19-9 (問題とヒント) 4つの物理過程に当てはまらない過程でのΔU, ΔH, q, w

ヒント

この問題の過程について

通常、圧縮や膨張、加熱、放熱に関わる過程は 4つの典型的な物理過程 ~等温、断熱、定圧、定容~ の組み合わせで表せることが多い。しかし、この問題のように 4つの過程では表せない場合もある。この問題では、そのような場合の熱力学量の計算の仕方についてみてみよう。

この過程では P/V = 一定 という過程で圧力を 2.00 bar から 2倍 の 4.00 barまで 変化させる。P/V = 一定  (P = aV)であるから、終状態では体積も2倍になる。PV を比例させながら変化させる、左の P図中の緑線に沿った変化と考えればよい。

理想気体は PV = nRT 式に従うので、PVT のうち 2つが決まると、残りの一つが自動的に決まる。言い換えると、理想気体のP V T 値は下の 3 次元図(横- V, 奥行- P, 高さ- T)で描かれた滑らかな斜面から離れることはできないPV も 2 倍にするためには、この斜面を登っていって、終状態では温度は初状態の 4 倍 の 1092 K にしなくてはならない。この過程は、ピストンで PV が比例するように体積 V を調整しながら、ヒーターで加熱して温度を上昇させていく過程ということになる。実験でこれを正確に再現するのはかなり難しいが、化学プラント等では、定圧-定容過程の組み合わせよりも、このような直線的な変化のほうが良い近似となることはありうるだろう。

このような場合でも

\displaystyle w = - P_{\rm ex}{\rm d}V

という式は成り立つので、w は計算できる。 

また、理想気体なので、U は温度だけで決まり、ΔU は定容熱容量から

\displaystyle \Delta U = \int n \bar{C}_V {\rm d} T

によって計算できる。(単原子理想気体なので、\bar{C}_V = (3/2)R

ここまでくれば、熱力学第1法則から q が、H の定義式からΔH が求められる。