解答
力の定数 k を用いたフックの法則によるポテンシャルエネルギーの式
との比較から
従って 1)問題文中の 分子−1 は 「分子 1 個当たり」を意味しているが、SI単位系では 個や回 は単位なし(無次元)とすることになっているので、計算式では省いた。単位は J m−2 = (kg m2 s−2) m−2 = (kg m s−2) m−1 = N m−1。J m−2 や kg s−2 でもも間違いではないが、力の定数は 「ばねを 単位長さ(1 m)分だけ引っ張った時に働く力」なので、適切な単位として (N m−1) を選ぶと良い。
モースポテンシャル(D(1-e–βx)2) → 赤、と調和振動子ポテンシャル((1/2)kx2)→青 としてを重ねて図示すると
となる。調和振動子近似(青)は左右対称形で、 負側(距離の近い方)でも、正側(距離の遠い方)でもモースポテンシャル(青)に比べ左側にずれているものの、x = 0 近傍では両者はほぼ一致しており、良い近似となっている。
なお教科書では、マクローリン展開の最初の項だけしか示されていないが、もう少し展開すると
となる。第 2 項まで → 緑 、第 3 項まで → オレンジ 、第 4 項まで → 紫 、として順に示すと、項を加えるたびにモースポテンシャル(赤)と「一致している範囲」が広がっていくことがわかる。
化学結合の振動のポテンシャルを 調和振動子で近似することは、マクローリン展開の 1 項目だけを採用し、2 項目以降を 0 としたことに対応している。調和振動子ポテンシャルは x = 0 近傍では非常に良い近似となっているし、エルミート多項式が使えるなどのメリットがある。適切な「近似」は毛嫌いせずに、積極的に利用すると良いと思われます。(まず 1 項目だけを考えて、のちに(必要があれば) 2 項目、3 項目… を加えていけばよい。)
脚注