16-24 対応状態の原理

解答

まず エタン、アルゴンについて P\bar{V} (以下 V と表記)をプロットする。

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Fig1 エタン、アルゴンのPVプロット

赤が エタン、 青が アルゴン である。原点付近を拡大する。

16-24-2
Fig2 エタン、アルゴンのPVプロット(拡大)と理想気体状態式の比較

エタン(T = 500 K) のほうが アルゴン (T = 247 K) に比べ温度が高いため、原点から離れた曲線になっている。両者とも大まかには PV = const. という理想気体の関係に従っている。
しかし、図中に示した理想気体の PV 曲線と比べてみると、両者とも V が小さい領域で左側にずれていることがわかる。
すなわち、この領域では、エタン、アルゴンは理想気体で予想されるよりも 体積が小さい(密度が高い)状態にある。

さて、次の関係式を用いて 圧縮因子 Z を求め、 V に対してプロットしてみよう。

 \displaystyle Z = \frac{PV}{RT} 
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Fig3 Z と V の関係

理想気体の状態方程式に従うなら Z = 1 となるが、両者ともその挙動からずれている。

Z が 1 より大きいところでは(理想気体の状態方程式で予測されるよりも) 体積が大きい(密度が低い)、
Z が 1 より小さいところでは(理想気体の状態方程式で予測されるよりも) 体積が小さい(密度が高い)、
ことがわかる。
(Fig2 で示されていない、より小さい V では、理想気体の線より右にプロットがずれている)

教科書のように横軸を P とすると、 P → 0 では理想気体の振る舞いに近づくが、
上図のように横軸を V とすると、 V → 0 (すごい高圧力)では逆に理想気体から遠ざかる。

次に横軸をそれぞれのガス種の臨界モル体積( \bar{V}_{\rm c}, 教科書p.683)で割った換算体積 VR とする。

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Fig4 Z と TR の関係

横軸を換算量(臨界定数で割った値)にすると、
エタン、アルゴンの挙動は(期待したほどではないが)一致する。

上図の黒の実線は、対応状態の式(16.15式)から導いた Z の式であり、実在気体の Z の振る舞いをよく再現している。

 \displaystyle Z = \frac{\bar{V}_{\rm R}}{\bar{V}_{\rm R}-\frac{1}{3}}-\frac{9}{8\bar{V}_{\rm R}T_{\rm R}}  ... (16.16)

(エクセル等を使ってプロットを行ってみると、計算法などについてよくわかるので、実際にやってみることをお勧めします。)