風力発電での効率にも熱力学的制限があるのか?

熱を仕事に変換する際には効率 η = (ThTc)/Th の制限があるのはわかったが、最近話題の「風力発電」でも同様の制限があるのか?

風力発電は熱を経由しないので、上記の制限はありません。

「風」は熱エネルギーではなく、形態としては「仕事」なので、
風力発電は(熱力学上の扱いは) [仕事]→[仕事]の変換になります。

種々の発電様式を考えてみると、熱を経由するものと、経由しないものに大別することができそうです。(物理化学II エネルギーの形態 参照)

  • 火力発電
    化学エネルギー→熱エネルギー→電気エネルギー
  • 原子力発電
    核(質量)エネルギー→熱エネルギー→電気エネルギー
  • 水力発電
    位置エネルギー→電気エネルギー
  • 太陽光発電
    光(輻射)エネルギー→電気エネルギー
  • 燃料電池
    化学エネルギー→電気エネルギー
  • 風力発電
    (風の、分子ではなく空気の塊としての)運動エネルギー→電気エネルギー

 

火力発電は石油などの分子が持つ化学エネルギーを燃焼によって熱エネルギーとして、それでタービン を回して電気エネルギーとしています。
「熱エネルギー」を経由すると上記の効率の制約があるので、できれば経由しないで質の高いエネルギーである「電気エネルギー」に変換したいところです。

ただ熱エネルギーは諸悪の根源であるわけではありません。「エコアイス」等 のように、貯めることが困難な電気エネルギーを、熱エネルギーとして貯蔵するというような取り組みもあります。

先日テレビを見ていたら、風車の周りにドーナツ状のフードを付けることで発電効率を高めるという、九州大学の「風レンズ」の話が出ていて、科学技術ができることはまだまだ多そうだと思いました。