火口から南東6.4km近辺)で採取したもので,火山礫中で最も多く見られる灰色-青灰色安山岩です.1試料は火山礫1片(長径2.5cm)を粉砕し,分析用試料としました.残り2試料は径5mm前後の火山礫を双眼実体顕微鏡下で観察し,よく似た岩相のものを必要量集めて,分析用試料としました.(分析;津金 文責;津金・三宅)