2009/2/2火山灰の光学・電子顕微鏡写真

2/2噴火の火山灰の粒子について,とり急ぎ報告します.


写真A;火山灰の偏光顕微鏡写真(開放ニコル)
無篩別のまま洗浄した火山灰を研磨薄片にして観察.
多くは安山岩片と鉱物片から構成される.


写真B;電子顕微鏡写真(組成像)


写真C;電子顕微鏡写真(組成像)
細かい白点が入っている粒子は安山岩片.肉眼観察でよく目立つ灰色の岩片に相当する.
白点が無いものは鉱物片(斜長石,輝石,磁鉄鉱など)
白点は微小な磁鉄鉱や輝石.


写真D;やや発泡した粒子の偏光顕微鏡写真(開放ニコル).
火山灰中のまれにやや発泡したガラス質の粒子が見られる.
左写真の下辺に所々丸い輪郭が見えるのが割れた気泡壁.
全体に径0.01-0.02mmほどのころころした丸いものが見えるが,これらは気泡ではない.


写真E;写真Dの左の粒子の電子顕微鏡写真(組成像).
(粒子の中央が抜けているのは,研磨面に試料が露出していないため.)
右側の中央の黒い部分のみが気泡.
写真Dで,丸く見えた部分はEDS分析の結果,菫青石(Crd)であることがわかった.
この粒子は菫青石(Crd),斜長石(Pl),長柱状のSiO2鉱物(SiO2 Min.),黄鉄鉱(Py),磁鉄鉱(Mg),チタン鉄鉱(Ilm)とガラスから成る.
このような菫青石(Crd)を含むガラス質の岩石は2004年噴火時にも確認されており,実体顕微鏡下では一見軽石に見えるが今回の噴火に関わったであろうマグマとは別の物質である.


写真F;写真Dの右の粒子の電子顕微鏡写真(組成像).
(右下や左辺部は研磨面に試料が露出していない.)
写真Eの粒子と同様に菫青石(Crd)を含むが,微小な気泡は存在するがガラスは確認できなかった.
(Apは燐灰石)


2004/9/1噴石の顕微鏡写真 


軽石
多角形状岩片
軽石部と黒色皮殻部
軽石(黒色皮殻をもつものと持たないもの)と新鮮な安山岩片はすべてかんらん石含有複輝石安山岩で,かんらん石斑晶は反自形で斜方輝石の反応縁をもっています.
一方写真は示していませんが,表面が変質した安山岩片もあり,それらは複輝石安山岩かかんらん石含有複輝石安山岩です.後者のかんらん石斑晶は,新鮮な安山岩片に含まれるものと比べると融食され丸みを帯びています.また空隙内をシリカ鉱物や変質鉱物が充填していることが多いです.

2004/9/1噴石の電子顕微鏡写真


               軽石の電子顕微鏡写真(COMPO像)

割とよく発泡しています.黒い部分が気泡で,小さな気泡がつながりネットワーク状の空隙を作っています.島のように見える灰色で面積の大きい部分が斑晶で,斑晶のまわりや細かく複雑な形をしている部分がガラスです.この画面上での気泡の割合を計測すると57%になります.


               多角形状岩片の電子顕微鏡写真(COMPO像)

斑晶鉱物は斜方輝石,単斜輝石(明るく大きいもの)と斜長石(灰色で大きいもの),磁鉄鉱(非常に明るいもの),チタン鉄鉱(次に明るいもの)です.わずかに発泡しており,この画面上の空隙の割合は7%あります.


            黒色皮殻部の電子顕微鏡写真(COMPO像)

写真左側がパン皮状噴石の縁です.縁は直線状です割れ目によって区切られています.写真の右端へ向かい黒色皮殻から軽石へとうつり変わり,黒色皮殻は概ね発泡度は低く,軽石部では高いことが良く分かります.
斑晶鉱物は斜長石,斜方輝石,単斜輝石,磁鉄鉱,チタン鉄鉱です.


2004/9/23に噴出したスコリアの顕微鏡写真     

左:開放ニコル かんらん石(ol)を含み、単斜輝石(cpx)と斜方輝石(opx)、斜長石(pl)の斑晶を多く含む.斑晶の間の部分は火山ガラス(gl)で埋められている.
右:左と同じ画面の直交ニコル写真

スコリアの実体顕微鏡写真はこちら,化学組成はこちら最新のオピニオンもお読みください.


2004/9/23のスコリアと9/1の軽石の比較写真 

左:9/23に噴出したスコリアの拡大写真: 茶色の部分が火山ガラスであり,比較的大きな気泡によって切れ切れにされているのがわかる.
右:9/1に噴出したパン皮状軽石の黒色皮殻部分: 火山ガラスは無色透明であって,小さな気泡がたくさんあいているのがわかる.
いずれも倍率は同じで開放ニコル写真.


2004/9/23スコリアの電子顕微鏡写真(compo像)

明るい部分は主に輝石で,小さいものの一部は磁鉄鉱とチタン鉄鉱です.灰色で直線状の輪郭で囲まれた部分は斜長石,残りの灰色部分がガラスです.9/1軽石に比べ気泡は大きく,扁平な形をしています.