1-10 分布式の変数変換(*)

解答

電磁波は 振動数 ν が決まれば 波長 λ が決まります。
この問題は、同じ分布の電磁波を、ν の代わりに λ を使って表す、という問題です。

基本的には ν = c / λ という関係式を使って、式中の ν を λ に置き換えていけばよいです。

 \displaystyle \rho_\lambda (T) {\rm d}\lambda = \frac{8 \pi h}{c^3} \frac{c^3 {\rm d}\nu}{\lambda^3 e^{h c / \lambda k_{\rm B}T}-1} ...(5)

ただし、 dν に関しては、単純に置き換えて dν = c/dλ とはいきません。dν とdλ の関係をきちんと考える必要があります。これは微分を使って求めることができます。

dν/dλ と書くと、これは ν λ で微分したものですから、高校で習った微分公式を使い

 \displaystyle \frac{{\rm d}\nu}{{\rm d}\lambda} = \left(\frac{c}{\lambda}\right)^\prime = (c \lambda^{-1})^\prime = -c\lambda^{-2} = -\left(\frac{c}{\lambda^2}\right) ...(6)

と求められます。(6)式に両辺 dλ をかけると、

 \displaystyle {\rm d}\nu = -\left(\frac{c}{\lambda^2}\right){\rm d}\lambda ...(7)

と dν とdλ の関係が得られます。これを (5)式 の dν に代入して、ようやく

 \displaystyle \rho_\lambda (T) {\rm d}\lambda = \frac{8 \pi h c}{\lambda^5} \frac{{\rm d}\lambda}{e^{h c / \lambda k_{\rm B}T}-1} ...(1.3)

と、ν とdν の代わりに λ とdλ で表した分布式を得ることができます。
(グラフの横軸の方向が逆になっている関係で、(7)式中の − は消えます。)

\rho_\lambda (T)部分を図示すると

横軸を波長としたプランクの分布式(T = 6000 K)

となります。似たようなグラフに見えますが、前のグラフでは右側が高エネルギー、このグラフでは左側が高エネルギーと、左右がひっくり返っています。

dν とdλ が単純に置き換えられない理由

(7)式で表されるように

 \displaystyle {\rm d}\nu = -\left(\frac{c}{\lambda^2}\right){\rm d}\lambda ...(7)

dν とdλ は「変な」関係式で換算されます。この式の係数、c/λ2 がなぜつくのかについて考えてみます。

最初のグラフ、ν の分布グラフで、ν を等間隔 (1 × 1014 s−1ごと)に区切ることを考えます。


横軸を振動数としたプランクの分布式(T = 6000 K)

区画には、エネルギーの低い方から順に番号をつけてみました。

同じ区画を、λ = c / ν の関係式を使い、λ の分布グラフ上に表してみます。


横軸を波長としたプランクの分布式(T = 6000 K)

同じ数字は同じ区画を表しており、各区画が全体の面積に占める割合は ν のグラフと λ のグラフで同じになっています。(区画 1 は グラフの右の方にはみ出してしまいました。)
グラフは左右が入れ替わるだけでなく、 λ の大きい領域でグーンと引き延ばされていることがわかります。

ν の分布のグラフは、等間隔 dν での分布を表しています。同様に
λの分布のグラフは、等間隔 dλ での分布を表しています。

係数、c/λ2 は 横軸の間隔が変わるために入ってくるのです。
(大きい λ ほどグラフが引き伸ばされているので、縦軸の値は小さくなる)

ν の分布のグラフでは、分布の頂点は区画 4 にありましたが、
区画 3, 4, 5のあたりが引き伸ばされているために、
 λ の分布のグラフでは、分布の頂点が 区画 7 に移動していることに注目してください。

分布の横軸が変わると、分布の頂点も変わるのです。

よって、ν で見たときに最も多く含まれる電磁波(νmax)と、  λ で見たときに最も多く含まれる電磁波(λmax)は
一致しないことになります。

 \displaystyle \nu_{\rm max} \neq \frac{c}{\lambda_{\rm max}}